7話 そういえば爪があった
こんにちこんばんは。
ステータスって考えるの面倒ですよね?辞めたいと思いながらやめれないポンコツ仁科紫です。
それでは、良き暇つぶしを。
ぼんやりとアルを眺めていると、何故かアルがてしてしと頭を叩き、ミーミー鳴き始める。何かを訴えているようだ。
(何だろう?えっと……)
よく分からなければ妹の助言を思い出せばいいと学びだしたネムは、数秒考えてようやく今回の目的を思い出した。
(そうだった。レベルを上げるって話だ。ステータスを上げて寝れるようにって。
さっきので上がったのかな……?)
どうだろうと少し不安になりつつもステータス画面を開く。そこには、確かに少しだけ変化のあるステータスが表示されていた。
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Name:寝夢眠兎
Base:黒
Class:夢魔族 Species:夢魔(幼体)Lv2
Belong:闇
HP 55
MP 115
STR 3
VIT 10
INT 20
MND 25
DEX 14
AGI 10(-5)(飛行時15(-6))
LUK 6
AP 5
Skill
〈暗視〉〈夢渡り Lv1〉〈ねむれ Lv2〉
〈しる Lv1〉〈とぶ Lv1〉〈にぶい Lv3〉
Title
【特定観察対象3級】【羽うさぎの椅子】
【無能】【遅すぎる踏み出し】
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☆解説☆
【遅すぎる踏み出し】
解説
ようやく敵を倒したのか。これ程までに愚鈍な奴には会ったことがない。
遅すぎるお前には相応の称号をやろう。
詳細
AGIダウン(小)
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「おおー。」
多少なりとも上昇しているステータスに思わず感嘆の声があがる。
(それにしても、魔神さんというのはせっかちさんなのかな?)
まだ一週間も経っていないのに遅すぎるとはどういうことか。普通ぐらいだろうにとネムは首を傾げた。
ネムはすっかり忘れているようだが、このゲームは対人戦が醍醐味だ。通常、開始から一日と経たずに一人くらいは撃退しているというもの。それをネムは約1週間かけてようやく一人。それも、見張り役であるはずのアルが倒したのだ。どう考えても遅すぎる一歩である。
きっと妹の灯音がこの光景を見ていればこう言っただろう。『まあ、お兄ちゃんだもんねー。まだ早い方なんじゃない?』と。
……灯音に言われていなければどれほど時間がかかったことか。ネムに相応しい称号には違いなかった。
「とりあえず、このやり方ならかたくなれそう。
アル、手伝ってくれる?」
「ミッ!」
最早人任せならぬアル任せのネムだった。
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暫く森の中を散策し、ようやく見つけた人影にそろりと近づく。ある一定の距離まで近づくと何故か振り向かれ、剣を構えられるがネムに恐怖心はない。
ネムは初日の矢の恐怖から、剣を向けられても恐怖を覚えなくなっていた。ある意味鈍くなったともいう。
(戦い方?ってやつも、分かり始めたし、ね?)
慣れか生来の図太さからか、焦ることなく冷静にスキルの照準をあわせる。〈ねむれ〉は対象の半径1m以内でないと当たらないため、近づく必要があるのだ。この制限に気がつくまで何度も死んでいるのだが、気がついたネムの第一感想はあーだからかーだった。呑気なものである。
ネムとしては面倒なため、改善して欲しい要素の一つだ。
「□○○!!」
振り上げられた剣がネムに向かって下ろされる前に背後まで駆け抜ける。しかし、相手の方が動きが速いためかネムが後ろを見た時には剣が迫っていた。
慌ててスキル圏内であることを確認し、スキルを発動させる。
「〈ねむれ〉」
「■ッ……!」
効果が不十分だったのか、膝をつくだけの人に、更に〈ねむれ〉をかける。重複出来るのか不安だったが、それ以上の抵抗なく人は倒れ込んだ。
「えっと、それじゃあ「ミィッ!」……なぁに?」
きょとんとするネムにテシテシと倒れ込んだ人を叩く。どうやら、現実で倒せと言っているようだ。
その姿にネムはどうしようかと考える。元々戦うのは本来の目的ではなく、あくまでも寝るついでとしか考えていなかったネムは、寝るために戦っているようなものだった。寝ずに戦えというのはなんとも……そう。本末転倒に思えたのだ。すぐに頷くことは出来ない。
「ミィ!」
「えー……。アル、僕は寝たいんだよ。分かる?」
「ミィ……。ミ、ミィ?」
うわ……。この主、この期に及んでまだ寝る気かよ……という副音声が聞こえてきそうな深いため息をついた後、アルは交換条件を恐る恐るといった体で告げた。
「え?思う存分モフモフしていい……!?」
「ミ?ミミィ!?」
「なーんだ。じゃあ、やらない。〈ゆ……「ミミッ!」……もー。分かったよ。仕方がないなぁ。」
「ミィ……。」
こいつ、本当になんでこの世界に来たんだと言わんばかりに、アルは先程よりも深いため息をついた。
それはさておきと、アルを放ってネムは現実で人を倒すべく行動を開始した。
ネムは武器を持っていない。そのため、人の武器を拝借することにしたのだが、これがまた難しかった。
「よいっ……しょっ、と、とと……っぁ!」
何せ普通に重い。あと、サイズが明らかに合っていなかった。相手の剣が1m弱ありそうなのに対してネムは20cmほどしかない。物理的にも持ち上げるのは厳しいだろう。
バランスを崩して剣と共倒れする寸前に、剣をどこかへ放り投げる。遠くで何か聞こえた気もするが、きっと気のせいだろう。
どうしたものかと頭を悩ませていると、アルがまた鳴いた。
「ん?なぁに?」
「ミィッ!」
「んー。……あ。そう言えば爪があったね?」
「ミィ……。」
テシテシとアルに手を叩かれて漸く元からもちあわせている武器……爪に思い当たったネムは、アルにマジかよこいつという目で見られながらも相手の喉元へと爪を突き刺した。
「●▼◎!?」
呻き声らしい声を上げる男にまだ倒せていないのかなと、ネムは更に爪を深く突き立てる。
やがて事切れたらしい男が赤い粒子となって消えていくのをネムはぼんやりと眺めていた。
「へぇ。思ったより綺麗だねぇ。」
「ミィッ!?」
コイツ正気かよとでも言いたげなアルとは反対に、ネムは機嫌良く粒子を眺める。死体を眺めて笑うのは傍から見てヤバいやつだが、ネムが思い至る訳もなくアルはネムから少し距離をとった。
10秒もしない内に完全に消え去った粒子から目を離し、何故か離れたところでそっぽを向くアルを手招きした。勿論、約束のなでなでをするためだ。
「これなら直接倒しても……まあ、いいかも?」
「ミミィ……。」
恐らくなでなでつきならという意味であろうその言葉に、アルはもう好きにしろと投げやり気味に身を任せるのだった。
《寝夢眠兎 は 敵陣営 を 撃退した!
レベル が 1 上がった!
条件達成!寝夢眠兎 は 〈つく〉 を 覚えた!》
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「え!お兄ちゃん、敵を倒せたの!?それも、直接!?」
灯音に進捗を尋ねられ、答えたネムに対する返事がこれだった。
ネムは灯音の自分へのイメージはどうなっているのかと思う反面、ネムのことをよく理解している灯音に笑みが漏れる。
「うん。アルに言われたから。」
「わぁ。もしアルさんに会ったらいつも兄がお世話になってますって言わなきゃ。」
ネムがアルにかなり迷惑をかけていることを察しての言葉なのだが、それを聞いたネムは深く考えることなく礼儀正しい妹に感心していた。
(アルに挨拶……楽しみだな。)
いや、それよりも家族にアルを紹介する方が楽しみになっているネムはどこかズレているに違いなかった。
「で?何か新しいことはあった?」
「……?」
「……いや、ステータスとか、情報とか。」
「?忘れてた。」
「…お兄ちゃんに聞くのが間違ってたわ。」
天を仰ぐ灯音にネムは首を傾げる。いつもの日常がそこにはあった。
次回、硬くなれるスキル
灯音(まだ1年は先の話なのに、なんでこんなに楽しみにできるんだろう……?
そして、作者は果たしてそこまで書き切ることが出来るのかなぁ……?)
それでは、これ以降も良き暇つぶしをお過ごしください。




