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まだ恋とは呼べない距離で  作者: rio
中学生編
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17/48

第15.5話 誕生日プレゼント

毎日20時20分更新予定

中学生編完結まで執筆済み

全50話前後を予定しています

「お兄ちゃん、今度の土曜日に池袋行きたいから付き合って」


未来はソファに寝転ぶ兄を見下ろす。


「行かない。メンドイ」


即答だった。


「えぇー。ママに一人で行っちゃダメって言われたの! お願い!」


「やだ」


また即答。


でも、これは未来の予想通りだった。


未来はわざとらしくため息をつく。


「理緒の誕生日プレゼント買いに行きたかったのになー」


兄の肩が、ぴくっと反応する。


未来は気づかないふりをしたまま続ける。


「誰か行ける人探さないとなー。クラスの友達は予定合わなかったしなー」


そう言いながら、ちらっと兄を見る。


「……しょうがねぇなぁ」


未来はぱっと顔を上げる。


「え!? お兄ちゃん来てくれるの!?」


「クラスの友達ダメだったんだろ。しょうがねぇじゃん」


「へへ〜ん。ありがと、お兄ちゃん」


「なんでニヤニヤしてんだよ」


「べつにぃ?」


---


土曜日。


池袋の雑貨屋で、未来はマグカップ売り場の前にしゃがみ込んでいた。


「お兄ちゃん、これ可愛くない? すっごい理緒っぽい」


未来は、水色の猫柄のマグカップを持ち上げる。


「あ、でも理緒はこっちの方が好きそう!」


今度は、夜空に流れ星が描かれたマグカップを手に取った。


「どっちがいいかなぁ?」


「はぁ? 俺に聞くなよ」


「だって、どっちも可愛くて迷うんだもん。理緒にずっと使ってほしいし」


「ずっと使う……ね」


晃は小さく呟いて、少しだけ考える。


「……こっちの方が、大人になっても使えるんじゃねぇの?」


指差したのは、流れ星のマグカップだった。


「うんうん。こっちの方がオトナっぽくて理緒っぽいよね。さすがお兄ちゃん、分かってる〜」


「だから、なんでニヤニヤしてんだよ」


「べつにぃ?」


未来は楽しそうに笑いながら、値札を見る。


「あ……でも、これ予算オーバーだ」


「は?」


「これ二千円する。でも、あたし千円しか持ってない」


晃は呆れたように眉を寄せる。


未来はわざとらしく肩を落とした。


「これ、ぜーったい理緒が気に入ると思ったのになー」


その言葉に、晃は小さくため息をつく。


「……しょうがねぇなぁ」


「え?」


「いくら足りねぇんだよ」


「千円!」


「……レジ行くぞ」


未来はぱっと顔を輝かせる。


「やったー!」


---


一学期の終業式の日。


「理緒、一日早いけど、お誕生日おめでとう!」


未来はラッピングされた箱を差し出した。


「未来、ありがとう」


理緒は少し驚いたように受け取る。


「開けてもいい?」


「もちろん!」


包装を開くと、中から流れ星柄のマグカップが現れる。


「わ……可愛い」


理緒の表情が、ふわっと柔らかくなる。


未来は満足そうに笑った。


「これね、池袋でお兄ち――」


「おにいち?」


「……うぅん! 池袋ですっごい悩んで買ったの!」


「そうなんだ。嬉しい」


理緒はマグカップを両手で包むように持つ。


「大事にするね」


「うん!」


未来は嬉しそうに頷く。


「じゃ、また夏休み明けにね!」


「うん。ありがとう」


未来は満足げに教室を出ていった。


『お兄ちゃんが理緒にベタ惚れなの分かりやすいんだけどなぁ』


廊下を歩きながら、未来はひとりで笑う。


『でも、理緒はお兄ちゃんのこと、どう思ってるんだろ』


――その後、理緒がこのマグカップを十年以上使い続けていることを、晃は知らない――

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