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まだ恋とは呼べない距離で  作者: rio
中学生編
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28/48

まだ名前も呼べない距離で

毎日20時20分更新予定

全40話+番外編で完結となります。

晃サイドの続編を準備中です。

中間テスト期間。


放課後の図書室は、普段より静かだった。


理緒はいつもの席に座って問題集を開いていた。


少しして、隣の席の椅子が引かれる音。


「……ここ、いい?」


聞かなくても座るのに。


そう思いながら、理緒は小さく頷く。


「はい」


藤森先輩が隣に座る。


机に参考書を置いて、軽く伸びをした。


「疲れた……」


「塾ですか?」


「うん。最近ずっと勉強してる気がする」


先輩はそう言って笑う。


理緒も小さく笑って、再びノートへ視線を落とした。



---


しばらくすると、自習する生徒が増え、図書室の席が埋まってくる。


「理緒っち、ここいいかな?」


波瑠が向かいの席を指しながら、荷物を置く。


「誰も使ってないから、大丈夫だと思うよ」


「邪魔してごめんね」


そこに、永田先輩もやってくる。


「藤森、ここいいか?」


波瑠の隣の席へ、どかっと座る。


「ん? おう……」


四人で机を囲み、それぞれ問題集に視線を落とす。


しばらくして、波瑠が小さく唸った。


「んんん……分かんない。理緒っち、この問題の解説の意味分かる?」


「分かるかな……ちょっと見てもいい?」


波瑠から問題集を受け取ろうとした時、横から大きな手が伸びて、問題集を取っていく。


「どれ? えーっと……これは、この前の問題で出てきた公式使うんだよ」


「あ、そっか。こっちで解説されてるんですね」


「そうそう。だからここ、省かれてるだけ」


永田先輩と波瑠だけで話が進み、理緒の入る隙はなくなる。


理緒は小さく視線を落として、再び自分の問題集を開いた。



---


しばらくして、


「そろそろ帰ろっかな」


波瑠がそう言って片付け始める。


「じゃ、俺もこのへんにしようかな」


永田先輩も鞄を肩に掛ける。


二人はそのまま並んで図書室を出ていった。


「波瑠と永田先輩、いい雰囲気でしたね」


理緒は何となく言ってみる。


「……波瑠って、永田に憧れてるんだっけ?」


「……はい。そうみたいです」


何となく、胸の奥が少しだけざわつく。


「そっか。なら、うまくいくんじゃねぇの」


先輩は、何か知っているみたいに言う。


「そう、ですか……」


「おう」


少しだけ間が空く。


「……あの」


「ん?」


「先輩は、波瑠のことは『波瑠』って呼ぶんですね」


「……え?」


「その……私のことは『神崎』なのに」


言った瞬間、少しだけ恥ずかしくなる。


でも、もう引っ込められない。


先輩は一瞬だけ目を丸くして、それから少し視線を逸らした。


「いや……呼ぶっていうか、他学年の女子の苗字なんて覚えてないから」


「え?」


「神崎が『波瑠』って呼んでるから、名前は分かったけど……苗字、覚えてねぇんだよ」


「……じゃあ、私の名前は覚えてます?」


言ったあとで、自分でも少し驚く。


どうして、そんなことを聞いたんだろう。


先輩は少しだけ黙って、それから観念したみたいに口を開く。


「……神崎理緒」


名前を呼ばれた瞬間、胸の奥がくすぐったくなる。


理緒は視線を落としたまま、小さく呟く。


「……覚えてくれてるんですね」


問題集へ視線を戻す。


でも、さっきから文字が全然頭に入ってこなかった。

中学生編、ここまで読んでくださった皆さま、本当にありがとうございます。


この物語を書き始めた時、私は「派手な展開」よりも、「誰かの心に残る感情を呼び起す物語」を書きたいと思っていました。


理緒と晃の距離や、言葉にならない気持ち、少しずつ積み重なっていく時間を、ゆっくり読んでくださる方がいることが、とても嬉しいです。


中学生編はひとつの区切りになりますが、二人の物語そのものが終わったわけではありません。


まだ私の中にも、書きたい感情や、描きたい時間の続きがあります。


この先の物語についても、少しずつ形にしていく予定です。


そして、更新を追ってくださっている方、ブックマークをくださった方、本当に励みになっています。


感想を書こうか迷っている方がいらっしゃったら、もし一言でもいただけたら、とても嬉しいです。


ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

引き続き、この物語を見守っていただけたら嬉しいです。

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