初めまして、我が息子 SIDEクラウン
「初めまして、我が息子。」
蜂蜜のような濃い金髪にロイヤルブルーの瞳。
とうとうコイツに見つかった。
第3王子ユリウス・フォン・フェルミアナ。いや今は臣籍降下しマルキウス公爵か。自然と拳に力が入る。
「どのようなご用件でしょうかマルキウス公爵。」
「あぁ、まず君にお詫びを。長年すまなかった、不甲斐ない私のせいで苦労した事だろう。心落ち着かない日々を今まで過ごさせてしまった。」
元王族が深々と頭を下げる。
「今更です。」
「わかっている。今、君に謝罪をした所で納得できないだろう。ただ、もう君が恐れているものは全て排除した。これからは何者も気にしなくてよい。これを伝えたかった・・・それに会いたかった。」
「・・・もう俺は狙われないのですか?」
「ああ、心配ない。君を狙っていたのは私の母方の祖父、前コッタ公爵だよ。」
「王家ではなかったのか。」
「あの人はね、どうしても私を王にしたかった。兄上達は私でよいと言ってくれたんだかな、私が嫌だったのだよ。今では兄上がしぶしぶ王をやっている。」
予想外な話しで戸惑っている。
「前公爵は私に同じ派閥や寄子の娘達をあてがってきたよ。愛する者や婚約者がいる者まで。
兄上達に毒を盛り、刺客をむけ、愛する者達を人質にした。卑怯なやり方だ。だから私は女癖が悪く常識のない、どうしようもない王子になったんだ。一向に変わらない僕に、いよいよ父上も貴族院も世間も王太子には第一王子をと認めた。
その頃かな君の母に出会ったのは。夢見がちな、どこにでもいそうな娘。キラキラした目で、とてもお喋りで、意外と逞しい人だったよ。辺境で育ったせいか運動神経がとても良くてね、私に付いていた護衛や公爵家の暗部の者もたまに撒かれていたみたいだよ。」
懐かしそうに笑う。
「実は顔も好みでね、声も心地よかった。髪の生え際が可愛らしくてね、繋いだ手もひんやりとして気持ちよかったよ。理屈ではなかったんだよ。愛していたんだ。
君との3人での暮らしを夢見ていた。でも公爵家はきっとそれを許さない。何の力もない辺境の娘などいつでも始末できるんだ。僕が近づくほど死も近づいていく。当時の私には何もできなかったから、必死で隠さなければならなかったよ。結局は全てバレていたわけだがね。」
そう話す元第3王子は静かに目を伏せた。
「公爵の娘である私の母は大人しい人で、祖父の言いなりだった。もともとは私の母が婚約者だったのは知ってるかい?当時の王太子だった父は公爵家の影響力を危惧していたし、母の王太子妃としての資質にも難色を示していた。
今の正妃であるローズマリー様は子爵家の令嬢だったが、実に聡明で心根の優しい方だ。父は母との婚約を解消しローズマリー様と新たに婚約を結び婚姻した。
王太子から国王になり暫くたっても王妃に子ができない。公爵は母が側妃になるように手を回したが、それでも妃達になかなか子が宿らなかった。貴族院からの申し出もあり第二側妃として辺境伯令嬢であったデボラ様が迎えられた。そうやって次の世代のレースがはじまったのさ。」
彼は力無く笑う。
「実はね、僕たち兄弟は仲が良かった。母に気付かれないように隠れて遊んでいたんだよ。
だけど王家の内情を理解しはじめる頃には、兄上達に申し訳なくて会えなくなってしまった。
けれど2人が私に言うんだ『毒を仕込まれても私が解毒できる。』『刺客を送り込まれても俺が対処してやる』ってね。頭上がらないよね。
ようやく長兄のセラン兄上が王位を継ぎ、婚姻し後継が出来た。次兄のマールス兄上にも家庭ができ、今は辺境伯を継いでいる。
それでも、祖父も随分歳をとってしまっていたが野心はまだまだあったようだ。
だがとうとう当主を下されたんだ、伯父上にね。
伯父上も思う所があったんだろう。当主の交代は領地での病気療養のためと公表された。伯父上の子がアールツナイ家の、ローズマリー様のご実家が開発した薬によって命が救われたそうだ。祖父はそれをれを許さなかったらしい。」
つくづく愚かな人だよねと呟いた。
「それとね、クリスティーナ様のご実家は私の祖母に嵌められたんだよ。
長子を出産したばかりの公爵夫人不参加の夜会で祖父が10以上も下のデビューしたての子爵令嬢に一目惚れした。
第二夫人として迎え入れると祖母に事前の相談もなく決めてね、それはそれは烈火の如く怒り狂ったそうだよ。侯爵出のプライドの高い人だったから許せなかったんだろう。祖母の怒りの矛先はクリスティーナ様へ向かった。貴族籍でなくなれば第二夫人とはいえ公爵家などに嫁げないと。
だが祖父の愚行はそれにとどまらなかった。母にクリステラと名付け勝手に届出をだしたんだ。祖母はお腹を痛めて産んだ我が子が愛せなくなったんだ、恐らく一度も名を呼ばなかったんじゃないかな。それからは必要以上に厳しく躾けて優しい言葉もかけなかった。」
「最低野郎だな。公爵がばーちゃんに一目惚れしたって本当かよ。何か思惑があったんじゃないのか?」
「いやそれは本当さ。私が祖父にいっぱい盛った、ハハッ。うまい酒があると言って自白剤を仕込んでね、アールツナイ家特製のものでな、本人が気付かぬうちにペラペラと話してくれたよ。あの人の中で唯一の綺麗な思いだったんだろうがな。
だが、あの人の生き方そのものが多くの人の人生を狂わせた。」
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