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第108話 評価されない活動

 社会福祉協議会の職員との打ち合わせを終えた後。


 正義は、シスター小林に頼まれた書類を職員室へ届けに向かっていた。


 始業式前日。


 校舎内は静かで、生徒の姿もほとんど見当たらない。


 職員室の前まで来た、その時だった。


 中から教師たちの話し声が聞こえてくる。


「明日の査問会議ですが」


「エンジェル部も議題に上がっています」


 正義は思わず足を止めた。


 教師たちは、そのまま話を続ける。


「活動自体は素晴らしいんですけどね」


「地域清掃に、保育園、老人ホーム」


「炊き出しや病院慰問まで、本当によく頑張っています」


「夏祭りでも活躍したそうですね」


 別の教師が頷く。


「楠市長も大変評価されていました」


「社会福祉協議会からも感謝されているそうです」


 正義は少しだけ嬉しくなった。


 ちゃんと見てくれている先生もいる。


 そう思った。


 しかし。


 一人の教師が静かに口を開く。


「ですが」


「奉仕活動は、部活動実績としては評価対象外です」


「規定上、大会成績やコンクール受賞のような実績には含まれません」


 別の教師も苦笑した。


「活動は立派なんですがね」


「評価できる項目がないんですよ」


「制度上は仕方ありません」


 その言葉を聞いた瞬間。


 正義は言葉を失った。


 地域清掃。


 保育園。


 老人ホーム。


 炊き出し。


 病院慰問。


 夏祭り。


 三人で汗を流し、笑い合いながら積み重ねてきた活動。


 地域の人たちは喜んでくれた。


 楠市長も認めてくれた。


 社会福祉協議会も必要としてくれた。


 それなのに。


 学校では。


「評価対象外ですからね」


 その一言が、胸へ重く突き刺さる。


(そんな……)


(あれだけ頑張ってきたのに)


 正義は無意識に書類を握り締めていた。


 その時だった。


「桜木君?」


 後ろから優しい声が聞こえる。


 振り返ると、栞が立っていた。


「どうしたんですか?」


 正義は慌てて表情を作る。


「……何でもありません」


 そう答えるものの、笑顔はぎこちなかった。


 栞は何かを察したように正義を見つめる。


 しかし、何も聞かなかった。


 二人は静かに職員室へ書類を届ける。


 正義の胸には、教師たちの言葉が何度も繰り返されていた。


 ――評価対象外。


 その現実は、思っていた以上に重かった。

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