21 続きからはじめる(1567年6月14日 織田家)【六天魔王】
ログインすると、いつもとは違う部屋。
広さは岡崎城とそう変わらない。
隣には誠人とおぼしき者もいる。
きょろきょろしている。
自分の身体を見下ろすと――
なんと今回は男だ!!!
すると視線を感じて隣を見ると、誠人が驚愕の表情で私を見ている。
ん?そんなにビックリする人なのか、今回の私。
亀姫の時と同じように、左手の指先にある『△』のアイコンを目力クリックする。
すると――
―氏名:織田信長(33)
―統率:85
―武力:63
―知力:74
―政治:71
―魅力:80
…
……あはは。
まさかまさかの、織田信長。
うーーーーん……どうなんだ、これ。
次に、いまだビックリ顔の誠人を見る。
―氏名:織田信広(35)
―統率:53
―武力:66
―知力:67
―政治:64
―魅力:75
ぶ。
ゲームの中でも兄弟!!
あ。でも姉弟が逆転か。
この織田信広は、信長の異母兄であった。
「……俺、姉ちゃんのこと何て呼んだらいいの?」
たしかに。
「兄上」ではないし「信長」なんて言ったら誰かから切られそうだし。
何て呼ぶんだろ。
「んー、信長様でいいんじゃない?」
お。声めちゃくちゃ渋いぞ、わたし。
「なるほど」
誠人は納得したらしい。
ま、信長は私なんだし、少々失言しても咎めるつもりはもちろん無い。
そして岡崎城の時と同じく、窓から外を見ると――
とてつもない街並みが眼前に広がっていた。
それは岡崎城の比ではない。
街並みだけではない。
行き交う人々の数、その横を走る荷車や炊事と思われる煙などなど。
ざっくり感覚的にも十倍どころではない。
唖然としながらも、ここがどこか確かめると
『清須城』
の黒い毛筆の文字が頭上にぷかぷかと浮かんでいた。
「さすがだよねぇ」という思いと「すげーー」という思いが交錯する。
いやぁ、まだまだ感動出来るわ、このゲーム。
誠人…もとい、信広も同じようだ。
さて。
まずは状況を把握しないと。
「信広、行くよ……じゃない、行くぞ」
そう言うとスタスタと部屋を出る。
信広も慌ててついてくる。
なんせ岡崎城の時とは違って、怖いものも警戒も必要ない。
だって私が主だから。
思わず鼻歌を歌いそうになったのを堪えながら、城内の探検を始める。
すると、すれ違う人がみな立ち止まって私に頭を下げる。
んー、ちょっと気持ちがいい。
どうもこの清須城は、岡崎城と同じく3階建てのようだ。
でも、信長のこの頃の本拠地は小牧山城じゃなかったっけ……?
と考えていると、髭もじゃの武将が現れた。
「殿、何卒お戻りくださいませ」
髭もじゃは跪くと頭を下げて言った。
戻る?どこへ???
てか、誰だこの髭もじゃ。
いつも通り頭上の『△』のアイコンを目力クリック。
―氏名:柴田勝家(41)
―統率:89
―武力:88
―知力:59
―政治:69
―魅力:81
おお……鬼柴田だ!権六だ!!
すごーーーーー!!
テンション上がる。
パラメータも既にほぼ完成形レベル。
思ってたより政治が高いのね。
「おお、信広様もご一緒でござったか」
信長の脳内がパリピ状態になっていると、勝家が頭をまた下げて言った。
あ、そういえば。
頭を下げる髭もじゃをよそに、辺りを見回す。
あった。
『1567年6月14日 織田家――』
ふむ。
前回から半月ちょっと経過か。
たぶん、リアルタイムとこのゲームの中の進行速度はイコールではない。
定量的な相対比じゃないのかも。
と考えていると
「殿…?」
髭もじゃ……じゃない、勝家が恐る恐る私を見ている。
「あぁ、すまぬ」
思わず詫びの言葉が出た。
「殿、何卒小牧山へお戻りくださいませ」
勝家が言う。
あぁ、やっぱりそうか。
すると、勝家の後ろからまた『△』付きの武将が来ると、同じように跪いた。
「殿、某からもお願いいたしまする」
えいっ、目力。
―氏名:丹羽長秀(32)
―統率:76
―武力:71
―知力:80
―政治:75
―魅力:72
おお、鬼五郎左だ。
パラメータは……まだ成長途中かな。
それでも知力80は素晴らしく優秀だ。
さて、気を取り直して。
「あいわかった。これより小牧山へ戻る」
そう言うと、勝家と長秀は分かりやすいぐらいに安堵する。
「信広、そなたも供をせい」
そう言うと二人は、今度はお目め真ん丸のビックリ顔に。
「は、承知いたしました」
信広がそう言うと、何か言いたげな二人は押し黙った。
信長と信広は、手勢を連れて馬に乗り移動を始めた。
馬には不思議と普通に乗れた。
しかも揺れはさほどひどくもない。
ここらへんは恐らくAIの補正が入っている。
先頭に勝家、殿に長秀を指名し、信長と信広は中団に馬を並べていた。
「信長様、これからどうされますか?」
「うん……まぁ出方を見るかな」
さすがに詳細な歴史はうろ覚えだけど、恐らく"今"は美濃の稲葉山城攻めの直前だ。
これから小牧山で何が起きるのか。
楽しみであり不安でもあり、複雑な気持ちだった。
「それよりも」
「は」
従者を少し遠ざけて、話を続けた。
「私らの目的を整理しておこう」
「はっ……うん」
「私らの目的は――
①歴史の過度な改変を防ぐ。
②私ら以外の"誰か"を探る。
③築山殿を救う
この3つね」
「え"……?③もなの??」
「そりゃそうよ。おかあさまは助けるって言ったでしょ?」
「でもさ、矛盾してない?①と③は成り立つの?」
問題はそこだ。
歴史のプロセスは異なっても、結果が変わらなければいい、という考えも出来る。
ただ、因子は様々に繋がっている。そしてゴムのように反発もする。
でも、それでも――
「私は救いたいの」
「……わからなくはないけど……リアルと混同してない?」
私たちは、早くに母親を亡くしていた。
それが影響してない、とは断言出来なかった。
「でも、救う」
「……承知いたしました」
誠人がかしこまって言う。
そうこうしていると、遠くに山城の影が見えてきた。
やはりリアルよりも移動速度は速いようだ。
「殿、もうすぐにございます!」
前の方から勝家が叫ぶように言う。
さて、これから何が起こるのかな?
不安よりもワクワクが勝り始めた信長であった。
<1567年6月14日時点>
―歴史乖離率:3.1%
―安定化モジュール:通常出力
―現実世界アンカー不安定率:0.7%(無効化処理済)
織田信長【真紀】(33)…統85 武63 知74 政71 魅80
織田信広【誠人】(35)…統35 武66 知67 政64 魅75
柴田勝家(41)…統89 武88 知59 政69 魅81
丹羽長秀(32)…統76 武71 知80 政75 魅72




