2-27 マッサージ
遅くなって申し訳ありません。
「それでは私は部屋の外におりますので何かあったら扉を開けて呼んでください。声や音は漏れませんのでご安心ください」
そう言って部屋に案内してくれたチルさんがセレンの寝室の扉を開ける。防音しっかりしてるのね。
「失礼します」
そう言って寝室に入る。俺が部屋に入るとチルさんが扉を閉めた。派手なつくりではないがしっかりとした高級そうなベッドと化粧台かな?大きめの鏡がついた机があり小さな瓶や小物が並んでいる。部屋の奥にも扉があり別室に続いているようだ。
「ギンジさん、お待ちしておりましたわ」
薄暗い部屋でベッドに腰かけたセレンが声をかける。バスタオルを巻いているがその中は下着姿のはずだ。風呂上りで火照っているのか露出した腕や足がいつもより少し赤い。
「それではよろしくお願いいたしますわ」
「うん、それじゃあベッドにうつ伏せになってもらっていい?」
「わかりましたわ」
そう言ってセレンは指示通りにベッドに横になる。以前、俺が泊まってる部屋に突撃した時はしっかり見ていなかったがこうしてバスタオル姿を見ると体のラインがはっきりして少しドキっとしてしまう。お尻の上あたりが少し膨らんでいてバスタオルの裾から尻尾が出ている。可愛いな。
「それじゃあ始めていくけど、痛かったり気持ち悪かったりしたらすぐ言ってね」
「はい、大丈夫です。ギンジさんのやり方で構いませんのでよろしくお願いいたしますわ」
「じゃあ足の方からいくね」
そう言って俺はセレンのマッサージを開始した。
節末祭が終わった後もこれまで通り採集と訓練を行っていた。魔力共有から発動の練習までどれくらい期間が必要か分からないのでシルフが水の魔法を使えるようになった時と同じくらいでいいかと思い、早速やらせてみる。
言葉で説明したり直前に魔力共有をしたりして試してみるがセレンは上手くいかなかった。まぁいきなりだし難しいか。
そう思っていたらシルフは火の魔法が使えた!小さい火ですぐに消えてしまったがちゃんと魔法で火を出すことができた。
「できました!ギンジさん!ほら!」
そう言ってポ!ポ!と何度も火を出す。おお!本当だ。
「そうそう!着火は上手くいってるからあとは魔力を燃やす感じなんだけど」
そう言って魔力共有をして火の魔法を使う。
「こんな感じで火を燃やし続ける感じなんだけど、できそう?」
「やってみます!」
そう言ってシルフが試すとボボボッ!と少し火が出て消えた。さっきまでよりは火がちゃんと出ている。
「魔法の種類は違うけど水を出し続けるのと同じような感じで魔力を出していかないと途切れたら火が消えちゃうからそこは練習だな」
「はい!頑張ります」
「くれぐれも部屋の中とかでやらないように」
「あ、そうですね。わかりました」
出したらそこに水が残る水の魔法と違い火の魔法は燃焼しつづけないと消えてしまう。何かを燃やさないなら魔力を継続して出し続けないと消えてしまう。でも感覚さえ掴めたらあとは慣れだろう。
「シルフさんすごいですわ。私はまだ難しそうですわね」
魔力共有をしているがセレンはまだ感覚が掴めないのか上手くいかない。と言ってもセレンは身体強化なども含めて魔力を扱えるようになってまだまだ日が浅いから仕方ないのかもしれない。気長にやっていくしかないと思う。でもそうなると俺はずっとリアンクルから離れられないな。魔法教師の拘束期間ってどれくらいが相場なんだろうか。
「ギンジさん、セレンさんにもあれが必要なんじゃないですか?」
そんな風に考えるとシルフが俺の側に来てセレンに聞こえないように小さな声で俺に言う。シルフ、気を遣ってるのはわかるけど多分それ聞こえてるよ。セレンの耳がぴくぴくしてるし。聞こえてない振りしてるけど。やっぱ獣人って耳がいいのかな。身体能力が高いから五感全てが只人よりも優れていそうだ。
「あれって?」
「私にやったじゃないですか。魔力の流れを良くするって。私もあの後すぐに使えるようになりましたし」
「ああ、あれね」
マッサージか。確かにシルフは体の魔力の流れが良くなかったので一か八かで試したがセレンにも有効だろうか。
「何か方法があるならぜひお願いしたいですわ!!」
セレン、やっぱり聞こえてたのね。
「実際に有効かはわからないんだけど」
「それでもシルフさんは上手くいったんですよね!?」
「まぁそうだけど」
「ここまでギンジさんが行ってきた方法も手探りとおっしゃっていたではありませんか!試してないことがあるならぜひやって欲しいですわ!」
「でもまだ1日目だしね。そんなに焦らなくても」
「それは試してみてから考えれば良いことですわ!それともその方法は何か問題があるんですの?」
「問題は・・・あると言えばあるんだけど」
「ではその問題を聞いてから考えますわ!さぁ!」
「うーん。シルフ、説明してもらってもいい?」
「え!?私がですか?」
「された側のシルフが伝えた方がいいかなって」
「わかりました」
「チルさんも聞いてもらっていいですか?判断はお二人に任せるので」
「お嬢様の是非に私が口を出すことはありませんが」
「まぁその辺も内容を聞いてから判断してもらって」
「かしこまりました」
そう言って3人から少し離れた俺は、魔法の練習をしてシルフの説明が終わるのを待つ。
うん、水の魔法の形状はかなり操れるようになったな。温度を変えるのもできるのでこのままいけば氷を作ることもできるだろうか?熱湯とかを瞬時にだせれば相手にかけるだけで有効な攻撃手段になるかもしれない。ただやっぱり魔法というのは個人の鍛錬で色々とできることが広がっていく気がする。この世界の人はこんな風に使える魔法の応用とかは考えないのかな?魔法使いが多くて魔法が盛んな街ならそういった魔法使いもいるだろうか。
「ギンジさん、説明終わりました」
「ありがとうシルフ、それでどうかな?」
「少し早い気もしますが覚悟はしておりましたので問題ありませんわ」
何の覚悟だ?
「お嬢様もこう言っておりますし奥様もどちらかというと歓迎される方なので問題ないかと思います。旦那様にはとりあえず黙っておきましょう」
いや、やっぱり何か話が変だよね?なんかマッサージより深い話になってるような気が。
「なんか話が変に伝わってる気がするんだけどセレンは何て説明されたの?」
「体の魔力の流れを良くするためにギンジさんが私の体をまさぐるんですわよね?」
まさぐるって!言い方!大きく間違ってはいないけど何か違う。
「まさぐるって・・・肩を揉んだりするのと同じで全身をほぐす感じだよ」
「そのあたりは表現の仕方というか言い方次第ですので。私はギンジさんとでしたら覚悟はできておりますわ」
「まぁそれでいいか。じゃあ試してみましょうか」
「ぜひお願いいたしますわ。それでは私は今からお風呂を頂いてきますので上がりましたらお呼びいたしますから部屋で待っていていただけますか?」
「わかった。すこしシルフと訓練をしたら部屋で待ってるよ」
「シルフさんは私とお風呂に行きますから訓練はできませんわ。ギンジさん、申し訳ありません」
そう言ってシルフの手を引いてセレンは屋敷の中に戻っていった。
「それでは後程お呼びいたしますので部屋でお待ちください」
チルさんも俺にそう言うとセレンの後について行った。
というのが今日の昼すぎの出来事で現在俺はセレンのマッサージを行っている。
「んっ!足はやはり少しくすぐったいですわね」
「それくらいは我慢してね。痛かったら止めるからその時はちゃんと言ってね」
「ん・・ふぅ。わかりましたわっ!」
手のひらに魔力を込めながらセレンの魔力の流れを良くするようにマッサージしていく。セレンは魔力だけでなく気の流れもかなり悪い気がする。なのでそちらもついでに流れをよくするように体をほぐす。
「ああっ!」
「痛かった!?」
「いえ、痛いというかギンジさんの魔力を感じて気持ちいいくらいですわ」
「それならいいんだけど。もし眠たくなったらそのまま眠ってもいいからね?」
「寝るなんてとんでもない!寝てしまったら終わった後に何もできませんわ!」
「何もしないから。体を揉みほぐすだけだよ」
「そうは言いますけど、んっ、ギンジさんだって男でしょう?私の足やお尻を触って何も感じませんの?キャッ!ギンジさん!?」
ペシン!とお尻を叩く。
「俺を慕ってくれてるのはわかるし嬉しいよ。でも今やってるこの行為はそういうやましい気持ちじゃなくてちゃんとセレンの為にやってるんだ。だからそういったこととは切り離して考えて欲しい」
「それは・・・申し訳ありませんでした」
もちろん女の人をマッサージするのにやましい気持ちが無いと言ったら嘘になるけど、マッサージを言い訳にして女を抱きたいと思わないし、適当にマッサージをしたくない。
「わかればよろしい。そういえば尻尾の生え際とかって特別に敏感だったりする?獣人の体のことを良く知らないので」
「いえ、尻尾の付け根はどちらかというと他の部分より強いくらいですわ。長い尻尾を支えている部分ですし」
「それもそうか。じゃあ続けるね」
「はい。んっ!」
そのまま尻尾の付近、腰、背中と上がっていき肩から手の先までマッサージする。時々声を上げたり尻尾や耳がぴくっと反応するが特別不快感はなさそうだ。一通りマッサージをした後、もう一度全身を軽くほぐしてマッサージを終える。
「はい、お疲れさまでした」
「もう終わりですの?」
「もうって結構時間たったと思うけどね」
「そうですか。ギンジさんの魔力と力加減が心地よくてずっとしてもらいたいくらいでしたわ」
「それは良かった。じゃあ早速試してみようか」
「あら!!やはりギンジさんも男でしたのね」
「そうじゃなくて。はい」
そう言って俺は枕もとのテーブルに置いてあったコップを手渡す。
「さ、魔法を試してみよう」
「そんなにすぐにできるようになるんですの?」
「シルフの時はすぐにできたよ。もちろんできなくてもいいから試してみよう」
「それでしたら私もできるようになっていないとシルフさんに負けてしまいますわね」
「勝ち負けとかじゃないから。じゃあいくよ」
そう言って俺は魔力共有をしてチョロっとコップに水を出す。
「じゃあ次はセレンがやってみて」
「はい!」
そう言ってセレンが魔力を込める。
ぴちょん
とコップに雫が落ちる。
「今のは・・・汗でしょうか?」
「いや、魔法だったよ」
ほんの小さな雫程度であったがちゃんとセレンが魔法で出したものだ。
「本当ですの?」
「本当だよ」
「私やりましたの?」
「うん、よくできました!ああっ!」
セレンが隣にいる俺に抱き着いてくる。シルフよりも体つきがいいのでバスタオルだけで抱き着いたらその、まずいですね。
「やりましたわ!ギンジさん!私やりました!!」
「うん、やったね。おめでとう!」
「ありがとうございます!ギンジさんのおかげですわ!!」
「うん。わかったからちょっと落ち着こうか。その」
「これはお礼ですわ」
わざとだったんですね。ありがとうございます。
「ありがとう。でもこういうのは良くないから。とりあえず落ち着こう」
そう言ってセレンの体を離す。
「とりあえずチルさんを呼んでくるから。あと汗もかいてると思うから水分補給をして気になる様ならもう一度お風呂に入って汗を流すといいよ」
そう言って先ほどのコップに水を注いでセレンに渡す。
「いただきますわ」
ぐっっと一息にコップを空にする」
「ありがとうございます。それと・・・汗ですが匂いますか?」
「ごめん!そういう意味で言ったんじゃないよ!ただこの行為をされると体を動かしてなくても汗をかくから、それでつい。気を悪くしたらごめん」
「いえ、私の汗でギンジさんが不快になられてなければ問題ありませんわ。私こそ気を遣わせてしまい申し訳ありません」
「いや、さっきのは俺の言い方が悪かったから。それじゃあチルさんを呼んでくるね」
そう言って俺はベッドから立ち上がり部屋の入り口に向かう。
「ギンジさん!!」
「なに?」
セレンに呼ばれて振り返るとベッドから立ち上がったセレンがこちらに向かってバスタオルをバッ!と広げた。バスタオルの中はショーツを履いているだけで上半身には何もつけてなくて・・・って
「何してるの!?」
俺がそう言うとセレンはすっとバスタオルを巻きなおして体を隠してしまった。
「お礼ですわ」
そう言ったセレンの顔は先ほどよりも真っ赤になっていた。
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