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5話 愛玩動物に負けてる

こんにちこんばんは。

またしても予告ミスっておりますが、気のせいだということにしたい仁科紫です。キノセイキノセイキットキノセイ……


それでは、良き暇つぶしを。

 結局、あの後も何度か試して見たのだが、残念なことにすぐあのウィンドウが表示され、ネムは夢の中から追い出されてしまった。

(うぅ……眠いのに……。)

 今日はとんだ厄日だったとログアウトをすることに決める。こんな日はさっさと寝るに限るのだ。


「それじゃあ、ね。アル。」

「ミ?」

「おやすみ。」

「ミィミミ!」


 ログアウトボタンを押す直前、何か光るものが横切ったが、眠くて仕方がなかったネムには認識されることなくその日のプレイは終了するのだった。



 それから更に数日後。


「どうして眠れないんだろう……。」


 ネムは未だに眠りにありつけていなかった。〈夢渡り〉は出来る。しかし、暫く時間が経つと何故か元の場所に戻ってきているのだ。……というより、所謂死に戻りをネムはしているのだが、本人は原因を理解できていない。ただ、なんとなく死んじゃってるみたいだけどなんでだろう?くらいの感覚でしかない。

 人によっては対戦ゲームなのだからすぐ分かると思うだろうが、そこは初日に遭遇した追っ手のことをすっかり忘れているネム。自分の死と追っ手の関連付けなど出来ていない。


 困ったネムは、良質な睡眠を手に入れるべくこういった事に詳しい妹に尋ねることにした。


「え。お兄ちゃん、もしかして自分が殺されてることに気づいてなかったの?」


 返ってきた言葉はなんともあっさりとしたものだった。本気の驚きである事が分かる、嘲りなどを含まない言葉にネムは素直に頷く。もっとも、もし揶揄われていたとしてもネムは気づくことすら出来ないだろうが。


「いつの間にか死んじゃってるんだよ?気づくわけないよ。」

「だからその為のログなんだけど。」

「ログ……?」


 そこからか……と呆れた目を向けてくる灯音に少しばかり情けなさを感じたが、兄としての威厳などこれっぽっちもないネムは素直に教えてもらうことにした。


「えっと、お兄ちゃん。何かした時にこう、左端辺りに文字が流れない?」

「文字……?流れるような……流れないような……?」

「あ。うん。ログインした時に確認してみて。どうせ初期設定のままだろうし、そんなに死んでるなら絶対表示されてるから。」

「わ、分かった……。」


 左下辺りの文字がログ、とネムは頭の中で反芻し、もう聞くことはなかったかと考える。どうせならここで疑問は全て終わらせてしまいたかった。


「あとは、そうね。お兄ちゃん、まずはステータスを上げるところから始めなよ。」

「ステータス……?」

「うん。知ってた。説明いるよね。

 えっと、ステータスっていうのは、能力値の事だよ。」

「能力値……?」


 それはまた漠然としているなと首を傾げると、灯里はにっこりと笑いながら言葉を続けた。これは灯音が怒り出す一歩手前の癖だ。

 怒らせても別にいつもの事ではあるのだが、不用意に怒らせる必要もないだろう。気をつけねばと耳を傾ける。


「能力値っていうのは、要はアバターを客観的に評価したものの事なの。

 例えば、ゲームの中で木を叩きます。」

「ふむふむ。」

「この時、もしアバターの攻撃力が1だったら木は1、HPという名の生命力が削れるんだよ。分かる?」

「……多分?」


 ネムとて馬鹿ではないが、何故生命力がHPなのかを尋ねればそれくらい自分で調べろと言われてしまうのだろう。

 そういうものとして先を進めてもらう。


「まあ、こんなふうにゲームによって表示や評価方法が変わるんだけど、基本的には自分の体力とも生命力とも言えるHP、魔力の総量であるMP、攻撃力のSTR、防御力のVIT、知力のINT、精神力のMID、器用さのDEX、俊敏さのAGI、幸運のLUKで表されていることが多いかな。」

「ちょ、ちょっと待って。メモするから……!」


 スラスラと唱え始める灯音に、あれ?もしかして結構ゲームガチ勢なのでは……という思考が頭に過ぎったが、まあいいかと一瞬で消し去る。余計なことは考えない、言わない、覚えないというのがネムが自負する自身の良いところなのだ。

 こうしてゲームの基礎の基礎といえるステータスについて学習し、ゲーム内で確認したところ、ネムのステータスは以下の通りだった。


 ──────────────────


 Name:寝夢眠兎 

 Base:黒

 Class:夢魔族 Species:夢魔(幼体)Lv1

 Belong:闇

 HP 50

 MP 100

 STR 1

 VIT 5

 INT 10

 MND 10

 DEX 9(夢状態:18)

 AGI 5(-2)(飛行時10-4)

 LUK 5


 AP 0


 Skill

 〈暗視〉〈夢渡り Lv1〉〈ねむれ Lv1〉

 〈しる Lv1〉〈とぶ Lv1〉〈にぶい Lv2〉


 Title

【特定観察対象3級】【羽うさぎの椅子】

【無能】


 ☆解説☆

 〈ねむれ〉

 しょうさい

 じぶんよりよわいあいてをねむらせる。


 〈しる〉

 しょうさい

 ものにつかうといちぶがひょうじされる。


 〈とぶ〉

 しょうさい

 とべる。


 〈にぶい〉

 しょうさい

 あまりにも失態をおかしすぎたあなたへの魔神様からのプレゼント。

 失態をおかすたびにAGIが下がる。

「メッセージ」

 自らの能力を活かしきれぬものに速さなど無用の長物だ。


【特定観察対象3級】

 詳細

 アイ君に目をつけられてしまったそこの君!災難だねぇ。可哀想だねぇ!

 でも、さすがに何処でも寝てしまうというのは看過できない!故に、すこーし観察させてもらうよ?

 効果

 視線を感じるようになる。


【羽うさぎの椅子】

 詳細

 羽うさぎは君のことを座り心地のいい椅子くらいにしか思っていないようだ。もっと親密度を深めよう!

 効果

 羽うさぎのステータスが見れる。


【無能】

 詳細

 魔神様は貴方の活躍を見て不満を覚えています。もっと人間達に制裁を。貴方もやられたままは悔しいでしょう?

 効果

 他の魔族からの好感度が1下がる。


 ───────────────


 Name:アル

 Base:黒 State:顔見知り

 Class:妖精族 Species:羽うさぎ Lv15

 Belong:風

 HP 400

 MP 150

 STR 40

 VIT 25

 INT 40

 MND 20

 DEX 12

 AGI 40(飛行時50)

 LUK 20


 AP 30


 Skill

 〈暗視〉〈かぜまほう Lv1〉〈ずつき Lv2〉

 〈飛ぶ Lv1〉〈速い Lv1〉


 Title

【一匹兎】【寝夢眠兎の▅▂▅▅▂】

【▲○▼■○▲■】


 ──────────────────


「お兄ちゃん……愛玩動物に負けてるとかどれだけっ……!!」

「……?」


 バンバンッと机を大きく叩く妹に、それよりも机が壊れないか心配になるネムだった。



 □■□■□■□■



 日時は変わり、場所はネムの部屋。

 本日は日曜日ということもあり、集まっているのはネム、玲音、灯音の三兄弟。今まさに作戦会議が行われようとしていた。


「さて。早速だけど、お兄ちゃんのステータスはまっさら。好きほ……コホン。いい感じに組み立てることが出来るよ。

 で、今のビルドを見るに、元々夢魔っていうのは魔法使い寄りのステータスみたい。ここまではいい?」

「イエッスマム!」

「うん。大丈夫……。」


 正直、魔法使い寄りとか言われても魔力が高いからかなとかしか思えないネムはただ頷くだけだ。

 話を折る方が灯音の機嫌を損ねるため、詳しく聞く気もない。やる気という点では本人よりも兄弟の方が高かった。温度差が激しいのはこの三兄弟ではいつものことだ。


「それで、お兄ちゃんがしたいのは寝ること。これもおーけー?」

「おにぃらしいよな。」

「らしいのかは分からないけど……寝たいのは合ってる。」


 コクリと頷くネムに灯音はニヤリと笑う。

 不穏な雰囲気を感じていったい何を言われるんだろうかと構えていると、灯音は自信満々にこう言った。


「ということで、防御を上げよう!」

「……ん?防御……?」

「魔法使いなのに防御なの?なんで?灯音。」


 何がというわけなのかは分からないが、防御を上げたら良いらしい。どうやってあげるかは知らないけど。

 しかし、受身的なネムとは違い、玲音は懐疑的だ。玲音は灯音と良く喧嘩をしているから反抗的になりがちなのかもしれない。……と、ネムは思っているが、実際にはネムが灯音と喧嘩しない分、玲音が灯音と喧嘩しているだけだ。

 故に懐疑的なのは単純に知識量の差である。勿論、ネムは気付いていないが。


「魔法使いだからこそ、よ。どうせお兄ちゃんの事だから、装備とか言っても分からないし面倒だとか寝心地が悪いとか言い始めると思うんだよね。」

「あー……。確かに。」

「それに、今やられてる理由って攻撃されてすぐに死亡してるからだと思うの。だから、すぐ死なないっていう意味で防御を上げるのは間違いないでしょ。」


 なるほど……と呟く玲音にならい、頷くネムだが意味はよく分かっていない。最早よく分からないし任せようかとネムは思い、挙手した。


「はい。お兄ちゃん。どうしたの?」

「任せるから、寝t「ダメ。」…………。」


 眠いなぁと思いながらもうつらうつらしている内に妹主導のネム強化計画は推し進められていく。



 そして。


「頑張ってステータスあげるぞー。」

「みー?」


 翌日からネムのステータスアップ計画が指導したのだった。……本人のやる気はともかくとして。


次回、動く扉


灯音「ほんと、お兄ちゃんは私がいないとダメダメなだから!」

ネム「灯音は頼りになるなぁ。……任せて寝よ。」

玲音「そういうところだよ。おにぃ。」


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお過ごしください。

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