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ドラクレア ──覇王の血脈──  作者: しゃちほこ
第一部 王国奪還編
2/3

第一章:旅立ちの咆哮

ソテル:本作の主人公。銀髪で短髪、赤眼の華奢な少女。しなやかでたくましい筋肉がついている。身長は165程度。16歳の時に旅立つ。比較的穏やかでサッパリとした性格だが生粋のバトルマニア。生まれつき魔法が使えない。その代わりに、莫大な生命力を宿しており、16年前の厄災でも完全に死ぬことはなかった。


ブラスト:神々しい白竜。オルドミニアの王にして支配者である、伝説の存在。「ブラスト」とは、名であると同時に象徴であり、称号である。戦災孤児である赤子だったソテルを救い育てた。


「ここまでにしよう」

ブラストの静かな声とともに、周囲を覆っていた圧倒的な圧力が霧散した。

「……はっ、はぁ、はぁっ……!」  

ソテルはその場に膝をつき、荒い息を吐き出す。全身の筋肉が悲鳴を上げ、視界がチカチカと火花を散らしている。

「少しは、手加減……してよ、父さん……っ!」

「はっはっは! すまんすまん。だがソテル、お前も随分と成長した。この私が、無意識に手加減できんほどにな!」

父は豪快に笑うが、ソテルは唇を尖らせた。

うそだ。今の稽古だって、父さんは私に指一本触れさせなかったくせに。

「いつか、絶対に勝つから。なんたって私の夢は」

「『世界最強』、だろう?うむ、楽しみだな。」

豪快に笑うブラストだがいつもと様子が違うことにソテルは気づいた。

「どうしたの父さん?」

「……ソテルよ。唐突で済まないが今のが、私との最後の稽古だ」

空気が一変した。 陽気な父の顔から笑みが消え、その瞳に「王」としての峻厳な光が宿る。

「16年前、私は死の運命にあったお前を、『権能』によって繋ぎ止めた。世界の理を書き換えたのだ。対価をは払わねばならぬ。どうやら、その支払いの時が間もなくやってくるらしい。」

「対価って……父さん、死ぬの……?」

「はっはっは!案ずるな。ほんの少しばかり、眠りにつくだけだ。世界がお前に順応した時、書き換えた理が間違いではなかったと証明されたとき、再び私は目覚める。なに、そう遠くない未来に会えるさ。」

ブラストは、目を細めて愛おしそうに娘を見つめた。

「それっていつなの?まさか今すぐじゃないよね……?」

「明日だ。」

「……。」

静寂が辺りを包む。

「今日の……」

「うん?」

「今日の晩御飯とってくる。うーんとたくさん!父さんでも食べきれないくらい!」

そういうとソテルは結界の外へと駆け出して行った。

「……すまんな。」


その夜。父と娘は最後の語らいの時間を過ごしていた。

「えーーーー!なんで教えてくれないの!?」

「決まっておろう、その方が面白いからだ!わっはっは!」


「よいかソテルよ。自分の目でこのオルドミニアを見て回るのだ。全能である私から話を聞いてしまえば、冒険の楽しさが半減してしまうぞ?」

「確かにそうだけどさ、スキルや魔法についてとか、基本的な知識ぐらいはいいじゃん。というか、逆に私が知ってるのって自分の固有スキルについてだけなんだけど!」

「ん~?う~む。ま、それぐらいなら良いだろう。」

酔っているソテルによりかかられながら、ブラストは問うた。


「まず何が知りたい?」

「オルドミニアの基本的な情報!私、このディバインフォレストと世界樹しか知らないし。」

「詳細は省くぞ。まず、このオルドミニアには多種多様な種族が住んでいる。」

「例えば??」

「それはお前、自分の目で確かめんとな!」

「……続けて。」

「数で言えば、お前と同じ人間がその大半を占めておる。だが、オルドミニアでもっとも数が多くまた最も脆弱な種族が人間だ。」

「えー、あたし結構強いよ?」

「お前が異常なのだ。」

それほめてる?と小言を言うソテルをしり目にブラストは話を続ける。

「そして、それらの種族からはみ出た魔の物どもを、私たちはモンスターとよんでいる。そやつらは昔は他の種族とも共存共栄していたのだが、ある時から闇に染まりだしてな。理性を失い、人を襲う事件が頻発した。その時から今日に至るまで、今も人類とモンスターの争いが続いているのだ。」

「へ~。強いやつもいっぱいいそうだね!」

「ふっ、全くお前は……」

ソテルの感想にあきれつつ顔を綻ばせる。

「あとさ、この森から出たら、私はまず何をしたらいいの?」

「それもお前が決めるんだ。」

「指針が欲しいんだけど……」

「ならん!大いに困れ!冒険には苦難があってこそだ!」

「え~!教えてよ~!けちー!」

「はっはっは、断る!」

こうして父娘の最後の夜は更けていった。


翌朝、ただならぬ雰囲気を感じたソテルが跳ね起きると、世界樹の前にブラストが鎮座してソテルを見つめていた。

「おはよう父さん、なんだかいつもと雰囲気違うね。」

しばしの無言ののちブラストが口を開く。

「……ソテルよ、いよいよ別れの時だ。そしてお前の旅立ちの時でもある。」

父との別れ。それは他の種族を知らず、この森で15年育ってきたソテルには何よりも辛く悲しいことだった。

「……っ……はい。」

溢れそうになる感情をこらえ、父に向き直る。


「では最後の餞別だ。我が娘よ、お前に私の名を刻む。今この時をもってお前は『ソテル=ブラスト』と名乗るのだ。そして誓え。その力で、多くの弱き者、助けを求める者を救うと」

「……はいっ! 誓います!ブラストの名において!」

娘の力強い答えを聞いたブラストは、満足げに目を閉じ、その体は世界樹と溶け合うように静かに沈黙していった。


「……。」

そこにはただ、静寂と一人の少女のみが残っていた。

オルドミニア:本作の舞台。広大で多種多様な種族が住んでいる。


ディバインフォレスト:オルドミニアの禁足地で世界樹がある。結界はブラストが張っているもので、これにより発見するのは至難の業となっている。大陸北東に位置している。


権能:オルドミニアの実力者が持つ、スキルとは別の特別な力。範囲や程度に制限や個人差があるが、世界の理を捻じ曲げることが可能。使用にはそれなりの負荷がかかる。

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