3-16 新しい武器
宿に戻った俺とセレンは先ほどコールと話した内容を伝えた。
「シルフがいないところで話を進めてごめん」
「いえ、別行動だったのでそういうこともあると思います。それよりギンジさん。そのコールさんでしたっけ、その方はどうするんですか?」
「明日もう一度会う約束をしているからそこでシルフと話してもらってそれから決めようと思ってる」
「私次第ということですか?」
「シルフに決めさせるというわけじゃないよ。コールの話を聞いて手助けできたらとは思ったけど俺にとって大事なのはシルフとセレンだからね。2人にとって一緒にいたくない人なら連れて行くつもりはないよ」
実際いきなり声をかけてきたり、よく知らないのについて来ようとするコールの積極性はすごいと思う。シルフはどちらかというと人見知りする感じだし相性が悪ければシルフがしんどいだろう。
「その人も教会出身なんですね」
「そうだな。節末祭のお店で見た時は珍しい魔法を使っていたし自分で商売をしていたからそんな苦労をしているようには感じなかったけど、逆にそのせいで苦労してるみたいだね」
「元から魔法が使えるだけでも羨ましいと思いましたが、色んな事情があるんですね」
「公認が無いと魔法教師をするのも難しいみたいだしね」
人に魔法を教えられないのに教えるふりをする詐欺師もいれば、未公認の足元を見て成功報酬の後払いで依頼して魔法を使えるようになったのに使えないふりをして報酬を払わないやつもいるらしい。
魔法教師の公認なんて協会が利権の為にやってるのかと思ったがこういう事案を聞くとある程度必要な制度なのだと思う。
「とにかくコールの事情自体は一緒に旅をしなくても解決できなくはないから、コールと話してみてシルフが一緒にいてもしんどくない、辛くないかで判断してくれたらいいよ」
「私の判断で・・・」
「シルフ、そんなに深く考えることはありませんわ。ギンジが私達を大事にすると言ってくれてるのですから、友人が増えて良かったと思うくらいで大丈夫ですわ」
「そんな気軽でいいのかなぁ」
「もしコールが旅に同行することになってもしばらくは次の街までの限定的なものにしようと思っている。街から街を移動すればそれなりの時間を一緒に過ごすし寝食も共にするからね。俺たちが嫌だと思えばそこでお別れだし、逆にコール側が嫌だと感じればそこで離れてもらってもいい。という形にしようと思ってる」
体験版じゃないけどそういった期間は必要かなと思う。俺だってシルフともセレンとも一緒に生活をして信頼関係を築いてきたんだ。
「分かりました。不安ですがとりあえずコールさんと会ってみてから考えます」
「うん、それでいい。よろしく」
「それじゃあこの話は終わりですわね!それより調合の方ですわ。シルフ、どうやって作ったんですの?」
「これはね、、、」
セレンが天然か狙ってか分からないが話題を変えて場を明るくしてくれる。助かる。
その後は夕食の時間までシルフの調合の話を俺とセレンで聞いて過ごした。いつもと違って少し得意げなシルフはなんか可愛かった。
「お祭りの時依頼ですね、コールです」
「はい、シルフです」
「じゃあ話を進めますわ。ギンジ、あなたはちょっと部屋から出ていてくださいませ」
「えっ!?」
「えじゃありません。ここからは女同士の話ですわ。ギンジは武器屋に昨日の棒でも受け取りに行って、あとこれ。昨日シルフが調合した薬ですわ。これを魔道具屋の人に見てもらって出来を聞いて来てくださいませ。こちらも話し合いが終わりましたら役場の中の休憩所で待っていますから。ギンジが先に戻ったらそちらで待っていてくださいませ」
翌日、役場でコールと合流し昨日のように個室を借りて中に入る。シルフとコールが自己紹介し終わって話し合いを始めようとしたとたん、セレンの捲し立てられて部屋から追い出されてしまった。
俺が困惑してると
「大事なの私たち女3人の仲でしょう?私は問題ありませんがシルフもコールさんもギンジの前で気を使っていては意味がありませんわ。ここは女だけでちゃんと話をしますので。ギンジはいなくて大丈夫ですの」
「そうか。じゃあこっちは頼む。俺はセレンの言う通り街に行ってくるよ」
「それがいいですわ。いってらっしゃいませ」
そうセレンに送り出されて俺は一人で役場を出た。なんか嬉しいような寂しいような。ただセレンの言う通り女だけのコミュニティは男の知らない部分もあるんだろうしここはシルフとセレンの判断に任せよう。
一人で街に出た俺はセレンに言われた通り武器屋に行って昨日頼んでいた棒を受け取りに行く。
「おう兄ちゃん、用意はできてるぜ」
俺が店に入るなり武器屋の主人が声をかけてくれる。カウンターの上には昨日見せてもらった黒い棒が置いてある。
「槍と違ってどちら側でも使えるように端の部分と握りの部分は対称にしてある。俺もこんな加工するのは初めてだから良く分かんねぇがこんな感じで良かったかな?」
「はい、ありがとうございます」
実際に持たせてもらっても確かにどちら向きで持ってもしっくりくる気がする。今使っている物より使いやすそうだ。
「それとこんな物も作ってみたがどうだい?」
そういって主人が出した物はショートソードより短いくらいの武器で片側が剣の握りのようになっており鍔も付いている。刀身にあたる部分が刃ではなく薄く平べったい金属の板で出来ている。
「棒って言っても大きさは槍と変わらないし普段持ち歩くのも大変だろう。これなら腰から下げられるし、ほら」
主人がそう言って鍔の部分の細工をいじると「ガチッ」と金属の音がするして刀身が外れて中から短剣が出てきた。
「こうしたらちゃんと使えるからな」
「おお!!」
仕込み刀みたいでカッコイイ。つまり短剣の鞘の部分が金属になっていて細工で外れないようになっているから鞘のまま振れば相手を切らずに剣を受けれるし殴れる。
「これはいいですね!最高です」
「金属製の鞘自体はあったからな。それをちょっと加工したんだが兄ちゃんが欲しいのはこういうものだろ?」
「はい、この細工が無くても十分ですがちゃんと短剣としても使えるのは非常にいいですね」
「じゃあこれも買いでいいな?」
「はい、ちなみに値段は・・・」
値段は思ったよりも安かった。どちらも人件費はかかっているが棒は刃が付いてないし仕込み短剣も短剣自体はそこまでいい物ではないのでそんなに値段が上がらないようだ。1点物なので高くなるイメージだったがこの世界では需要が大事なのでこういった変わり物は有名な人が作った作品じゃないと売り物にはならないそうだ。
「ありがとうございました」
「おう、俺も珍しい物を作れて楽しかったよ!」
早速受け取った仕込み短剣を腰に下げ、棒を持って武器屋を出る。主人曰くこのケルソンバートは色んな街から珍しいものが集まるのでこういった変わった物に興味を持つ職人や商人はいっぱいいるそうだ。食堂なんかでも立ち寄った旅人に聞いた料理をその場で作って客に出すなんてこともあるらしい。
なんにせよこの仕込み短剣は棒を持ち歩かなくて良くなるので街中などを歩くのに非常に助かる。
武器屋を出た後、またまたセレンの言いつけ通り魔道具屋に行ってシルフの調合した薬を見てもらう。
魔道具屋の店員さんは渡した瓶を光にかざしたり蓋を開けてにおいを嗅いだりしている。
「うん、簡単なレシピだけどちゃんとできてるよ。これは魔物避けだね。野営なんかの時に周りに撒いておくと良いよ」
おお!出来は良かったようだ。シルフに伝えないと。
「あのレシピを見て、一人でこれが作れるなら他のレシピの調合もうまくやれると思うよ。お嬢ちゃんにも頑張るように伝えてくれ」
「はい!ありがとうございます!」
俺は見てもらった薬の瓶を返してもらって鞄に仕舞い、魔道具屋を出る。これで用事はすんだが女達の話し合いは無事終わっただろうか。
とりあえずやることも無いのでそのまま役場に戻る。役場の休憩所に並んだテーブルにすでに3人が座っていて話をしている。
「ちょっとギンジ!遅いわよ!!」
「コール、ギンジにはお使いを頼んでいたので仕方ありませんわ」
「ギンジさん、それが昨日言ってた新しい棒ですね。黒くてカッコイイですね」
3人は役場に入ってきた俺を見つけると姦しく話しかけてきた。
いったい何があったんだ?
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