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93話  ダブル・トマホゥゥク・ステーキ

 【 12歳 晩夏 】



 アリーと一緒に男爵家の家族の紹介を受けていたら夕食が遅れてしまった。

ハリサリフさんは用意させるとも言っていたが、ロァヴェルナさんやメイドたちも居るし、何より商人たちが居る区画は結構遅くまで活動しているらしいので、みんなで行商人に()じって夕食の物色をする事にした。念話で聞いた所、結構期待できそうとの事だった。


しかし、ここの建物の構成も子爵領とは全く異なるなぁ


北の叔父の屋敷や、昨日の男爵の屋敷も石垣仕様だったのに、ここでは全く違う様式を採用してるようだ。周辺の動物や魔物に違いがあるのかもしれないな。


あと、ウチにはここ程行商人の往来が無いからなのだろうけど、建物の入り口の数からしても違うのだ。領主邸は広さと高さも違うし、今居る領主邸を囲む背の低い建築物の長さなんかも違う。


まずここの領地では領主邸は円筒型なんだよね。 二階建てで結構広いのだが、その壁と繋がっている商店街となる建物は 一階建てで、通りを挟み同じ高さの建物で二列になっている。エルフの大通りに似ているが、こちらは一階建ての屋根を繋いでアーケードとなっていて、夜間の光漏れを防いでいるようだった。


領主邸の周り全てが商店だものなぁ 裕福じゃないわけがないわ~


それともう一つ違いがあり、水堀が凄く深い上に広い。水堀を渡す跳ね橋も折り畳み式で、堀の真ん中に支柱が用意される程の長さである。しかも、川の水を利用した物なので水の流れがあり、上流からの水は水堀の出口を跨いで注がれているそうで完全に外周を囲んでいるそうだ。


広いとは言え、高さが無くては倉庫が足りなくならないのかと思ったのだが、商品の出入りが激い上に、ウチのように通年で薪集めなんてしなくても時期が来たら周辺の商人が売りに来るので必要ないんだとか。実に! 実に羨ましいっ!!




 みんなと合流すると建物同士に挟まれた通りがアーケード付きのフードコートのようになっており、今は暗くなるぎりぎりに到着した行商人たちが食事を取っているようだった。


普段から遅めに到着する行商人相手に営業しているようで半数くらいは未だ営業しており、ウチらのような大所帯でも問題なく食事ができそうだった。もちろん無きゃ用意するつもりだったけどね。


「お待たせ。何か良いのはあった?」

「見た事が無い物が結構あるよ!」

ヴァレニーが既に片手に何か食べ物を持っていた。と言うか細長い何かを食べてる。


「じゃあ私も何か探してこようかな」

「ルセアが飲食通りの中央近くに座席を確保しています」

レイが教えてくれる。


「解った。じゃ、何人かずつで分かれて探そうか」

提案するとアリーはティーエや新人たちと行動するようだった。


既にある程度料理を確保しているらしいが人数も居るし、食べた事の無い料理を優先しながら探索する事にした。分かれたのは一つのお店でまとめて頼むと料理が出て来ないかもしれないのと、目新しい物を見逃したくないからだな。


「良い匂いだね。材料は何だろ? 知らないソースっぽいよね」

「そうですね。どこからでしょうか」

「色々な匂いがあるなぁ 少なくとも二泊以上する事になりそうだし、色々と探してみようか」

「はい。産地や収穫時期、材料が希少なのかも聞いておくようにします」

「うん、そうだね」

……レイが商人みたいな事を言っている。



物色していると、異様に長いジャーキーのような何かが売られていた。

さっきヴァレニーが齧っていたものかな?


「こちらは?」

「これはラプトルの肉を、(つち)で丁寧に伸ばしてから切って炙った物だよ。どうだい、一本」

店員が説明してくれた。


店の奥を覗き見ると調理…… 作業しているのが見えるが対象がデカ過ぎた。


幅が 1mはある上に厚みもそれなりにある肉を槌で叩いて延ばしているんだが、延ばした肉を端から巻いていかないと作業台に載らない程に広がっていく。そしてその延ばした肉を再度広げ、何分割かにしてから更に打ち延ばすという作業を繰り返しているのだ。全く料理をしているようには見えんなぁ 鍛冶屋かよ。


試しに買ってみる事にしたのだが、そこから先の工程も予想と随分異なった……

店員が奥に行き、保管庫のような場所の扉を開けると、その中には細長く切られた肉が竿からずらりとぶら下がって居たのだ。なんと言うか、うどん? 生の麺でも乾燥させているかのような見た目で、そこから取り出した U字型の乾燥した肉を中央で切り、それをこれから炙ってくれるらしい。


「 2本貰えますか」

片方を仕舞おうとしたので 2本とも貰う事にした。


「ありがとよ。1本も 2本も手間は変わらないから助かるよ。塩とタレはどうする?」

「折角なので 1本ずつでお願いします」

「あいよ」

「奥の部屋は乾燥設備ですか? 魔道具が使われてたりします?」

「あぁ、ドワーフ製だな。あそこは、あんなのが欲しい、こんなのが欲しいって言うと大体出てくるんだよ」

「へぇ、凄いなぁ」

ドワーフ領に着くのが少し楽しみだ。


しかし、この肉の幅 5㎝は良いとしても、長さが 1mを超えているのは竿に干す効率以外に意味あるのかね? しかもその肉を炙る、焼き鳥の焼き台みたいなこの魔道具も無駄に長いし……


店員は焼いてる肉を 2本のトングで器用に裏返し、一方には刷毛(はけ)で薄くタレを塗って炙り続ける。炙り終え、良く分からない植物の葉に包んで渡してくれた肉はかなり水分の抜けた状態で、焼豚とも違う何と言うかエイヒレっぽい質感な何かだった。

ドワーフの趣味かここの人の感性なのか、エルフとは違う方向へ発展してるな。



他に揚げパンや果物を 2品ほど買ってみんなと合流すると、テーブルには調理されたバカでかいあばら肉が鎮座(ちんざ)していた……

「切ってくれなかったの?」


しかも肋骨(ろっこつ)が 2本分で可食部も中々の大きさ。俺の買ってきた 1m、2本の肉なんて誤差じゃねーか。(したた)る肉汁が何とも美味しそうで困る。


「いえ、その……」

ルンが口籠(くちごも)もる。


弧を(えが)いた骨付きの肉はたぶん大きさ的に鹿だと思うが、骨が拳より太いし、長さは 1m半を超えている。見た目は湾曲したケバブかシュラスコだぞ? 


「切らなくて良いって言ったんだよっ あと、もう 1本焼いて貰ってる」

やっぱお前かいっ これ、絶対丸ごと買うようなものじゃないだろ。


「 ……そなんだ。エルフ流だなぁ」

切り分ける、取り分けるとかが好きだものな。一体何 kgあるんだ?


「あたし、鹿肉好きだわぁ」

「エルフ領でも取れたら良いのだけどねぇ」

「すぐ絶滅しそだよね~」

「そこは加減しようよ」

実はエルフ領には鹿と狼は居ない。猪は少し大きめのがしっかり居るのだが、鹿は居ないんだ。虫型の魔物も多いからか、もしくは別の何かに縄張り争いで追い出されたのだと思う。


「意外と今放したら繁殖するかもね。昔に比べたら里の西の脅威はかなり低くなってるもの。ただ、その分どこかに影響が出るかもしれないけど」

そうロァヴェルナさんが言う。


そりゃそだ。植物と肉食動物両方に影響あるわな。あいつらかなり食欲旺盛だし、捕食者からすると喰い出ありそうだもの。その所為で貴重な植物とかが絶滅しても困るし、エルフの森は放置が良いかねぇ


「畑とかが荒れても困るでしょうし、ウチから買うのが一番良いですかね」

「そうなるわねぇ」

「ふーん」


「放すならドワーフ領側が良いかもしれないね。調査してからになるだろうけど」

「なんで?」

「だってあそこは溶岩で一度焼けたらしいし、特別重要な植物は生えてないんじゃない? 多分だけど」

「お~」

「まぁ、そんなに鹿だけが増えても困るだろうけどね」

「良いじゃん、良いじゃん」

「それもドワーフ領に着いて相談してからよ」


「「その時は是非協力させてください」」

新人メイドと、なぜか妹が乗り気だった……


日々レジャーなレンジャー達だよなぁ



新しい料理を作れと言われて料理人が考えたのは、ならば今まで使っていない新たな道具を利用しよう! でした。そこで業務用オーブンや工業用乾燥室などが採用されています。



もう一本の肉は後日用に保管しました。距離魔法の先の空間は非接触なので生肉の様にそれそのものに微生物が居ないと腐敗しません。ですので冷蔵して保管ではなく、皿ごと焼き直して、皿ごと保管します。

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