第20.5話 クリスマスケーキ
毎日20時20分更新予定
全40話+番外編で完結となります。
晃サイドの続編を準備中です。
「んんん……巻けない。くずれちゃう……」
理緒はキッチンで、小さく唸っていた。
クリスマスに向けて、ブッシュドノエルを作りたかった。
けれど、その土台になるロールケーキが、どうしても上手く巻けない。
巻こうとするとひびが入って、クリームがはみ出して、気付けばただの“崩れたケーキ”になってしまった。
――お菓子作り初心者で、ロールケーキは無茶だったかも……。
「理緒、何してるの?」
後ろから声を掛けられ、理緒は肩を揺らした。
「あ……ママ」
母はキッチンを覗き込み、カウンターの上を見て、ふっと笑う。
「お菓子作り? ロールケーキね」
「うん……」
「これは、スポンジが柔らかいうちに巻くのがコツなのよ」
「分かってるんだけど……上手く出来なくて……」
理緒がしょんぼりと肩を落とすと、母は崩れたロールケーキを見ながら苦笑した。
「最初から難しいものに挑戦しすぎなのよ。フルーツもこんなに入れて」
「……はい」
「急にどうしたの? お菓子作りなんて」
理緒は少し視線を逸らした。
「……友達と、一緒に食べようかなって」
「そう」
母はそれ以上追及せず、けれどどこか面白そうに目を細める。
「……でも、本番の前に練習しておきたくて」
「そういう年頃ね」
母は懐かしそうに、小さく笑った。
「ママも、あなたくらいの頃に初めてお菓子作りしたわ」
「ママも?」
「えぇ。1つ上の学年の先輩に憧れて、クッキーを渡したくてね」
「……え」
意外そうに目を丸くすると、母は少し肩をすくめた。
「でも結局、渡せないまま卒業しちゃった」
「そうなんだ……」
「理緒も、憧れの人?」
「!? 違うよママ!」
思わず声が大きくなる。
「友達だってば!」
「あら、そう」
母はくすっと笑った。
「でも、手作りのものを食べてほしいって思うくらい、大切な友達なのね」
理緒は少しだけ黙り込む。
頭に浮かぶのは、図書室で本を読む横顔。
静かな声。
自分の話をちゃんと聞いてくれる、あの空気。
「……うん」
小さく頷く。
「大切な、友達」
理緒はその言葉が本音のような、でも何か違うような、うまく説明できない違和感で、胸がくすぐったくなるのを抑えた。




