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異世界にコスプレのまま飛ばされました  作者: スイッチマン


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迷える娘


突然の現実味のない展開にアドレナリンが出まくっていたのか深く考える事をやめて、ただひたすら歩く。このまま足を止めてはいけない、とまた本能が言っている。

まだまだ。まだだよ。

目の前の事から意識を逸らすなんていつもやってたことじゃない。

だから大丈夫。


日が暮れてきた。明るい星がもう見える。

人工的な灯りが見えないから今日は森で過ごさなきゃ、怖いな。木や葉っぱの多い所は虫がいそうだから嫌だな、でもどこにもないよなぁぁ。

ダメだ涙が出てくる。

泣く前に探せ!しゃがみこんで悲観に暮れる前に見つけろ!と自分を鼓舞する。


深呼吸して目を凝らす。

鳥が群れをなして飛んでいく方角に目を向ける。

あった岩場だ。

ちょうど風除けにもなるような配置になっててホッとする。もちろん硬いけれどインベントリから着物とバスタオルを出してくるまった。


疲れた。自覚したくないけれど、この埃っぽい匂いや汗でべとついた体、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔、疲労した体。そして胃のあたりにせり上がってくるもの。

今は考えない。ただ目を閉じて眠ろう。

動くのはまた明日だ、だからおやすみ私。



======================================


「本当にキヨカちゃんは美人さんねぇ〜学級委員長さんなんだって?頭もよくて慕われてるのねぇ〜」


「うふふっ、そんな事ないですよ〜でも昔の私に似てるみたいで、パパもこの子には甘いんです」


「ありがとうございます。私も両親の元に生まれてとっても幸せなんです。」


「まぁ本当いいご家族ね。羨ましいわ〜」



そのいいご家族に私はカウントされていない。

それはいつものこと。

キヨカちゃんは美人、キヨカちゃんは賢い、キヨカちゃんは優しい、キヨカちゃんは皆から愛されている、キヨカちゃんは、、、、、

お姉ちゃんを賛美する言葉はいつもたくさんあった。私だってお姉ちゃんは大好きだった。自慢の姉だったから。

キヨカちゃんの妹って言われて名前を覚えてもらえなくったって、気にならなかった。パパやママが私の名前を呼ばなくなったって、おばあちゃんが私の名前を忘れたって、気にしなかった。


そうやって「私」という存在が薄くなっていった。


お姉ちゃんが成人式を終えて就活が始まった頃に、少しずつ異変がおきた。

いつも自信に溢れキラキラしていたお姉ちゃんに陰りが見え始めた。SNSを見ては人の悪口を平気で発信しはじめた。毎日イライラして物にあたり、私にあたり、両親にあたった。

両親はただ可哀想可哀想って言うだけ。

結局、就活は上手くいかず、思い描いていたお姉ちゃんの青写真は見事に崩れ去った。今までお姉ちゃんがどんな付き合いをしてたかわからないけれど友人と出掛ける事もなくなり、スマホを見てはそれを投げ、火がついたように泣き叫んだ。


パパやママからは、あなた妹なんだからお姉ちゃんにもっと寄り添いなさいと怒られた。だけど誰からも寄り添ってもらった事がなかったからどうしたらいいのかわからなかった。


ただ私の心の支えは、初めてのバイト代でお迎えしたアキクサインコのモモちゃんだった。ピンクに黄色やオレンジの混じった子で、テケテケと歩いてくるのがとても可愛いい。誰にも呼ばれない名前を呼んでくれた優しい子だった。

「オカエリーメグ、タノシイメグ、アリガトウメグ」どんなに救われただろう。私はモモちゃんといる時が一番幸せだった。


お姉ちゃんの怒りは発作のようで、皆息を潜めて波風をたてないように暮らした。パパの出張が増えて、ママがパートをはじめた。

そんなある日、部屋へ帰ると窓が開いている。

鳥籠の扉も。

「モモちゃん!モモちゃん!メグ帰ったよ!帰ってきたよ!お帰りって言ってくれなきゃだめじゃない!モモちゃん・・・どこっ⁈」


急いで窓の外を見る。庭の木を見る、隣の屋根をみる、電線を見る、空を見る。近くも遠くも。

慌てて外に出る。どこにも居ない。公園に行き雑木林に行き高台に登る。

「モモちゃん!モモちゃん!」

もう周りは真っ暗になっていた。靴は履いていなかった。汚れた靴下のまま家に上がる。お姉ちゃんの部屋のドアをノックもせずにあけた。

そこにはニヤニヤした顔の女が機嫌良さそうに足を組んで座っていた。

「モモちゃんどこやった?」

「アレさ、私の名前ちっとも覚えないから追い出してやったわ。なかなか鳥籠から出ないから捕まえて窓から捨てたよ。手を突かれて痛かっー」


目の前が真っ赤だった。それからの記憶が曖昧で気がついたらお姉ちゃんは家から居なくなっていた。

後から聞いたら、私はお姉ちゃんの頭を掴んで2階の窓から落とそうとしたらしい。

パートから帰った母から取り押えられたらしいけど、それがこたえたのかそれ以来お姉ちゃんは暴言も暴力も無くなったって。どこにいったかなんて知らないや。


ただ、もう私には誰もいなくなった。


ココにはもう居られない。

出て行こう。

モモちゃんがいそうな所を探してみよう。

でもバスや電車じゃ見つけるの難しいよね。

持っていなかった車の免許をとって回ってみようか。

そうだそうだ!モモちゃんを探す旅をするのもいいのかもしれない。

少しだけ光が灯った。



お読みいただきありがとうございました。


つたない文章ですが、軽く楽しく読んでいただけたら幸いです。


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