表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
106/148

第104話 夏休みの終わり

 八月三十一日。


 午前十時過ぎ。


 正義の部屋には、静かな達成感が漂っていた。


 机いっぱいに積まれていた宿題は、すべて片付いている。


 凪は机へ突っ伏したまま、大きく息を吐いた。


「終わったぁ……」


「生き返ったぁ……」


 正義も椅子へ身体を預ける。


「何とか間に合いましたね」


 栞も穏やかに微笑んだ。


「本当に良かったです」


 三人はしばらく黙っていた。


 徹夜明けの心地よい疲労感。


 部屋には穏やかな空気が流れる。


 やがて凪が天井を見上げながら呟いた。


「あっという間の夏休みやったなぁ」


 正義も小さく頷く。


「本当ですね」


「地域清掃に始まって、保育園、老人ホーム」


「炊き出しや病院慰問」


「プールに花火大会」


「夏祭りもありました」


 栞は優しく微笑む。


「どれも大切な思い出になりましたね」


 凪はにっと笑った。


「正義は何が一番楽しかった?」


 正義は少しだけ考える。


「一つには決められませんね」


「全部楽しかったです」


「皆さんと一緒だったので」


 栞は嬉しそうに微笑む。


「私も同じです」


「皆さんと過ごした時間全部が、かけがえのない思い出です」


 凪は少し照れくさそうに笑った。


「何やそれ」


「照れるやん」


 三人は顔を見合わせる。


 そして。


「あははは!」


 自然と笑い声が部屋へ響いた。


 少し前まで、ただの同級生だった三人。


 今では、お互いを信頼し、笑い合える大切な仲間になっていた。


 その時だった。


「……あ」


 栞の表情が固まる。


 正義が首を傾げる。


「どうしました?」


 栞は時計を見るなり、青ざめた。


「忘れていました!」


「今日、始業式ミサの準備です!」


 凪も時計を見て飛び上がる。


「うそや!」


「完全に忘れとった!」


 正義も慌てて立ち上がる。


「今から間に合いますか!?」


 栞はすぐに時計を確認する。


「集合は十二時です!」


「今から向かえば、何とか間に合います!」


 凪は慌てて鞄を肩へ掛けた。


「急ぐでー!」


 正義も苦笑しながら荷物をまとめる。


「徹夜明けで学校へ行くなんて初めてです……」


「そんなこと言っとる暇ない!」


 三人は笑いながら部屋を飛び出した。


 夏休み最後の日。


 最後まで慌ただしいのもまた、エンジェル部らしい夏の締めくくりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ