ティナおばあちゃんとアレクおじいちゃん
おばあさんの淹れてくれたお茶はハーブの香りとスパイスが少し入ったお茶だった。
「おいしい・・・」
温かいお茶は2人の間の緊張を少しだけやわらかくした。
「それで、アンタは旅人だろ?これからどこに行くんだい?」
「はぁ、それがここに来る途中に襲われたみたいでな、荷物も記憶もなくなった。いくつか聞きたいんだがここはどこだ?」
道中決めた設定を頭の中で組み立てる。
「物盗りにでもあったんだろうねぇ、この辺りも最近物騒な事ばかりさ。魔物は出るわ作物は育たないわ、それに盗賊の寝ぐらもあるって話さ。あぁそうだね、ここはフェルミアナ国の西側にあるフォルクス村さ。
そこの精霊の森・・・今は魔の森って言われてるんだけどね、森の中には昔大きな神殿があったんだ。今はすっかり廃れちまったがね。」
「フォルクス村ねぇ、地図があれば見せて欲しいんだが。」
「地図なんてこんな所になんてあるわけないじゃないか、王都の図書館か各ギルドぐらいだろ。でも村長なら持ってるかもしれないね。」
うーん、どうしたものか。情報少ないなぁ路銀もないし・・・とりあえず村長の所に行ってみるか。
「オイ、怪しい嬢ちゃんウチに何か用か。」
体格の良いじいさんが鍬を片手に入り口に立っている。
「 ヒィィッ!」
「あんた、女だったのかい⁈」
おばあさんが呆れた声で聞いてくる。
「・・・ごめんなさい・・・女ひとりだと何があるかわかんなし・・・」
「まぁ、訳ありなんだろうさ。じーさんが不機嫌だよ、さっと訳を話しな。それが嫌ならもう出ていっておくれ。」
この世界で不審に思われない程度にかいつまんで話す。気づいたら森にいた事。森から命からがら歩いてきた事。元はこの国の者ではない事。自分でもまだ理解できてない所が沢山あってどうしたらいいのかもわからない事。
決して騙すつもりはなかった事。
おばあさんは相槌をうち、おじいさんは目を閉じてじっと話を聞いてくれた。話すうちにずっと我慢していた涙が止まらなくなった。
まだまだ、まだだよと言いきかせていたのに。
話終わる頃には窓際の花瓶の影がテーブルに落ち窓の外は茜色に染まっていた。
「もう今日は泊まってけ。孫の部屋が残ってる。」
おじいさんはそう言った後、2階へ上がっていった。
おばあさんは「そうだよ。」と頭をなでてキッチンへと向かった。
夕食は静かだった。決して豪華な食卓ではなかったけれど煮込んだ野菜と小さな肉が私の体に染み込んでいく。染み込んだはずのスープがどうした事が目からポタポタと溢れ落ちていく。もったいない。ひとくち飲んではポロポロ。飲み終わる頃にようやくとまった。
「あたしはティナ、この人はアレクってんだ。おまえさんの事はなんと呼べばいい?言いたくなければアンタとかオイって呼ぶけどね。」
記憶を無くした旅人。男。持ち物に名前があったから名前はコマチ。そういう設定だった。
「・・・コ・・・メグ・・・です。メグって呼んで欲しい」
「そうかい、メグだね。今夜はゆっくりおやすみ。これ部屋で飲みな」
さっき淹れてくれたハーブとスパイスのお茶を持たせてくれた。
「おばあちゃん、美味しかった。ありがとう。」
アレクおじいちゃんが温かい湯の入った桶とタオルを持って顎をしゃくる。2階の奥が孫の部屋らしい。部屋の机に桶とタオルを置く。
「明日は畑を手伝え。」
「わかった。おじいちゃん、おやすみなさい。」
頷くと1階へと戻っていった。
今日も大変だった。感情ジェットコースターな一日だったな。あんなに怒りを口に出して人にぶつけたのなんて初めてだった。初めて会った人の前で大泣きしちゃたのも今思えば恥ずかしい。
いつもは相手を見てちゃんとしなきゃ、嫌われないようにしなきゃって思うのにそんな暇もなかったなぁ〜いっぱい泣いたから眠たくなっちゃった。
持たせてもらったお茶に口をつける。おばあちゃんのお茶はさっきと違ってほんのり甘い。
「おいしぃ〜あぁおいしいなぁ」
初めての場所、初めて会う人、なのに何だかほんわかして体がふわふわとしていい気持ち。。。私は深い眠りについた。
「珍しい事もあるもんだ。アレクが人をうちに泊めるなんて。気に入ったのかい?」
「わからん。気まぐれだ。」
「ふふっ、そうかい。」
お読みいただきありがとうございました。
つたない文章ですが、軽く楽しく読んでいただけたら幸いです。
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