38 続きからはじめる(1568年2月11日 織田家)【美味】
後書きの表記方法を見直しました。
『1568年2月11日 織田家――』
織田軍垂井本陣――夕刻
三好軍を撃退後、援軍に来てくれた浅井軍に感謝を述べて労った(お金を支払った)のち、再び本陣で軍議を開いていた。
議題は、
――このまま上洛するかどうか。
今回、三好軍は六角を滅ぼしたのちそのまま美濃へ攻め込んできた。
そしてその三好軍を織田軍は討ち破った。
ということは、京までの勢力を三好軍が一掃してくれたのち、そこを守る者も居ないのである。
ただ、今回の戦いでこちらもダメージは負っている。
今回、守るだけなら関ヶ原と垂井の間の狭い平地箇所を閉じて亀のようにしていればよかった。
しかしそれでは勢力を広げた三好と織田の国力差が広がり、今は良くとも今後は劣勢になる事も考えられた。
そのため、どうしてもここで三好に勝つ必要があったので今回の策を取った。
そして勝った。
・この余勢を駆って一気に京まで行くか。
・ダメージ回復するためいったん退いて美濃の内政へ注力するか。
この2択だった。
今のところ。
上洛派:柴田勝家、丹羽長秀、木下秀吉、竹中重治
回復派:林秀貞、前田利家、滝川一益、池田恒興
というように、見事に真っ二つに割れていた。
正直なところ、一気に上洛する方がメリットは大きい。
なんといっても今なら敵が居ないのだ。
南近江から京まで、目立った敵勢力は無い。
恐らく京まで行けば三好勢も史実通り四国へ落ちるだろう。
ただ、リスクもあった。
一つは一気に広がった領土の管理だ。
尾張と美濃に加えて、南近江と京がある山城、下手したら一気に摂津あたりまで勢力圏になる。
そうなった場合、前述の主な武将8名はともかく今の陣容で本当に治める事が出来るだろうか。
史実通り、この世界でも尾張と美濃は豊かだ。
時間をかけてさらに栄えさせ、それと共に人が生まれ、育つ。
しかしながら今の情勢から「今を逃した場合、いつ上洛できるか」は不透明だ。
そんなこんなで、私は結論が出せず、腕組みをし目を瞑って思い耽っていた。
目の前では上洛派と回復派の堂々巡りの議論が剣呑な雰囲気で続いている。
そんな中、いまだ自分の派閥を明確にしていない信広(誠人)が声を発した。
「あのー」
おお……この空気の中よく割って入ったなあ。
そんな事を思いながら
「なんじゃ?信広」
と私が応じた。
「はい。腹、減ってませんか?」
一同沈黙。
おいこら、誠人くん。
微妙に現代口語になってますよ。
「……言われてみればそうじゃな」
勝家が言う。
のっかるんかい!
と思わずツッコミそうになったもののグッと堪える。
「でしょう?腹は減っては戦は出来ぬ。
そこで某が一つ皆様に振舞いましょうぞ」
そう言うと誠人は腕まくりをして陣幕の外へ出て行った。
実は誠人くんは料理人見習いであった。
母を早くに亡くしていた私たちは、炊事は誠人、それ以外は私。
その役割分担で生きてきた。(父親?それはまたいずれ……)
なので、包丁扱いも一丁前。
キャンプなどに行こうものなら皆から重宝されるほどの腕前だった。
何を作るのかな……と思いながら待つこと1時間ぐらい。
目の前の皆も休戦してそれぞれ自由に休んでいる。
すると、何とも言えないイイ匂いが漂って来た。
家臣たちもざわついている。
しばらくして
「出来ましたぞ!皆さまこちらへ!!」
信広が皆を呼びに来た。
匂いに釣られてわらわらと行ってみるとそこには――
子豚が丸焼きで火に吊るされていた。
「おお!」
勝家が吼える。
「はよう!!」
一益が叫ぶ。
「ははは。これから分けまする。しばしお待ちを」
そう言うと信広は、手伝っている足軽に命じて吊るされていた子豚を火から下ろした。
「信広、これは……?」
聞いてみた。
「ははっ」
信広は子豚を切り分けながら教えてくれた。
「これは秀吉殿が朝倉山中にて捕らえた猪の子、うり坊ですな」
ほほう。
「奇襲のための移動中捕らえたそうで、その場で血抜きもされておりました」
ふむふむ。
「で、調理方法ですが…まずは内臓を取り出したのち、皮を剝ぎました」
か、皮をね。
「そして表面には岩塩を刷り込みました。
内臓を取り除いたところに米と酒と水、味噌を混ぜ込んで詰めました」
おお。
「そして切り開いたところを糸で縛り、一度丸茹でしたのち吊るして回しながら焼いたものです」
皿に盛られたソレを見ると――
表面はこんがりと茶色でテカっている。
捌いた肉の断面からは油がこぼれ流れ出ている。
そして横に添えられている少し色づいた米からは湯気が立ち上っている。
匂いがたまらない。
信広は盛った皿を皆に配った。
「では、頂こう」
私が言うと同時に皆の心の中に号砲が鳴った。
「んぐっ……これは……」
秀吉が唸る。
「うまい!!」
長秀が叫ぶ。
「これは美味ですな」
半兵衛が淡々と、しかし箸と口は止めず言う。
私も一口、ぱくっ。
―美味い!!!!!!!!
絶品である。
焼いた表面はカリカリ。まるで北京ダックのよう。
肉も臭みは全く無く、ジューシーさがハンパない。
そして米。
肉の旨味と味噌の汁気が米つぶに沁み込んでいて、味わいが深い。
そして何かの風味も感じる。
このピリピリとするのは――
「山椒でございます。これも山中で採れたものです」
信広が私の心を読んで教えてくれた。
なるほど。
しかしこれは本当に美味しい。
現実世界に戻っても作ってほしいぐらいだ。
ものの10分ほどで皆が食べ終えた。
残った分は、さすがに織田軍の兵全員に分け与える事は出来なかったので、本陣付の足軽たちに配った。
「いやあ……お見事な腕前でござった」
秀貞が言う。
「信広様にこのような特技があったとは……」
恒興が感心している。
すると。
―織田信広
―魅力:76 → 80
爆増した(笑)。
そして――
「腹も膨れたことだ。さて、どうするか……」
私がそう言うと同時に、伝令が駆け込んできた。
「申し上げます!
足利義昭様!細川藤孝!明智光秀!
こちらに参られましてございます!!」
は……?
<1568年2月11日時点>
―歴史乖離率:8.4%
―安定化モジュール:通常出力
―現実世界アンカー不安定率:不明(無効化処理済)
―管理者権限保有者:氷室真紀
織田信長(34)…統86 武63 知82 政73 魅83 【真紀】
織田信広(36)…統41 武66 知74 政69 魅80 ↑【誠人】
柴田勝家(42)…統89 武88 知59 政69 魅84
丹羽長秀(33)…統79 武72 知80 政75 魅72
木下秀吉(31)…統75 武63 知80 政75 魅84
竹中重治(24)…統81 武34 知92 政88 魅82
林秀貞 (55)…統52 武44 知68 政72 魅57
前田利家(29)…統77 武83 知64 政43 魅72
滝川一益(43)…統79 武84 知71 政69 魅80
池田恒興(32)…統71 武73 知70 政74 魅76
足利義昭(31)…統91 武49 知93 政71 魅79 【恭祐】
明智光秀(40)…統75 武78 知81 政73 魅76
細川藤孝(34)…統72 武63 知86 政84 魅79




