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まだ恋とは呼べない距離で  作者: rio
中学生編
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23/48

第20.5話 クリスマスケーキ

毎日20時20分更新予定

全40話+番外編で完結となります。

晃サイドの続編を準備中です。

「んんん……巻けない。くずれちゃう……」


理緒はキッチンで、小さく唸っていた。


クリスマスに向けて、ブッシュドノエルを作りたかった。

けれど、その土台になるロールケーキが、どうしても上手く巻けない。


巻こうとするとひびが入って、クリームがはみ出して、気付けばただの“崩れたケーキ”になってしまった。


――お菓子作り初心者で、ロールケーキは無茶だったかも……。


「理緒、何してるの?」


後ろから声を掛けられ、理緒は肩を揺らした。


「あ……ママ」


母はキッチンを覗き込み、カウンターの上を見て、ふっと笑う。


「お菓子作り? ロールケーキね」


「うん……」


「これは、スポンジが柔らかいうちに巻くのがコツなのよ」


「分かってるんだけど……上手く出来なくて……」


理緒がしょんぼりと肩を落とすと、母は崩れたロールケーキを見ながら苦笑した。


「最初から難しいものに挑戦しすぎなのよ。フルーツもこんなに入れて」


「……はい」


「急にどうしたの? お菓子作りなんて」


理緒は少し視線を逸らした。


「……友達と、一緒に食べようかなって」


「そう」


母はそれ以上追及せず、けれどどこか面白そうに目を細める。


「……でも、本番の前に練習しておきたくて」


「そういう年頃ね」


母は懐かしそうに、小さく笑った。


「ママも、あなたくらいの頃に初めてお菓子作りしたわ」


「ママも?」


「えぇ。1つ上の学年の先輩に憧れて、クッキーを渡したくてね」


「……え」


意外そうに目を丸くすると、母は少し肩をすくめた。


「でも結局、渡せないまま卒業しちゃった」


「そうなんだ……」


「理緒も、憧れの人?」


「!? 違うよママ!」


思わず声が大きくなる。


「友達だってば!」


「あら、そう」


母はくすっと笑った。


「でも、手作りのものを食べてほしいって思うくらい、大切な友達なのね」


理緒は少しだけ黙り込む。


頭に浮かぶのは、図書室で本を読む横顔。

静かな声。

自分の話をちゃんと聞いてくれる、あの空気。


「……うん」


小さく頷く。


「大切な、友達」


理緒はその言葉が本音のような、でも何か違うような、うまく説明できない違和感で、胸がくすぐったくなるのを抑えた。

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