閑話 ノイル
遅くなりました。本日2話投稿しています。この話と次の2-24です。
この世界は魔法が全てだ。
幼いながらにその事実に気づいた俺は同時に自分がそれを手にできないことを知った。
獣人は魔法の才能が無い。
半獣人でさえ苦手な者が多い。
それでも生きていくのに魔法は必要だ。
火や水が出せなくても魔力を流すくらいはできないと生きていくのは困難だ。
それくらいは俺でもできた。
まぁ、普通だ。
俺は普通の獣人だった。
魔物に襲われた魔法使いを獣人の戦士が助けたと聞いた。
どんな魔物かは知らないが魔法が使えればすべてが上手くいくわけでもなさそうだ。
俺は魔法を手に入れられないから魔物に負けない力が必要だ。
獅子の獣人として恥ずかしくない強さが欲しい。
誰もが強かったと口にする領主の虎に負けないくらい強くなりたかった。
体つきにも恵まれ、俺は強くなった。
子供の部はもちろん、大人の部に参加するようになってからも武闘祭では敵なしだ。
魔法が使えない俺には力が全てだ。
「そこまで!」
審判がそう告げると対戦相手が舞台から降りる。
『一番強いやつと戦ってみたい』という感じの対戦相手が増えた。
初めから勝つ気なんてない。
そういうやつとは俺も本気で戦わない。
さっさと場外に押し出して終わりだ。
強さを示さなくても良いなら客席で見てればいい。
観客がザワザワと騒ぎ出す。
そりゃそうだ。
俺は楽しみにしていた相手が舞台に上がってきたことに安心する。
あれだけ挑発してきたんだ。
覚悟はできてるんだろうな?
お前が何者かは知らないが
この武闘祭の舞台の上では力が全てだ。
気が付いたとき俺は舞台に座り込んでいた。
審判が「そこまで!」と声をかける。
対戦相手の男が「はい」と言って俺の首に当てていた剣を俺に渡す。
俺の剣だ。そうだ。
あれだけ煽ったんだからどれだけ戦えるんだと思って何度か剣を振ったが、思ったより動きは悪くなくて剣を躱すのは上手かった。
只人と戦ったことはほとんどないがこれだけの身のこなしなら調子に乗ってしまうのかもな。
それでも獣人の敵じゃない。
そんな刃も重りもついてない棒で殴られたところで大したことはないのだ。
そう思っていたら気が付いたら俺は剣を落としていた。
そのまま剣を拾う間もなく押し倒されてあっけなく試合終了となった。
何が起こったのかわからない。
俺はあっさりと負けてしまったようだ。
ゆっくりと立ち上がる中、観客の歓声とどよめきがやけに遠くに聞こえた。
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