第14話 着信とカレンダー
毎日20時20分更新予定
中学生編完結まで執筆済み
全50話前後を予定しています
夕食を終えて、ベッドで寛いでいると、机の上のスマホが震える。
理緒の胸がトクンと鳴る。
起き上がって、小さく息を吐くと、机の上のスマホを手に取り、画面を見る。
表示された名前に、指が止まる。
——藤森先輩。
目を瞑る。
息を整えてから、メッセージを開く。
«8/10はあいてる?»
短い一文。
理緒は、その文字をしばらく見つめる。
部屋のカレンダーの日付を確認する。
何も書いていない。
——大丈夫。予定はない。
そう思うのに、指が動かない。
一度、画面を閉じてスマホを机の上に戻すと、ベッドに倒れ込む。
ふぅと息を吐いて考える。
「……1ヶ月……後……」
目を瞑って気持ちを整える。
起き上がり、机の上のスマホを開くと、文字を打ち込む。
«あいてます»
送信。
画面を閉じて、すぐ机の上に裏返して置く。
なんとなく、画面を見るのが怖くて。
でも、スマホから目を離せない。
すぐにスマホが震える。
胸がキュッとなる。また息が乱れる。
スマホに手を伸ばし、通知を確認する。
——藤森先輩。
ゆっくりとメッセージを開く。
«8/10まで、隣町の中央図書館で森川花笑の企画展やってるらしいんだ。好きだったよね»
その一文に、目が止まる。
——覚えててくれてる。
以前、図書室で話したこと。
理緒はゆっくりと指先を動かす。
«好きです»
一度、そこで止まる。
読み返して、
数秒だけ考えてから、
«行ってみたいです»
と付け足す。
送信。
今度は少しだけ間が空く。
その間、意味もなく画面を見続ける。
やがて、
«じゃあ、14時に時計公園で待ち合わせでどう?»
通知が届く。
理緒は一度画面を閉じる。
そして、すぐにまた開く。
——14時。
頭の中で、当日の流れをなんとなく思い浮かべる。
特に問題はない。
なのに、すぐには打てない。
メッセージ画面を開いたまま、数秒。
«楽しみにしてます»
と打って、
少しだけその文字を見つめる。
——これでいい。
一瞬だけ迷って、
そのまま送信する。
すぐに返信が来る。
«図書館の後、カフェ行きたいんだけど、いい?»
その一文を読んで、
胸の奥が、わずかに揺れる。
理由は分からない。
ただ、さっきより少しだけ意識が向く。
カフェ。
図書館のあと。
頭の中で、並んで歩く光景がぼんやり浮かぶ。
すぐに打てるはずなのに、
また少しだけ時間がかかる。
«大丈夫です»
短く打って、送信。
やり取りはそこで途切れる。
理緒はしばらく画面を見たままになる。
やがて、ボタンを押して画面を消す。
——これでいい。
そう思う。
でも。
数秒後、もう一度スマホを開く。
特に新しい通知はない。
分かっているのに、
なぜか、何度も確認してしまう。
画面を閉じる。
今度はそのまま机に置く。
胸の奥に、さっきとは違う感覚が残っていた。
連絡先を知っている。
約束をした。
それだけのこと。
——なのに。
さっきよりも、少しだけ落ち着いている自分がいる。
理緒は小さく息を吐いてから、カレンダーの8月10日にしるしを付ける。




