閑話 2人の乙女
「それで、シルフはどうなんですの?」
「ど、どうって何が?」
夜中にギンジと見張りを交代したシルフと2人きりになるとセレンが切りだした。
「今日の夕方の件ですわ。シルフはギンジのことをどう思ってるんですの?」
「それは・・・好きだけど」
「それはもちろん一人の男性としてですわよね?」
「・・・」
「私たちはまだ年齢は子供ですがこうして教会や親元を離れて生活をしているのですから。いつまでもこのままではいられませんわよ」
「でも私はまだギンジさんに養われている身だから」
「それは形の問題でしょう」
シルフのはっきりしない態度にセレンが大きく息を吐く。
「シルフがギンジを好きなら応援しますわ。順番は譲りますわよ」
「順番って・・・ギンジさんの気持ちもあるでしょ」
「そんなの一番関係ないですわ」
「ええっ!?大事なことじゃないの?」
「嫁入り前の娘を2人も連れ出しておいて責任取らないなんて言ったらどこかの虎が黙っていませんわよ」
「どこかの虎って・・・」
「まぁお父様はともかく、ギンジがそんなに甲斐性ないならその時はその時ですわね。シルフと2人で暮らしていきましょう」
「ふふっ、それも楽しそうだね」
「そこに同意しないで欲しいですわ」
冗談を真に受けるシルフにセレンは呆れてしまう。
「ともかく、ギンジだって若い男なんですから。何かあってから考えても遅いんですわよ?シルフもちゃんと覚悟しておかないと」
「何かって・・・?」
「お互いに想い合ってる若い男女がすることなんて決まってますわ」
「そ、そういうのはまだ早いんじゃないかな!?」
セレンが何を言ってるのかやっと理解したシルフは顔を真っ赤にして手をパタパタと振っている。
「それでもギンジはすでに15歳ですし、私たちだってあと1,2年で大人として扱われますわ。私たちくらいの年齢で婚約してる方だって少なくありませんわ」
「そうかも知れないけど、いきなりすぎて」
「シルフ、いいですか?」
そう言ってセレンは真面目な顔をしてシルフを見つめる。
「ギンジの性格や行動を考えて欲しいんですわ。このまま旅を続けていけば私たちのような方が増えるに決まってますわ」
「それはなんとなくわかる」
「もちろんギンジが人助けをするのも、助けられた方がギンジに好意をよせるのも理解はしておりますわ。ですがその方が私たちやそれこそギンジより年上の可能性だってありますのよ?」
「あっ!!」
「その時にその方が結婚しましょう!となった時に待ったをかけても遅いんですわ。もちろんギンジが私たちをないがしろにするとは思えませんが・・・後から来た方に先を越されるのは私は我慢できませんわ」
「うん・・・」
「ですから早めに私たちの関係をきちんとしておきたいと思っていますの」
「セレンの気持ちはわかった」
「今すぐ婚約をしたり恋仲になったりとは言いませんが、この先どうなりたいのかとシルフ自身の気持ちだけでも決めておいて欲しいですわ」
「そうだね。うん。ちゃんと考える」
シルフはぎゅっと目をつぶった後、目を開いてセレンを見つめる。
「セレン、ありがとう」
「構いませんわ。シルフだって私の大好きな家族ですから」
「そうだったね。私もセレンのこと大好きだよ」
「!!嬉しいですわ!」
そう言ってセレンがシルフに抱きつく。
「シルフが男の人だったらギンジとシルフのどちらにするか迷うところでしたわ」
「何言ってるの。それよりちゃんと見張りしないと。夜を任されたのは初めてなんだから」
「そう言えばそうでしたわね」
「セレンは眠くない?ギンジさんは眠くなったらいつでも起こしてって言ってたけど」
「今は大丈夫ですわ。このまま朝までいけそうな気がしますわ」
「でもそうなるとまた移動中の馬車で寝ないとだよ?」
「そうでしたわ!!それは困りますわね!ギンジ!交代ですわよ!!」
セレンはそう言って荷台で眠る男の元へ走っていくと肩を揺すって起こすのだった。
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