97話 猛禽類 vs 鳶
鳶です。
鳶も猛禽類らしいので少し変なタイトルで申し訳ない。
【 12歳 晩夏 】
メイドから念話で領兵にも振舞う事はできるのだろうかと男爵からの質問が来たので、量的には問題は無いと思うと答えると、鳥を丸ごと買い取るので料理を一品お願いしたいと言ってると伝言を受けた。
無償提供しても良かったんだけどなぁ
対価を貰うと料理をまじめに作らなければならなくなるだろうし……
その後、男爵家のメイドが戻りオーレイリア嬢に男爵からの話を伝えたようだ。
「訓練用の敷地を使って欲しいそうですわ。それと他に必要な物があるようなら、言ってくだされば用意させますわよ」
「あれ? 訓練場ってどこにあるのですか? 上からは見えなかったと思うのですが」
「地下ですわ。南北 2か所ありますの」
「地下?!」
夜間使わない施設を態々建物内に納めたのか?
領地がこんなに近距離なのに、どうしてこうも常識が違うのだろうか……
依頼された件は、いきなり調理して失敗するのが怖いので肉質の確認と、新しく何かできないかを確認する為に今から料理をする事になった。ドワーフ領での作業の為の買い出しはレイとフェンさんに任せ、俺はラプトル肉を買って試作料理を作ってみる事にする。最悪は超高圧角煮にでもするのだが、猛禽類の脂身がどうなってるかも判らないので出来上がりの想像もできないや。
ルティ姉が居てくれたらな~
◆
オーレイリア嬢に訓練場へ案内して貰う事になったのだが、どこから入るものなのかと思えば領主邸の中心に螺旋階段があり、地下へ三階ほど下ってから地下通路で水堀の外まで歩く事になった。
「随分と長いですね」
通路もそれほど広くない。
「獣や虫が侵入した場合の対策ですわ」
「なるほど」
別に入り口があるのかもしれないな。
通路を抜け最後の扉を開けると驚きの光景が広がっていた。なんとピラミッド型の巨大な空間だ。壁は石の色で、柱も無し。三階分以上の高さはあるであろう、仕切りすらない開けた場所である。上部の壁面が発光していて結構明るい。訓練場だとしても豪華過ぎやしないだろうか……
入ってきた場所より更に一階分ほど掘り下げられていて床面積も相当に広い。
すげーなっ
「凄いですね。地下にこれほどの大きさの空間を掘るのは相当大変だったでしょうね」
「ふふふっ 逆ですのよ。建物を作ってから埋めたのですわ」
「えっ?!」
「壁を厚くしても壊されるので少しずつ地面の高さを上げたそうで、何年も掛けてる内に全て埋めてしまう事になったそうですわ。ですので、今の領主邸も水堀の下の階が本来の地上階なんですの」
「凄いっ なるほど、それであの形なんですね」
低いなと思ってたけど、2階じゃなく元は 5階建てだったのか。
「人間も良く考えるわねぇ でも、良い考えよね」
「そうなのかな? 日光にも当たれないよ?」
「例えば村から東に進むなら地下の方が安全そうじゃない?」
「うぁぁ 確かにそうではあるけど……」
「もちろん、やる気は無いけどね」
ロァヴェルナさんとヴァレニーが何かを話し合っている。
◆
やるしか無いのでさっそく例の鳥の肉質を確認するが完全に赤身だな。凄い赤い。皮はかなり分厚く、羽を抜こうとするなら相当苦労する事になりそうだ。食べれる気もしないので鳥皮は諦めるとしよう。
改めて見ると、羽根も丈夫で剣だと弾かれそうだしな…… 斧や槍も無理そうだし、倒すには大型の鶴嘴か大弓でワイヤーを巻いて数で押すしかないんじゃないだろうか。領兵も相当苦労した事だろうなぁ
やっぱロァヴェルナさんの蹴り上げ一撃ってのがおかしいんだよ。
落ちてきたら既に首折れ鯖状態だったんだぜ?
※ 首折れ鯖 鯖を釣り上げてすぐに首を折って血抜きする保存法。
肉に関しては、胴、腕、足と明らかに肉厚が違うので、例え火を通せるとしても丸焼きなんかはできそうにない。骨は余り丈夫でもなさそうなので分解してそれぞれ部位で料理する形になるだろうか。
それと、血はロァヴェルナさんがしっかり抜いてくれているので問題はない。魔法で抜いたから残っててもまず味には影響ないだろう。ま、塩を取る序でだったんだけどな。
さて、料理だが奇を衒う程では無いがある程度は工夫をしたい。
この地で使えるものだと揚げたご飯は使い方次第だろうし、豆腐があったのでおからなんかも良いかもしれないな。
俺としてはやはりここの魔道具を使った物に是非とも挑戦してみたかったんだが、業務用のオーブンでもこの猛禽類が入いるとはとても思えない。かと言って分割して入れるくらいならメイド数人と一緒に複合調理魔法で代用したほうが早いってなるんだよ。エルフの里の日常だからな。
いや、そうだな、やっぱり魔法で行くか。ここで妥協し細かく切った唐揚げとかを出しても興醒めだろうし、極力手羽なども外さないよう肋骨と足だけ外して一枚の肉として調理できないだろうか? 厚過ぎる部分は内側からバランスを取る感じで行ってさ。
あれだ。ナスカの地上絵風で出してみたい!
とは言っても、魔法が複雑化しそうなんだよなぁ
「ロァヴェルナさん、料理手伝って貰えないですか?」
「私、料理は得意じゃないわよ?」
「あたしがやろうか?」
「いあ、複雑そうな魔法なのでロァヴェルナさんが良いかな~と」
「まぁ、言って貰えれば手伝うわよ」
「ちぇ」
「必要な場合はお願いするから機嫌直してよ」
ヴァレニーは不器用な訳では無いのだ。何と言うか器用過ぎるのに雑なんだ。
「まぁ、良いけどぉ~」
だってこの子、説明書は後で読むタイプの子なんだもの……
ロァヴェルナさんにやりたい事を伝え、可能なのか聞くとできるとの事だった。
鳥の解体はメイドと妹たちにお願いした。もちろん床に肉を置く訳にもいかないので、俺も巨大な石製のまな板や足場の建築には協力する。
まずは軽量化魔法で肉全体を持ち上げて貰い、その間に俺が作業しやすい高さまで支柱を何本も作って支えていく。形状は H型で極太。もちろん、重量を分散する為に随時梁や筋交いも追加した。
ああぁ…… 何でも経験しておくものだなぁ
支柱と足場の組み立ては進み、細かな脚立などの道具はメイド自身が作って対応していく。人数が居て良かったわ~
骨組みを組んで人が動き回る様子は正に建設現場! 鳶職かな?
この鳥、ホント食材と思えない程にでかいからっ まぢで。
手羽の骨を取り外す様子なんて、飛行機の整備でもしているかの様だったもの。
後はあばら肉とモモ肉かぁ~
内臓は食べる気が起きない程に大きいから除外する。
あばら肉は鹿のトマホーク・ステーキが売ってたし、それほど捻らず鳥の味で勝負かなぁ 鳥が大きさで鹿と良い勝負してるのがおかしいんだよ。肋骨の直径は鳥とは思えない大きさで、見た目からして食べ応えがありすぎるっ 煮込むとかするなら鍋から作らなきゃいけなくなるっての。
味での勝負だとするとエルフ領のハーブやソースか……
行商人が多いから全く流通して無いとは思えないんだよなぁ
素直に鳥の味に振り切るか…… とは言え野生の魔物の肉は生で食べれる物じゃないだろうし、食べれてもあの類は付ける醤油とうま味ありきな料理だろうしな。
ハムなど熟成系は時間的に無理だし…… やっぱ鍋か? 建造しても良いが、スープってかなり難しいんだよなぁ 未知の肉でやるものじゃない。
ん~ 地鶏の炭火焼風にでもするか? 鳥の脂による燻製さ。
でも炭が無いのか…… 炭から作るとか?
いや、だから木が無いんだってーっ!
商店街の真下の構造体が本来の城壁機能です。
92話の猛禽類の大きさをあちらの子山羊を攫って飛べる大きさになるよう、5mから10mに変更しました。子山羊もこっちの世界より大きいので……




