3-19 体力のない女
「焦る必要もないと思いますが、私は問題ないと思いますわ」
「私も同じ意見ですね。ギンジさんのことなんでギンジさんの判断に任せますが」
昼過ぎまで採集をした後、早速コールに剣を貸して軽く訓練をしてみた。こういった武器を使ったことは無いと言っていたのでとりあえずシルフに見本をお願いして握りや構えを教えた後、素振りをしてもらったが・・・
「はぁ、はぁ、これ、こんなに疲れるの?シルフも軽く剣を振ってるしセレンなんてさっきは息も切らさず魔物を狩ってたけど」
コールは魔力の流れを操って身体強化をするのも苦手なようで体を鍛えてるわけでもないので少し素振りをしただけでバテてしまった。
「魔力の流れを使って身体強化をすればいいんだけどできないのか?」
「はぁはぁ、どうやるのよそれ?」
「もしかして治癒もできないのか?」
「治癒魔法が使えるなら治癒師になってるわよ」
コールは魔法を教わったことが全く無いので身体強化や自己治癒もできないと言った。明かりを出すのも少しの間照らす程度で長時間暗闇を照らし続けたりするのは無理だそうだ。
初めに会ったシルフが魔法が使えないと言いつつもそのあたりは使えたので魔力が全く使えない人でなければ誰でも使えるものだと思っていた。
「プレートと使う時にも魔力の流れは使っているだろ?それと変わらないんだけど」
「プレートを使うのに魔力なんて意識したことないわ」
「じゃあ氷の魔法を使う時も?」
「ええ、なんとなく使ってるけど」
生まれつき魔法が使える人の感覚ってそんな感じなのか。いや、これも個人差はあるだろうけどコールは完全に感覚で魔力を操ってるので応用が効かないみたいだ。天才肌というかこういう感覚派の人のほうがふわっと色んなことをやってのけるイメージだったがそうでもないらしい。
なんとか身体強化をしようと体に力を込めているが魔力を上手く操れないまま素振りを繰り返したコールはすぐに疲れ果ててしまった。今日はここまでだな。
コールを馬車に詰め込んで街に戻った後、魔道具屋に行ってシルフが調合に使わない素材を売る。今日は量が少なめだけど魔道具屋の店員さんは喜んでくれた。
その後宿に戻ったがコールは部屋で休むと言ったので俺とシルフ、セレンの3人で昼食を摂るために食堂に来て今に至る。
話をしていたのは「コールに魔法を教えるか」ということだ。無意識でも魔法自体は使っているのでセレンの時のように無理やり魔力を流せば魔力の流れは感じられるようになるだろうし、それを意識できるようになれば身体強化や自己治癒くらいはすぐにできるようになるだろう。魔力共有をすれば火や水の魔法もすぐに使えるようになるかもしれない。
「このまま一緒に旅をするなら遅いか早いかの違いくらいかなと思いますが」
「シルフの言う通りですわ。何かあった時の為に剣くらいは使えるようになっていただかないと」
2人の言う通りだ。今のところ身の危険を感じるような人や魔物に襲われたりしてないが今後もずっと平和に過ごせるかは分からない。何かあった時にある程度自分の身くらいは守れるようになってほしい。
「まずはセレンにしたように魔力を流してみるか。本人は流れがよく分かってないみだいだし」
「そうですわね。それかいっそ氷の魔法を先に教わってはどうです?」
「ん?そんな簡単に教えてくれるかな?」
「普通は'そんな簡単に覚えられない'と思っていますわ。それにコール本人は魔力教師になることも考えていたんでしょう?氷の魔法を独占したいというわけでもないでしょうし」
「そう言われるとそうか」
「私はみんなが採集や調合をできるようになると少し不安かな」
「シルフ、そんなことを言うなら私は特別なことは何もできませんわ。それにその考え方ですと世界一の才能がなければいつだって誰かと交代させられてしまうことになりますわ。少しでも役に立てるようにと頑張るのは良いことですが勘違いした自分の役割を守るために他の人の成長を邪魔するのはよくありませんわよ」
「セレンの言うこともわかるけど、中々そんな風に考えられないよ」
「シルフ、あなたは第一夫人なんですからもう少し自信をもってくださいませ」
「だ、第一夫人って!!」
「ギンジ、あなたがちゃんと愛情表現しないからシルフが不安になるんですわよ?」
「す、すいません」
「ギンジさんが謝ることじゃありませんよ!セレンもギンジさんを困らせちゃだめだよ!」
「ギンジがしっかりしないから私が意地悪してると思われてしまいますわ!シルフ、ギンジよりかっこいい人に命を救われたらギンジより好きになりますの?」
「ええ!?そんなことは無いと思うけど」
「ギンジだって同じですわ。もちろんどんどん囲う女の子を増やして少し不安にもなりますが、シルフより採集が上手かったり私より剣が強い子が現れたからって私たちより好きになるわけではありませんわ。ギンジ、そうですよね!?」
「そうですね。そんなことは無いと思います」
「なんで敬語ですの。まぁそういうことですわ」
とりあえず夫人sの話はまとまったらしい。コールに関しては本人に話を聞いてみてから考えよう。そのためには俺のことを話して先に氷の魔法を教わった方が早そうだな。
昼食を摂った後、食堂に来なかったコールの為に部屋に戻って軽く食べれる物を作ってもらい部屋に戻る。部屋に入るとコールはすでに起きて椅子に座っていたので食事を渡してテーブルを囲むように俺たち3人も座る。
「あたしだけ休んでてごめんね」
「構わないよ。俺たちは食堂で済ませちゃったから気分が悪くなければ軽く食べるといい」
「ありがとう。それで考えは変わった?」
「ん?考えって?」
「だってちょっと剣を素振りしただけでバテて寝ちゃうなんて役に立たなすぎるでしょ?早速追い出されちゃうかなって思ってたんだけど」
「そんな話は全くありませんでしたわ」
「そうだよ。ギンジさんもそんな話はしてなかったよ」
「そうなの?てっきり3人でその話し合いをしてるもんだと」
部屋で休んでいたのは疲れていたのも事実のようだが俺たちがコールの進退に関して話し合いをするために席を外す意図があったようだ。加入する前はぐいぐい押して来たのにこういうところは気を使うのか。
「コールを追い出すなんて頭にもなかったがコールのことを話してたのは事実だ。それでコールに少し相談があってな」
「なに?そういうことならもう少し陽が暮れてからの方がいいんだけど」
「コール!そう言う話は無しといったはずですわ!」
「ごめんごめん、冗談だよ。あたしだってさっきまで追い出されちゃうかもって少し不安だったんだから」
「それはあなたの早とちりでしょう!?」
「そうかもしれないけど・・・」
この茶番も慣れてきたな。セレンは叱っているがシルフは以前のように焦ることなく普通にしている。
「まぁいいや。それでギンジ、相談って?」
「俺に氷の魔法を教えてほしい」
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