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「叔父様」
「どうしたんだい?ヴィヴィアン」
「どこまで考えていましたの?」
「ヴィヴィアンを嫁がせれば攻め入らないと言われれば簡単に嫁がせるというくらいまでは考えていたよ」
どの国も王女は政略の駒に使うことが多い。
国を守るためにヴィヴィアンを嫁がせると予測していた。
「亡き王妃そっくりの令嬢が出てきたのは想定外だったよ」
「そうでございますか」
「まぁ王はひとつ忘れているみたいだけどね」
「忘れている?」
ヴィヴィアンとの婚約の話は先ほど無事締結した。
だが、そのことで安心してしまい重要なことを忘れていた。
「この国の法律では、継承権を剥奪されずに他国に嫁いだ者の子は継承権を自動的に持つということを」
「あっ」
「かの国の次期王と結婚することで女王になることはない。もし、王と令嬢との間に子ができずともヴィヴィアンの子が継ぐことができる。おそらく戦争をせずに、この国を手に入れることができると考えていたのだろうね」
「わたくしは女王になりたくはありませんが、この国が蹂躙されることを望んでいるわけではありませんわ」
「それは私もだよ」
五年前に宣戦布告の書状が届いたとき、ヴィヴィアンは思いとどまってくれるようにと手紙を送った。
その気持ちを汲んで戦争を仄めかしながら待つという選択をしてくれた。
王が判断をすることを祈って。
「まぁ兄上に子はすぐにできるのではないか」
「宰相が一服盛ってくださるそうですからね」
「さて、明日には大使として出国しなければいけないからね。次に会うのは結婚式かな?」
「そのときは父親役をお願いしますわ。叔父様」
「それは謹んでお断りするよ。同い年の娘を持った覚えはないからね」
今頃は宰相が亡き王妃そっくりの令嬢を側室にするために奔走している。
これが上手くいかなければ攻め入られてしまうかもしれないので国を挙げての大仕事になる。
ゆっくりと夜は更けていくが一人だけ状況が見えずに右往左往している者がいた。
「えっ?ちょっと待ってよ。私が側室?」
「はい、お嬢様」
「お父様は何て?」
「よくよく王に奉仕するようにとのことです。今後は公爵家に養子に入り、王の側室になられます」
「お父様が娼婦に産ませた子なのに側室とかいいの?」
「王家の王家による王家のための婚活パーティに参加されていましたから問題ございません」
今回ばかりは出自がどうであれ側室となることは決まっている。
「これは玉の輿よね」
「そうでございますね」
「でもさ、お父様より年上とかあり得ないんだけど、よし、これは何としてでも離縁してもらうわ」
離縁してもらうために問題を起こすが、どれも成功しない。
それはまた別のお話。