3-4 森の中の村
昨日は投稿できなくてすいませんでした。
リアンクルを出る前に領主のカーティラさんに届け物を頼まれた俺たちは届け先の森の集落まで来たのだが、この集落はかなり警戒心が強いようでいきなり門前払いされそうになっていた。
集落の入口と思われる門が見えて来たところで馬車を止めるように言われ、そのまま話をする間もなく帰れと言われてしまった。
「リアンクルの領主よりこちらの集落に届け物を頼まれたので持ってきた。すぐに帰るのは構わないからこれだけでも受け取ってもらえないか!?」
「なんで獣人の街から只人が使いで来るんだ!!」
そんなことを言われても・・・。荷物くらい受け取ってくれたらいいのにめんどくさいな。
「ギンジ、何かありましたの?」
御者台の後ろの幕をめくり荷台からセレンが顔を出す。
「なんか只人は警戒されちゃってるみたいでこのまま帰れって言われて」
「はぁ。仕方ありませんわね。お父様には次の街からでも手紙を書けばいいでしょう。この荷物も邪魔なので次の街で売ってしまえばいいですわ」
「そんなんでいいのかな?」
「断られたのはあちらの方々でしょう?それにダメだったとしてもしばらくリアンクルに戻ることはありませんし大丈夫でしょう」
まぁここで争って無理やり荷物を渡すというのも訳がわからないしそうするか。
「半獣人もいるのか!!その娘も使いのものか!?」
荷台から顔を出したセレンが目に入ったのか門番が声をかけてくる。
「私はリアンクル領主カーティラの娘、セレンですわ!!」
「本当か!?領主の娘が来ているのか!?」
「信じる信じないは好きにすればいいですわ!!それより耳や尻尾の有る無しで人を判断する方とは話したくありませんので!!ギンジ、戻りましょう」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!」
急に対応が変わったな。領主の娘パワーか。それともセレンの見た目かな?
門番の人が合図をすると横の木から別の獣人が出て来る。その人に小声で何かを伝えるとその人は集落の方に向かって走っていった。
「いま長に確認をしている!!少し待ってくれ!!」
「わかった!!」
「ギンジ、あんな失礼な方々は放っておいていいのでは?」
「まぁわざわざこんなところで暮らしてるんだし、警戒するのは仕方ないよ」
「そうかもしれませんが・・・」
「ギンジさん、ちょうどいいので馬に休憩をあげましょう」
セレンと話してるとシルフが荷台から俺に桶を渡してくる。
「それもそうだな。ありがとう、シルフ」
俺はシルフから桶を受け取ると水を貯めて馬に飲ませる。すると荷台からシルフも野菜を持ってきて馬に与える。セレンも何かしたかったのか馬のブラッシングをしている。うん。この子にはいっぱい頑張ってもらってるしな。労いも大事だ。
「待たせた!!長に確認したところ問題ないとのことだ!!先ほどの失礼な対応は謝罪するのでこのまま村に入ってきてもらえるだろうか!?
馬の世話を一通り終わらせて桶などを片付けしているとあちらも話が付いたようだ。
「わかった!!」
「いいんですの?」
「別に喧嘩しにきたわけじゃないんだから。謝罪までするって言ってるし門番の人がしっかり仕事をしてる証拠だよ」
「カーティラさんの依頼が達成できそうで良かったですね」
「そう、シルフの言う通りだよ」
先ほどと打って変わって受け入れる対応になった向こう側にセレンは文句がありそうだったがシルフはもめ事にならずに安心しているようだ。
馬車のまま集落に入っても良いようなので俺は御者台に、2人は荷台に乗り込んで馬車を進める。門番の人は'村'と言っていたがどれくらいの規模なんだろうか。
「先ほどはすまなかった」
「いえ、世の中悪いやつもいますから。しっかり警戒されているのは住人にとって大事なことです」
「そう言ってもらえると助かる。私はヴェイ。ここからはこのマルスが案内するからそちらに従ってくれ」
「わかりました。マルスさん、よろしくお願いします」
先ほど村に知らせに走った人がマルスさんというらしい。この人は半獣人で耳は犬かな?尻尾ももふもふしているので犬系だと思う。手には弓を持っていて腰に矢筒を下げている。この世界に来て弓矢を使う人は初めて見た気がするな。初めにやり取りをしたヴェイさんはこのまま門番を続けるようだ。
「ああよろしく。ちなみに敬語は使わなくても大丈夫だ。俺も苦手でな」
「じゃあ遠慮なく。俺はギンジ、荷台にあと2人乗ってるけどそっちはまた後で」
マルスはそう言って御者台の俺に手を出したので俺もその手を取って握手をする。
「さっきは失礼した。普段ここに来るのは獣人がほとんどで只人は来ないからついあんな態度になってしまってな」
「気にしてないよ」
そのまま案内されて村に入る。おお、思ったよりしっかりと村が作られている。塀で囲われていて中は木が刈られて木造の平屋がいくつかある。
「馬車はここで預かる。問題ないか?」
「ああ、預かってきた届け物ももう渡してしまっていいか?」
「そうだな。おい、何人か手伝ってくれ!」
そう言ってマルスが声をかけると近くで作業をしていた人が3人ほど集まって来る。
「ギンジ、もう降りていいんですの?」
馬車を止めたので中からセレンが声をかけながら降りて来る。返事するまえに降りるな。
「ああ、大丈夫だ。シルフ、セレン、降りてくれ」
今から荷台の荷物を降ろしてもらうので2人には荷台から降りてもらう。
「じゃあ荷物なんですが・・・」
そう言って手伝いに来てくれた人を荷台に呼んで渡す荷物を説明する。手伝いに来てくれた人も含めてこの村の人はみんな獣人か半獣人のようだ。説明するとどんどん荷物を運んでいきあっという間に荷台が広くなった。
「残りは俺たちの荷物なんで、渡す分は以上です」
そう言うと手伝いの人達は荷物を持っていなくなってしまった。
「わざわざありがとう。一頭立ての馬車なら結構時間かかったんじゃないか?大変だっただろ」
マルスが馬車を見ながら礼を言う。
「馬車で移動するのは初めてなんで速さの比較はできないけど、気楽な旅なんで問題ないよ」
「初めて馬車に乗るようなやつに領主が依頼するのか。あ、そういえば領主の娘がいるんだったな」
「まぁその辺は縁があってね、紹介しておくよ。こっちの俺と同じで只人の女の子がシルフ、こっちの半獣人の女の子が領主の娘のセレンだ」
「「よろしくお願いします(わ)」」
「おうよろしく。ここには女はほとんどいないし女が来ることも全然ないからな。こんな可愛い子が2人もいたら目線を集めるかもしれないが気にしないでくれ」
「危険はないのか?」
「村に外の人間がいれば長の客人くらいだからな。わざわざそんな相手に手を出すくらいならこんな森に引きこもってないよ」
「街に言ったりはしないのか?」
「その辺の話は俺じゃなくて長としてくれ。今から案内する」
そう言ってマルスが歩き出したので3人でついて行く。村の少し奥の他の家より屋根の高い大きな家があってそこの入口の前で止まる。この村の家はどの家も扉はなく入口はのれんのように布が下がっているだけだ。
「ここが長の家だ。長!客人を連れてきたぜ!!」
『入れ』
マルスがのれんをめくって中に声をかけると中から返事があった。長って偉い人なんじゃないのか?
「じゃあ俺は外で待ってるから中で長と話してくれ」
「長というけど、あんな話し方でいいのか?」
「さっきも言ったけど堅苦しいのは苦手でな」
「そういうもんか」
よく分からんがマルスのこの態度も許されているようなので気にしないようにする。それより待たせる方が問題だな。入口の横で門番の用に立つマルスを横目に入口ののれんをくぐって中に入る。
「・・・失礼します」
中に入るとテーブルがあってテーブルの向こうに長と思われる人物が座っている。多分座っている。というのも座っているはずなのに見上げるくらいでかい。横幅もあるので背が高いというよりでかいという感じだ。
そしてその長はこちらを一瞥すると手を上げて挨拶するように鼻を動かした。
「俺がここの長をやっているファンモスだ」
長は象の獣人だった。
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