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まだ恋とは呼べない距離で  作者: rio
中学生編
3/8

第3話 担当者と指名

それから、藤森先輩との関係は少しだけ変わった。


廊下ですれ違えば、挨拶を交わすし、図書室で顔を合わせれば、短い会話をする。


「当番?」

「はい」

「今日、人多いな」

「テスト前だからですかね」


それくらいの、どうでもいいやり取り。


名前を呼ぶこともないし、特別な話をするわけでもない。


でも、知らない人ではなくなった。


それだけで、少しだけ距離が変わる。


---


次の図書委員会。


読書週間に向けた活動についての話し合いが始まった。


「全校生徒に読書を促す企画を考えます」


先生がそう言って、黒板に簡単な説明を書く。


一学期の担当者を二人決めるらしい。


「やりたい人、いますか」


少しの沈黙。


誰も手を挙げない。


理由は分かる。

準備もあるし、手間もかかる。


評価にはつながるかもしれないけど、それ以上面倒な仕事だ。


「いないかな」


先生がもう一度言う。


そのとき。


「はい」

一人、手が挙がる。


前の席。

あの三年生。

——藤森先輩。


そのまま、名前が書かれる。


「もう一人、いない?」


再び沈黙。


視線が少しだけ泳ぐ。


誰も手を挙げない。


そのとき。


「じゃあ」

先輩が振り返る。

一瞬だけ、迷ったように見えた。

それから、まっすぐこちらを見る。


「神崎、一緒にやらない?」


一瞬、意味が分からなかった。


「え」

思わず声が出る。


周りの視線が、少しだけ集まる。


「この間、副委員長断って、結局何の役職もやってないじゃん」


そう言って、特に深い意味はなさそうな顔をしている。


断る理由を探す。


時間がかかる。


目立つかもしれない。

余計なことはしない方がいい。

頭の中でいくつか浮かぶ。


でも。

「……大丈夫です」

気付いたときには、そう答えていた。

「やります」


先生が頷いて、黒板に名前を書く。


それで決まった。


ただ、それだけのこと。


なのに。

ほんの少しだけ、心が落ち着かない。


理由は、よく分からない。


---


委員会が終わって、片付けをしていると、後ろから声がかかる。


「よろしく」


振り返ると、先輩が立っていた。


「……はい」

短く答える。


「そんなに難しいことやるわけじゃないから」


「そう、ですか」


「一緒に考えればいいし」


それだけ言って、軽く手を振る。


深く踏み込んでくるわけでもなく、距離を詰めてくるわけでもない。


ただ、自然にそこにいる感じ。


「じゃあまた」


そう言って、先に部屋を出ていく。


その背中を、少しだけ目で追う。


——なんで、私なんだろう。


そう思う。


でも、わざわざ聞くほどのことでもない。


理緒は視線を外して、机の上の資料を揃える。

いつも通りに。

はみ出さないように。


そのはずなのに。

少しだけ、違う場所に立っている気がした。

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