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異世界にコスプレのまま飛ばされました  作者: スイッチマン


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20/30

奇跡


いよいよオープン当日の朝が来た。なかなか寝付けなかったよ。

おじいちゃんとおばあちゃんは、久しぶりにクラっちと一緒の部屋で休んでるみたい。良かったなぁ。


さあ、今日は忙しいよ!!

心配よりも楽しむ事を1番に!!初めての事だ、失敗あっても仕方ない精神でいく。次にそれを生かせばいい。


各お店のオープンと並行してお祭りの開催。

正直、めちゃくちゃ大変だったけど、漁師をはじめその家族、次の世代の若者、引退した漁民や船大工、面白がった商会や港街の人達が積極的に協力してくれたお陰で、大きなトラブルもなく今日を無事に迎える事が出来た。




夜明け前から皆が動き出す。日が昇ったら海の神様に日頃の感謝を伝える。


ハッピと共に製作した大漁旗を、それぞれの漁船に掲げる。

貝集めの時に、偶然見つけた法螺貝を加工して吹けるようにした。


ボーーーーーッ


お腹に響く音がなる。

出航の合図だ、何十もの漁船が沖合へと向かう。朝日に照らされた旗めく船は、赤と金色に輝いてとても美しい。


港からも見える場所で停まり、もう一度低く、太く、遠くまで響く音色が辺りにこだまする。


お頭がワインを撒く、そして、まだ試作段階の魚粉を撒く。漁師達は膝をつき感謝の祈りを捧げた。

とても美しい光景だった。

漁師の家族も、港湾関係者の偉い人達も、商人も、おじいちゃんおばあちゃんも、クラっちも私も、誰一人目を離さなかった。


祈りが終わり港へ戻ろうとした時に、水面が大きく盛り上がった。


「うわっ!!」

「船から手を離すな!」


動揺がはしる。

水面はどんどん盛り上がり、舟先が空の方へ向いた時、水面から大くて長い体がせりだし、激しい水しぶきとともに飛び上がった。

天まで昇っていくのかと思った。


・・・キラキラキラキラ・・・


大きく弧を描き、背面から豪快な着水音とともに海へと消える。

太陽を背にしたシルエットの中で、光る瞳と目が合った気がした。

時が止まって、世界から音が消えたかと思った。



さらに海面が揺れる。細かい泡が上がって来た瞬間、銀色の魚が舞い上がり、船体へ次々と飛び込んでくる。虹の中を浮遊しているようだった。


「うぉぉぉぉぉー!!!」


男達が吠えた。あっけに取られて動けないまま、涙を流している者もいる。

港には膝をつき祈っている者、動かずただ見つめたままの者、母親としっかり手を繋いだまま目を輝かせている子供達、様々であった。




漁をせずして大漁になった船が港に戻る。

お頭は嬉しいような困ったような顔をしたが、

子供達がキラキラした目で「ピカピカのおじちゃん!」と呼ぶ事には微妙な反応を見せた。

ピカピカのおじちゃんが1番ピカピカしていたと頬を上気させて話す子供達。

ちびっ子よそれはあれだ、物理的なもんだ。そっとしとてあげて。



「大漁なんだけどよー、これ、どうしよっかのーカッカッカッ!」


「あのーこんな事私も初めてなんでーよくわかんないですぅーカッカッカッ!取り敢えず塩焼きにでもして皆に振るまいましょうよ。」


「そうだな!オイ、加工場の火をつけろ!全部焼くぞ。」


ただ塩を振っただけの焼き魚は、骨まで食べられて、びっくりするほど美味しかった。

祭りの参加者はもちろん、貿易船や客船で街に着いた人達にも行き渡り、ちょっとした話題になったらしい。

不思議なことにこの銀色の魚は夏から秋にかけてのこの地域でしか獲る事が出来ず、足も早い為に季節限定、地域限定の美味い魚として観光客に大人気となった。




組み立てられた櫓(やぐら)に、空のワイン樽を設置して太鼓のかわりにする。

ドンドコドンドコ〜

筋肉モリモリの男達がかわるがわるそれを叩く。

いつの間にか独自のリズムとなって、それに合わせておたまを持った子供たちが鍋底を叩いて盛り上げる。

朝の神事での奇跡は、祭りへのボルテージを自然にあげた。




メインとなるシーフードレストランは、以前あった2階建ての大衆食堂の居抜きの物件に手を加えてオープンに間に合わせた。


メニューは定番塩焼きに加えて、煮込みやムニエル、アクアパッツァ、フライ等、その時期に取れる魚を使ってアレンジしてもらう。日替わりランチもゆくゆくはやってもらおう。

メニューも絵を付けて、料金も中銀貨1枚2枚3枚とわかりやすく。

制服は間に合わなかったから、バンダナを巻いてもらった。

色々と改善点が出てくると思うのでそれをチェックしつつ軌道にのせたい。


屋台もバーガー、揚げ物、菓子から始める。

こちらは、屋台をやりたいと手を挙げた者から数名審査で選び、レシピの提供と助成金を支給してやってもらった。

バーガー家に関しては、村の家で作った酵母を使ったフカフカのバンズを使用する。少し嫌な予感がしたので、酵母の作り方は教えず、村でまとめて作ったものをインベントリに収納し都度渡している。


魚粉の加工は難しかった。強力なミキサーが無いのが一番の問題だった。人の手でゴリゴリとやるには時間も労力もかかりすぎた。こちらも何か手立てを考えなきゃ。


他にも、あれこれ手を出しそうになったけど、いっぺんにやってしまうのはさすがに無理があった。

オープン直後は、ご祝儀需要があるけれど問題はその後だね。漁港関係はもちろんだけど、この港町の経済の活性化ができたらいいな。



お読みいただきありがとうございました。


気軽に楽しく読んでいただけたら幸いです。


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