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3-20 魔法教えます

「別に構わないけどあたしは魔法の教え方なんて知らないわよ?」

「それはこっちでなんとかするよ。じゃあちょっと失礼するね」


 そう言って俺は座っているコールの後ろに立ち、両手をコールの両肩に置く。コールは髪を後ろで2つに分けて結んでいるのでこの立ち位置だとうなじが見える。いや、そんなやらしい目で見てる訳じゃないので。


「ん、なんかくすぐったいわね」

「そこは少し我慢してもらって。今って俺の魔力を感じる?」

「あー、これが魔力なの?なんか少し触れてるところが暖かい感じがするかも」

「初めはそれくらいでいいよ。じゃあこのまま氷の魔法を使ってもらっていい?」

「わかったわ。ちょっと待ってね」


 コールは右手を机の上に出して魔力を込める。いや、込めているように俺は見えるが本人にはその感覚は無いらしい。なんとなく使ってるって言ってたからな。

 コールが魔力を込めると間もなく右手のひらの上に小さな氷の玉ができる。


「これで良いかしら?」

「ありがとう。じゃあこれを凍らせるのもお願いしていい?」


 やはり魔力の流れを目で見るだけよりも魔力共有をした方がわかりやすい。

 俺はポケットに入れていた果物を1つコールに渡すと今度はそれを凍らせるのをお願いした。何かを凍らせるのと無から氷を作りだすのは魔力の使い方が違う気がしたのだ。


「準備がいいわね。それじゃあいくわよ」


 果物を手に取ったコールがそれを魔法で凍らせる。

 俺とコールのやり取りを見ながらシルフとセレンは俺たちに聞こえないようにひそひそと会話している。


「はい、できたわよ。これで良かったの?」

「ああ、十分だ。ありがとう」


 俺はコールが凍らせて氷菓子となった果物を受け取るとナイフで半分に切ってシルフとセレンに渡す。2人は嬉しそうに氷菓子を食べ始めた。


「まさか2人に食べさせるためにやらせたんじゃないでしょうね?」

「そうじゃないけどせっかくだしね。2人ともコールのお店で買った氷菓子を気に入っていたから」

「それは嬉しいけど。それで今のが魔法を教える方法なの?」

「他の人のやり方は知らないんだけど、俺の場合はね」


 俺はコールの後ろから移動して椅子に座る。席を立つ前と同じように4人で机を囲む。

 俺は先ほどコールがやったように右手を机の上に出して魔法で氷を作った。うん、問題ないな。


「嘘でしょっ!?魔法ってこんな簡単に覚えられるものなの?」


 俺が氷の魔法を使うとコールは驚いて立ち上がる。


「こんなことできるのはギンジだけだと思いますわよ」

「そうですね。普通は何日、いや何週間もかけて教わるらしいし」

「2人の反応を見るとギンジはこれが普通なの?」

「そうだね」

「そうですわね」

「なんなの一体・・・」


 シルフとセレンは多少のことでは驚かなくなってきた気がする。コールとしてはまるで魔法が盗まれたかのような早業に驚いているようだ。


「詳しい話はそのうちすると思うけど、これが俺の特技だと思ってもらっていい。全く同じではないけど魔法を教える場合もそれなりに効率良くできると思う」

「覚えるだけじゃなくて教えるのも得意なのね。これはギンジだからできることなの?それとも方法さえわかれば誰でもできることなのかしら?」

「多分俺だけだと思う。もしかしたら他にもできる人がいるかもしれないけど」

「誰でもできる方法なら危なかったけどギンジだけなら大丈夫そうね」

「それは魔法協会に良く思われないってこと?」

「そうね。魔法教師だってそうだし魔法使いとして働いてる人もいるんだからみんながみんな魔法を使えるようになったらたくさんの人が職を失うわ」

「それは理解してるつもりだよ。個人的にはみんなが魔法が使えるようになった方がいいと思ってるんだけどね」

「魔法使いには選民思想を持ってる人もいるからその考えは隠しておいた方がいいわね」

「もちろん言いふらすようなことじゃないからね。コールも俺のことを秘密にしてほしい」

「言う分けないでしょ!!それに1回の魔力共有で魔法を覚えたなんて言ったって誰も信じないわよ!」


 とにかく魔法協会を知ってる人からしてもやはり俺は異質なようだ。


「そう言えば教えるのも得意ってことはあたしに氷以外の魔法を教えてくれるの?」

「今俺が使える火と水は教えるよ」

「ってことはシルフやセレンに魔法を教えたのも・・・」

「俺だね。氷の魔法はシルフにも教えるつもりだし、セレンは・・・」

(わたくし)は結構ですわ。しばらくは水の魔法を少しでも上手く使えるように練習することにしますわ」

「ということらしい」


 シルフは新しい魔法を覚えられるのが嬉しそうだし、セレンは他の魔法がまだ納得いってないようなので先にそちらをちゃんと使えるようになるまで練習するとのことだ。確かに氷の魔法よりも水や火を使える方が便利だからな。


「それでどうやって教わればいいの?今すぐにでも始められるの?」

「もちろんすぐ始められるけど教える場合は教えてすぐ使えるようになるわけじゃないし、コールの場合は先に魔力の流れを操れるようになってもらうところからになる」

「新しい魔法が覚えられるなら何でもいいわ。どうすればいいの?」


 コールは新しい魔法が覚えられることに気が焦っているようだ。でも魔法使いの人はこういうものかもしれない。俺も新しい魔法を見たら早く使えるようになりたいしな。


「じゃあまずは魔力の流れを感じることから始めよう」


 なんとなくで魔法を使っているコールにはセレンの時と同じように体に俺の魔力を流して流れを感じるところから始めようと思う。火や水もそうだが身体強化などもできるようになってもらわないと困るしな。

 俺はコールと向かい合って両手をつないで輪を作る。


「じゃあ今から魔力を流していくから」

「分かったわ」

「それじゃあいくよ」


 そう合図してゆっくりと魔力を流していく。魔法自体は使えるコールはセレンよりも抵抗がなく魔力を流すことができた。


「こんな感じで魔力を流していくんだけど魔力の流れは分かる」

「うん・・・分かるわ・・・これが、うっ」


 コールは俺の手を振りほどくと口を押えて部屋の外へ走って行った。


 魔力酔いだ。

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