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第105話 始業式ミサの準備

 八月三十一日。


 正義たちは正義の家を出ると、そのまま聖フェリス学園へ向かった。


 二学期始業式ミサ。


 その準備の日である。


「間に合いました……」


 礼拝堂へ到着した栞が、ほっと胸を撫で下ろす。


 凪は肩で息をしながら苦笑した。


「徹夜明けで走るもんやないな……」


 正義も息を整えながら笑う。


「でも、何とか間に合いましたね」


 三人はすぐに準備へ取り掛かった。


 椅子を並べる。


 聖歌集を置く。


 祭壇を整える。


 役割分担はいつもの通り。


 言葉を交わさなくても、自然と身体が動いていく。


 その様子を見ていたシスター小林が、優しく声を掛けた。


「皆さん」


「今日は少し眠そうですね」


 三人は顔を見合わせる。


 栞が少し申し訳なさそうに答えた。


「実は……」


「日向夏さんの宿題が終わっていなくて」


「昨日から桜木君のお家で徹夜していたんです」


 シスター小林は少し驚いたように目を丸くした。


「まあ」


「そうだったんですね」


 そして凪を見る。


「宿題は無事に終わったんですか?」


 凪は胸を張って答えた。


「はい!」


「ギリギリですけど、全部終わりました!」


 その返事に、シスター小林は思わず笑みをこぼす。


「あらあら」


「良かったですね」


 凪は照れくさそうに笑った。


「正義と栞がおらんかったら、絶対終わっとらんかったです」


 正義は苦笑する。


「来年は、もう少し計画的にお願いします」


「善処します!」


「来年も同じことを言いそうですね」


 栞がくすっと笑う。


 三人のやり取りを見つめながら、シスター小林は穏やかに微笑んだ。


「皆さん、本当に仲良しですね」


 三人は少し照れくさそうに顔を見合わせる。


 シスター小林は続けた。


「桜木君が入部した頃は、まだ少しぎこちなかったのに」


「今では、お互いを支え合える素敵な仲間になりましたね」


 三人は静かに頷く。


 シスター小林は優しい眼差しを向けた。


「その絆を、これからも大切にしてください」


「きっと、その絆は皆さんにとって、一生の宝物になりますから」


 三人は顔を見合わせ、自然と笑みがこぼれる。


「はい!」


 三人の返事が、礼拝堂へ心地よく響いた。


 夏休みは終わる。


 けれど。


 三人で積み重ねてきた思い出と絆は、これからも変わることなく続いていくのだった。

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