6話 動く扉
こんにちこんばんは。
モチベって大切だよなと切実に感じる仁科紫です。
評価?ブクマ?して頂けたらなんて神読者なのでしょう。
感想なんて書いていただいた日には拝まなければなりません。かーみーさーまー(´人`)
それでは、良き暇つぶしを。
「……で、どうやってステータスをあげるんだっけ?」
「ミッ……。」
アルが頭上でひっくり返った気配がする。いわゆるノリツッコミをしたのだろうかと考え、流石アルだとほんわかとした気持ちになる。
(目の前にいたら撫でたのにな……。)
少し残念に思ったが、気持ちを切り替えて灯音が言っていたことを思い出した。
(確か、灯音は敵を倒したり、新しく何かをしたらレベルが上がるって言ってた。レベルが上がったら、ステータスも上がるんだよね。)
何かってなんだろうと思いつつ、敵を倒すのはなぁとぼんやりと木の上から周りの景色を眺めた。あくまでも綺麗なだけの景色に何も見つけられず、ただぼんやりとする。
そして、数秒経ってだんだん眠くなってきたネムはうつらうつらと船を漕ぎ始めた。
こういう時のためのお目付け役であるアルは、慌ててネムの額をぺちぺちと叩く。しかし、ネムは邪魔するなとばかりに首を振り、起きるどころかアルを抱き込んでしまった。これには流石のアルも動けない。
そのまま寝てしまうかと思われたネムだったが、アルは呆れながらも秘策を使うことにした。
「ミィ……ミミッ!!」
「うわっ!?なに!」
ブワッと吹いた風に驚き、ネムは完全に目を覚ます。突然の突風に完全に目が覚めたネムは恐らく何かしたのであろうアルをしげしげと見つめた。
「……風の魔法、かな?」
「ミ!ミミミッミィ!」
「えっと、なんかごめん?」
「ミーッ!!」
風魔法であるのは間違いないようだが、アルは怒っているらしい。ミッミと鳴いてはネムの頭をてしてしと叩く。
かなり加減してくれているのだろう。大して痛くはないが、ネムが申し訳なさを感じるには十分だった。
「分かったよ。次からは寝ないから、機嫌直して?ね?」
「……ミィ。ミ。」
やれやれ仕方がないなぁとばかりに肩を竦めたアルは、次はないからと言わんばかりにそっぽを向いた。
ネムはアルの態度にほんわかとしつつ、改めてどうしようかと思考を巡らせた。
(レベル上げのためにもここから動かないと、かなぁ。寝たいけど……まあ、今寝てもまた起こされちゃったら意味無いもんね。)
この使い魔にしてこの主人ありである。全くめげていないネムの神経はかなり図太かった。アルの気苦労は今後も続くことだろう。
少し考えたネムは、地上を歩くのではなく木の枝をつたって進むことに決めた。飛ぶのも良いが、まだ中途半端にしか飛べないのだ。また矢に襲われるような事があれば、流石のネムも暫くゲームにログインする気が失せるに違いない。
木の上をリスの如くタタタッと駆ける。意外にもつるりと滑り落ちる事もなく走ることが出来た。現実なら折れたり滑り落ちたりしてもおかしくない細い枝だってお茶の子さいさいだ。跳び箱の要領で前へと手で勢いをつけ、次の枝へと移動する。ネムの体重が軽すぎるからか、枝は微かに揺れるだけだった。
(四足歩行も案外悪くない、ね。)
なんだか自分が本当に獣になってしまったかのような感覚は、現実ではそう体験できるものではない。ネムは自分が四足歩行に案外向いているのかもしれないと思った。
開放感から更に速度を上げる。頭上のアルは何やらミーミー鳴いていたが、ネムは気付くことなく10分ほど走り抜けたのだった。
・・・
「ねぇ。ごめんって。アル。」
「……。」
思う存分走ってスタミナが切れた頃、アルはすっかり拗ねてしまっていた。ネムがいくら話しかけても返事を返そうとしない。
どうやらアルは所謂乗り物酔いをしてしまったらしい。ネム自身、楽しくて調子に乗ったことを自覚しており、自分に非があることは理解している。
アルに対しての罪悪感からどうしたものかと頭を悩ませていると、水の流れる音が聞こえた。
「あ、アル。川が近くにあるかも。行ってみない?」
「……ミンッ。」
それがどうかしたのかと言わんばかりにアルはそっぽを向く。しかしながら、アルから返事が返ってきた事にネムは少しほっとしていた。
このまま返事すらしてくれなかったんんらどうしようかと不安に思っていたのだ。
「川なら魚とか居るんじゃないかな。捕まえたらレベルが上がるかも?」
「……ミィ。」
あくまでも希望的観測でしかなかったが、アルはいつものようにのそのそと頭上に登ってきた。そして、アルはさっさと進めとばかりにネムの毛を引っ張る。多少なりともアルの気分を変えるというネムの作戦は成功したらしい。
アルの力が少し強くて引っ張られているところが痛かったが、ネムは何も言うことなく音のした方へと今度はゆっくりと歩いていった。
10分も歩かないうちに眼下にはキラキラと輝く水面があった。
水は底まで見える程に透き通っており、今まで見たことがないくらい綺麗だ。清流とはまさにこの事だろうとネムは感心し、目を奪われた。
感嘆の息を吐き、触れてみたくなったネムは川の近くに寄り、恐る恐る水に手を入れる。
(冷たい……。)
その心地よさにアルをちらりと見る。アルは隣で同じように水に近づき、鼻をヒクヒクとさせていた。
(これなら、入ってもいいかな?)
少しずつ水に浸かる面積を増やしていく。
まずは足から。少し冷たすぎる気もしたが、時間が経つ毎に心地よくなってくる感覚にフニャッと笑う。
腰まで浸かりきった頃、アルはこちらを見て驚いたように目を大きく開き、何かを訴え始めた。
「ミーッミミィッ!」
「え?何?」
こてりと首を傾げると、アルは一生懸命に後ろを指さす。腰まで水に浸かっているのを指しているのではないようだ。
間違いなく何かがあるのだろう。それも、ネムにとって危険な何かが。慌てて後ろを見れば、そこには人がいた。
歳は20程だろうか。ファンタジー小説に出てくる冒険者のような姿をした若い男が立っている。
腰には剣をさしており、警戒しているのだろう。手を剣の持ち手に伸ばしてこちらを見ていた。
「○〇◎□△▽……?」
不審げにこちらを見る人の姿に、慌てて水から飛び出る。アルもついてきたため、ついでに頭に乗せてどうするべきかと逡巡した。
そして、すぐさまもう一つの自分のスキルを思い出す。
「えっと、〈ねむれ〉!」
すると、その人の体が僅かに傾く。その間に草むらに隠れて次のスキルを使った。
「〈夢渡り〉」
自然と目を瞑り、次に開くとそこは赤い月が支配する世界。先程いた場所と風景は同じだが、何処か異なるその世界で一つの相違点を見つけた。
「動く扉……?」
木の扉がそこにはあった。何故かゆらゆらと揺れている。
なんとなく、それに触れれば何かが起こる気がして、扉を開けた。
□■□■□■□■
そこはある種のお祭り会場だった。
サーカスのような大きなテントの中で人が一人中央におり、剣を振り回す。それだけで周囲に居るぬいぐるみ達がきゅーっと悲鳴じみた鳴き声を上げながら蹴散らされていく。よっぽど楽しいのかその人は満面の笑みを浮かべていた。
少し引きながらもその男を観察する。中央にいる男は先程遭遇した人と同じ姿をしていた。
なるほど?とネムは首を傾げる。
要は、この夢は男の夢なのだろう。そして、この世界で彼を敗北させればネムの勝ち。恐らくだが、正解からはそう遠くないとネムは感じた。
しかし、あのぬいぐるみ達では到底男には勝てまい。
どうしたものかと考えていると、急に空が暗くなる。いや、巨大な影に覆われたのだと気がついた。
上を見上げると、そこには巨大なアルの姿があった。
「えっ。アル……?」
「ミ゛ィッ!!」
大きくなったからか、野太くなったアルの鳴き声につられて男が顔を上げる。流石に男もあまりの大きさに顔が引き攣っているのが見てとれた。
瞬間、男が舞台から飛び降り、サーカス場の外へと飛び出そうとする。
だが、逃げ出した男をアルが見逃すわけがない。
「○▲!!」
男はアルの太くなったフサフサの手でぺちりとつぶされてしまった。
その途端、ぽふりと音がなり、男が居た場所に宝箱が現れる。アルを見上げると、アルは既にいつものサイズに戻りてしてしと宝箱に近づけと言わんばかりに叩いて指さしていた。
「ん。アル、凄いね。
あれを開ければいいの?」
「ミミッ!」
どやっとばかりに胸を張りつつアルは頷く。少し歩く速度を上げて箱に手をかける。すると、中からはキラキラとした光が溢れ出てきた。
パァっと広がる光に包まれ、思わず目を閉じる。
開いた時には暗い森の中へと移動しており、木の扉はなくなっていた。どうやら無事に今回の戦いを乗り越えられたらしく少しホッとする。
「ん...?」
手の中に違和感を覚え、いつの間にか握っていた手を開く。そこには赤色の飴玉のような塊があった。
「なんだろう?これ。」
「ミッ!」
ネムが首を傾げるとほぼ同時にアルがくれとばかりに前足をあげる。どうやらアルが食べるものらしい。
しかし、いくらアルが欲しがっているとはいえ、訳の分からない物をあげるわけにはいかない。
(あ。そういえば、鑑定?〈しる〉だっけ。あるから、それで何かわかるかも?)
未だに把握しきれていない自身の能力に戸惑いつつも飴玉に触れてスキルを使った。
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【友好度上昇アイテム(魔)】
Name:魔力片(火)
State:粗悪
Class:アイテム Species:鉱石
Belong:火
MP +10
MND +1
説明:魔力の欠片。使い魔にあげると能力値が上がる。粗悪品であるため、効果は微々たるもの。
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「友好度、上昇アイテム……?」
「ミィ〜♪」
気づけばアルがネムの手から塊が消えており、ガリボリと可愛くない音がアルの口から聞こえる。待ちきれなかったらしい。
(舐めずにカリカリ……可愛い。)
ネムが飼い主バカを発揮し、デレデレとしている間にもアルの食事が終わる。
そして、食事を見られていたと分かるとアルはすぐにネムへと飛び込んだ。
(まさか、懐いて……)
「……ぅっ!?」
しかし、突如として感じる痛みに違うと分かる。どうやら、食事姿を見られていたことが気に食わなかったらしい。アルに頭突きをされただけだった。
(まあ、だよねー。)
そう簡単に懐いてくれるようなアルじゃないとため息をつくのだった。
《寝夢眠兎 は 初めて敵陣営 を 撃退した!
レベル が 1 上がった!
称号【遅すぎる踏み出し】 を 手に入れた!》
次回、そういえば爪があった
〜一方その頃〜
アイ「この子、やっと戦闘に勝ってくれましたね。
本当に、良かった……。困った称号は付きましたが、これ以上は危うかったですから。
これから馴染んでくれるといいんですが。」
ホッと胸を撫で下ろす姿があったとかなかったとか。
それでは、これ以降も良き暇つぶしをお過ごしください。




