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3-18 金の街

「エルシュヴィレンはそんないい街じゃないわよ」

「そうなの?」


 コールが今泊まっている宿を引き払って俺たちが泊まってる部屋に戻ってきた後、次に行く街のことやここケルソンバートをいつ発つかなどの話し合いを始めるとコールが次に行こうとしている街について教えてくれた。


「でも良い商品や流行している物が売っているって聞いたけど。商売の街って感じじゃないの?」

「そういった面があるのは本当よ。でもエルシュヴィレンは商売の街なんて良いものじゃないわ。あそこは'金の街'よ」


 人も物も何でも金でやりとりされる。暴力や強奪はないが相手の足元を見た取り引きや賭博に金貸しに売春と金と合意があれば何でも許されるようなところらしい。


「いい物が集まるというか金をもってる人が集まってるから自然と高く売れる物が集まるのよ。そうなると人材も優秀な人が集まるからね。発展はしてるし一流の人と物が集まってるけど、やっぱりあそこは金の街って感じね」

「じゃあコールはエルシュヴィレンでは氷菓子の販売はしなかったの?」

「無理よ無理。そりゃ店が出せればそれなりに稼げただろうけど場所代が高すぎてまず場所が借りれなかったし」

「そんなにか」

「逆にケルソンバートは外の人も商売しやすいからね。あたしとしてはこっちの方が商売の街って感じがするわ」

「なんか話を聞いてるだけでもあまり行く気がしませんわね」

「そうですね。教会とかも他の街と違うんでしょうか?」


 コールの話を聞いてセレンとシルフも興味がなくなったようだ。俺はちょっと見てみたい気もするが金が全ての街と聞くと何か面倒ごともありそうだしな。


「教会は普通だったわ。子供たちも将来の為にそれぞれ頑張ってたわよ。方向性は置いといて」

「せっかくだから節末祭を見てみたいと思っていたんだけど止めといたほうがいいかな?」


 ここまで3つの街で節末祭を見てきているのでどうせなら次の街でもと思っていたが。


「宿も食堂も高いし、どうせ街を歩いたってあたし達の値段を聞かれてその度に気分が悪くなるだけよ」

「そんなことをして問題にならないの?」

「交渉は自由だからね。あたし達3人の見た目は良いし逆にギンジは金を持ってるようには見えないからね。いい女を連れて歩くなら相当金を持ってそうな見た目をしないと、売るために連れ歩いてると思われても仕方ないわ。そういう街よ」


 それが当たり前の街ならそれに対して腹を立てる意味は無いし、何かトラブルになったら悪いのはこちらだろう。


「だったら街にも泊まらず素通りするくらいの方がいいか」

「あたしはその方がいいと思うわよ。あなた達ってみんな良い人そうだし。'金が全て'みたいな価値観は合わないんじゃないかしら」

「それならさっさとジェドウィックまで行ってしまうか。昨日も話したけどジェドウィックに行くのは大丈夫なんだよね?」


 コールが飛び出して来た街に戻ることをもう一度本人に確認する。


「それは構わないわ。ただもしかしたらギンジの第三夫人として振る舞うかもしれないからその時は口裏合わせてね」

「夫人って・・・まだ俺は未婚だよ」

「あと1年か2年の話でしょ。というかシルフもセレンも別に結婚できない歳でもないんだからさっさと結婚しておけば?」


 そう言ってコールがシルフとセレンに目線を送るとシルフは愛想笑いを浮かべ、セレンは大きく息を吐きながら首を横に振った。甲斐性なしですまないな。

 話し合いはそこそこに良い時間になってきていたのでコールの歓迎もかねて少し豪華に夕食を取ったあと、4人同じ部屋で眠った。



 翌日、折角新しい仲間が増えたので普段の俺たちの生活の紹介もかねて4人で採集に向かう。シルフは素材の採集、セレンはシルフの護衛、俺は馬車の護衛をいつも通りしてコールは3人の間をうろうろしてそれぞれと話をした後はシルフの近くで採集する素材のことを聞いたり一緒に採ってみたりしている。採集関連の説明をしている時のシルフは普段と違って自信があるようで声も表情も生き生きしていてとても可愛い。いや、普段から可愛いんだけどね。


 そんな風に採集を眺めたりセレンが魔物を倒したりするのを眺めながら馬の世話をする。4人になったしこれからも頑張ってもらわないといけない。よろしく頼む。


「シルフもセレンもすごいわね」


 馬車まで戻ってきたコールが俺に話しかける。


「そうだな。でもコールも一人で街を出て商売をしていたんだ。珍しい魔法が使えるとしても中々できることじゃないよ」

「ありがと。でもシルフも剣の訓練をしてるんでしょ?あたしも剣を使えるようになった方がいいかしら」

「魔法では戦えないのか?」

「魔法で?氷付くって投げつけるくらいしかできないわよ」

「氷の形を刃のようにしたりとか尖った針のようにしたりとかってできない?」

「それは練習したらできそうだけどそれなら剣を持った方がいいでしょ。溶ける心配もないし」

「いや、持って戦うんじゃなくてそうやって作った氷の刃や針を離れた魔物に飛ばして攻撃って無理?」

「無理ね。それは氷を作ったり物を凍らせる魔法とは別の力が必要になるわ。あたしにはできないわ」

「そう言われると確かにそうか」


 魔法で物質を生成するのとそれと飛ばすのは確かに別の方向性の魔法と言える。ということは俺が水の刃や弾を飛ばしてるのは水の魔法だけじゃなくて別の魔法も使ってることになるのか。この辺も要検証だな。


「剣でも他の武器でもいいけど近接で身を守ったり相手を攻撃する手段はあった方がいいから訓練していこうか」

「そうね。よろしく頼むわ。あの2人もギンジが訓練したの?」

「シルフは俺が剣を教えてきたけどセレンは天性のものだよ」

「そうなのね。羨ましいって言ったら怒られるかしら」

「セレンは魔法が苦手だからね。コールの魔法を羨ましいと思ってるかも知れないね」

「それはもう聞いたわ。みんな無い物ねだりしてしまうものね」

「これから見に付ければいいさ。とりあえず街に戻ったらコールの剣を買いに行こうか。いや、俺のでよければ使わなくなったのがあるから試しにそれを使ってみて重さや大きさが合うならそれでいこう」

「ありがとう」


 あっさりとした礼を言ったコールだったけど、その表情は少し照れているように見えた。

読んでいただきありがとうございます。


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