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氷室の野望(仮)第壱巻 ~戦国突入編~  作者: 和音
本編

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20/50

20 現し世【驚愕の事実】

この回は、この物語の大きな分水嶺になります。


また、後書きに、このゲームの仕様についてこれまでの「おさらい」として簡単に整理しました。

御一読くださいませ。


ログアウトして現世に戻った。


ちょっと身体が慣れてきたのか、これまでほど疲れていない。

「なんか、慣れてきたかも」

誠人が言う。

どうやら私と同じような感じらしい。


いつも通り換気扇の下に行き、電子タバコで一服。

――やっぱり確認しておこう。

そう決めると、一服を終えてPCデスクへ向かう。


「え?もうやるの?」

「ううん、いくつかAIに確認しておきたい」

そう言うとPCのモニターに向き合った。


『接続ログを見せて』

『分かりました』

モニターには先程の接続中のログコードが並ぶ。


おかしいところは無い、か。

……ん?

見慣れないログが、そこにあった。


―CAUSAL FEEDBACK LOOP DETECTED

―(因果フィードバックループを検出)

―ANCHOR CORRECTION ATTEMPT INITIATED

―(現実固定値の補正処理を開始)

―SOURCE: UNKNOWN

―(発生源:不明)


「……不明?」

発生源が不明ってどういうこと……?


「なになに?」

誠人もモニターをのぞき込む。

私はマウスを握る手に力を込めて、ログをさらにスクロールする。

―PRIMARY ENGINE: ACTIVE

―(主エンジン:有効)

―STABILIZER: ACTIVE

―(主エンジン:有効)

―EXTERNAL OBSERVER: ACTIVE

―(外部観測者:有効)


外部観測者?

こんなモジュール入れてない。


誠人がゆっくり言う。

「姉ちゃん……これさ」

「なに」

「俺たち以外にも、誰か"見てる"ってこと?」


部屋の空気が、わずかに冷える。

キーボードを打つ。


『EXTERNAL OBSERVER: ACTIVEってどういうこと?』

『このシステムは()()()()です』


心臓が跳ねた。

「共有……?」

―MULTIPLE ACCESS POINTS POSSIBLE

―(複数のアクセス点が存在します)


「は?」


誠人が椅子から半分立ち上がる。

「ちょっと待って。それどういう意味?」


私は震える指で入力する。

『私以外にアクセスしている存在があるの?』

数秒の沈黙。

『はい』


胃が冷たくなる。


『誰?』

『識別は許可されていません』

……()()()()()()()()()()の?


誠人が小さく呟く。

「これ、マジで洒落にならんやつだろ……」


私は考えた。

様々な可能性が頭をよぎる――


これを作ったのは、AIは使ったものの間違いなく私だ。

次に、このゲーム自体はネットワークには接続していない。

でもAI自体はネットワーク接続している。


AIは、その思考プロセスはある程度の規則性がある。

そこに成長性と冗長性(じょうちょうせい)を併せ持つ。

私が使ったAIは、私がインプットした情報を蓄積したうえで思考プロセスが動作し、様々なオブジェクトを生成、システムを構築していく。

ゲーム自体ではなく、そのAIにネットワークから介入すれば……


ハッとある事に思い至る。

再びキーボードを打つ。


『adaptive_history_stabilizer(安定化モジュール)はあなたが作ったの?』

またもや数秒の沈黙。

『いいえ』


驚愕の事実。


『私以外のアクセス者?』

『はい』

誠人も声を失っている。

私は続けてキーボードを打つ。


『私はオーナー?』

『はい』

『システムに対して最も権限を有している?』

『はい』


よし。最悪なパターンではない。

そうなると、次はゲーム自体の質問。


『複数アクセスがあったから、再ログイン時に時間が進んでいた?』

『そうです』

納得。

ログインする度に微妙に時間が進んでいたのは何でだ?とおもったら、そう言う事だったのか。

次。


『私がログインしていない時、私のキャラ(亀姫)はどうなるの?』

『各パラメータとそれまでの行動を基に動作ロジックを形成し、自動で動きます』

なるほど。

要するに、ちょっと古いけど某アニメの○ピーロボットだ。


ついでにもう一つ。

『ログイン時に、キャラ(武将)は変えられる?』

『可能です。オープニング画面でEscキーを押すとそのコマンドが出ます』

ふむ。



つまりまとめると。


●複数このゲームをやっている人がいる。

●私がログアウト時も、誰かがこのゲームに入っていれば中の時間は進行している時がある。

●なりきる武将は変えられる。

●このゲームの最大の権限者は私。


どうしてもロジックが成立しない部分が一つだけある。

それは"現実世界への影響"だ。

ただ、この機能は最大権限者である私によって無効化出来ている。

但し――()()()()()()()、だ。



考えを纏めていると、モニターに新しくウインドウ表示が出た。


―NEXT DIVE RECOMMENDED

―(次の接続を推奨)


「推奨って何よ……」

その下に、新しい表示。


―OTHER ACCESS POINT: KYOTO AREA

―(他のアクセス地点:京都圏)

―DEVIATION SIGNATURE DETECTED

―(逸脱の痕跡を検出)


京都。

今の年代は1567年、5月下旬。


京都で影響力を持つ人物は――

三好三人衆。

美濃を統一し上洛寸前の織田信長。


誠人がゆっくり言う。

「姉ちゃん」

「なに」

「これ、三河だけ守ってても意味なくない?」


私は黙る。


もし他の観測者が信長側をいじっているなら、徳川家だけを最適化しても最終結果は歪む。

歴史はネットワークだ。

一点改変では制御できない。


私はヘッドセットを手に取る。

誠人が言う。


「行くの?」

「行く」

「今度はどこから?」


私は微笑む。


「徳川家からじゃない」

「は?」

「織田家へ行く」


数秒の沈黙。

そして誠人がにやりと笑う。


「姉ちゃん」

「なに?」

「俺たち、たぶん」

「うん」

「とんでもないゲーム作ったな」


私は答える。

「違うよ」


ヘッドセットを装着しながら言う。

「とんでもない"世界"を開いちゃったの」


カウントダウンが始まる。


3、

2、

1、

視界が白に溶ける。

最後に見えたのは、赤い糸が無数に絡み合う巨大な構造体。


その中心でひときわ強く光る結節点。

そこに表示されていた名前。


――織田信長。


戦いは、三河を越えた。

そして、"誰か"もきっとこちらを見ている。




ゲーム内の仕様をもう少し簡略化して記しておきます。


○歴史乖離率:

 ゲーム内の歴史が史実と比べてどれだけズレたか

○安定化モジュール:

 ゲーム内の歴史を史実に戻そうとする

○観測者効果:

 歴史知識があるだけでズレる

○赤い線:

 史実の未来

○白い線:

 新しい未来

○現実アンカー:

 現実世界への帰還率

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