2-28 同行の許可
「ギンジ、話があるから後で応接室に来い」
いつものように領主家族と俺とシルフの5人で夕食を取っていると、カーティラさんに呼び出しをされる。
今日ついに魔法を使えるようになったセレンはあの後両親に報告をして夕食の時の話題もそのことがほとんどだった。
嬉しそうに話すセレンに両親のカーティラさんもサリーさんも良かった良かったと頷いているし、シルフも「上手くいって良かったですね」と言ってくれる。
そんな和気あいあいとした食事中に急に領主から呼び出しをされて俺はドキっとする。もしかしてマッサージのことかな?それともマッサージ後のことか?いや、さすがにあれはセレンも話してないだろう・・・どっちだ。
「わかりました」
「ああそうだ、シルフも一緒に来てくれるか?」
「えっ!?私ですか?はい、わかりました」
「それだと私だけ仲間外れではありませんか!お父様、私には言えない話ですの?」
「言えない話がでるかは分からんが言えることは後でちゃんと話す」
「それなら一緒にいてもいいのでは?」
「セレン、お前はシルフと二人で話をすることはあるか?」
「??もちろんたくさんございますわ。お風呂にはいつも一緒に入っておりますし寝る前にもお話しすることがございますわ」
風呂は知ってたが寝る前も一緒に過ごしていたのは知らなかったな。まぁ仲が良いのはいいことだ。
「その会話は俺やギンジが聞いても問題ないか?」
「もちろん、お父様やギンジさんに聞かれても構いませんわ!」
「俺やギンジがいたらシルフが話してくれなかったことは無さそうか?セレンと二人だけの会話だからこそ話せたことはないか?」
「それは・・・あるかもしれません」
「そういうことだ」
「はい・・・」
納得したのかセレンは引きさがったが耳が悲しそうに垂れている。
俺は会話の場にシルフも呼ばれたのでとりあえずマッサージの件で厳しく問いただされることは無さそうだと安堵した。
「失礼します」
夕食の後シルフと共に応接室を訪れた。ノックをすると「入れ」と返事があったので声をかけて部屋に入る。いつも通り奥のソファに座ったカーティラさんと向かい合うように手前のソファにシルフと並んで座る。使用人の人が3人分のお茶を用意してから退室したので部屋には3人だけになる。
「それで話というのはなんでしょうか?」
「お前たち、金に困ってるのか?」
「えっ?お金ですか?」
「そうだ。俺の知る限り毎日休まず森に出ているから少し気になってな。どうなんだ?」
「採集に関しては習慣になっているというか。ヘルムゲンでは雨が降った時は休んでいましたがリアンクルに来てからまだ雨が降ってないので」
「なるほどな。それにしたって雨の日以外ずっとってのも中々できるもんじゃないぞ」
「その、毎日採集するのは元は私のせいで・・・」
そう言ってシルフが説明する。教会を出た後の為に少しでも多くお金を貯めたかったので可能な限り採集を行っていたこと、その時の癖もあって今も毎日採集に言っていることを伝える。
「そういえばシルフもギンジが良なければセレンと同じで魔法も使えなかったんだったな」
「はい。教会を出た後はどうなるかわからなかったので少しでも多くお金を用意しておこうと」
「まぁその辺は結構なんとかなるもんなんだが、知らないと不安だよな」
「どういうことですか?私は教会を出たらそのまま奴隷になってしまうんじゃないかと思っていたんですが」
「他の街のことなんではっきりは言えないが、教会でそんな真面目に毎日採集してるやつがいるなら俺なら仕事を用意してやるって話だ」
「じゃあ俺のやってることって無駄なんですかね?」
「それはギンジやシルフ、それにセレンがこれから考えることだ。もちろんここの教会のガキ共もだな。ギンジに魔法や剣を教わって良かった、って思うかどうかは今すぐ出る答えじゃねぇよ」
「そうですか」
「ただ可能性は広がるし、とりあえず目の前のシルフとセレンはお前に感謝してるだろ?ならそこはそんなに迷わなくていいんじゃねぇかな。逆にギンジが手を差し伸べなくてもなんとかなるかもしれないから少し気楽になるくらいで丁度いいと思うぞ」
「そんなもんですか」
「ああ、そんなもんだ」
言われた通り少し気が軽くなった部分はあった。
「まぁその話はいいだろう。つまり金に困ってて必死で働いてるわけじゃないんだな?」
「それはそうですね。手持ちの資金は多い方が安心はありますが、特別困っているわけではありません」
「わかった。ちょっと待ってろ」
カーティラさんはそう言って席を立つと扉を開けて使用人の人に何か伝えている。カーティラさんが席に戻ると間もなくバァン!と扉が開いてセレンが入ってきた。
「内緒話は終わったんですの!?」
「いいから座れ。こっちじゃない、ギンジの隣だ」
そう言われセレンが俺の隣に座る。両手に花だ。いや、それよりもセレンを呼んで何の話をするんだろう。
「セレン、お前はギンジについて行くのか?」
「ギンジさんの許しがあればそうするつもりでしたわ」
えっ!?セレンついて来るの?
「俺の許しは必要ないのか?」
「お母様が許可してくれたのでお父様に許しを得るつもりはありませんでしたわ。どうせ反対されるんでしょう?」
「それは聞いてみないとわからんだろう?」
「お父様、ギンジさんがこの街を去る時、共に行ってもよろしいですか?」
「ダメだ」
「ほら!やっぱりそう言われるじゃないですか」
「今のままじゃダメだ。まぁその話は後だ。ギンジ、セレンはこう言ってるが一緒に連れて行く気はあるか?」
「いきなりですね。ですがシルフと違ってご家族がいらっしゃるのでご両親の許可があれば考えます」
さすがに街の領主に黙って娘を連れて行くのは俺も怖い。お尋ね者になりたくないからな。
「わかった。それじゃあ俺からいくつか条件を出す。まずはこれだ」
そう言ってカーティラさんが1枚の紙を机の上に出す。
「これは・・・なんですか?」
「それは紹介状だな。お前たち3人は御者の訓練をしろ」
その紙は馬の貸し出しをしている牧場への紹介状だった。
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