4話 対戦ゲーム……?
こんにちこんばんは。
次回予告ミスってることに気づいて慌てて変更した仁科紫です。
そもそも本当は掲示板、この回の後に入れる予定だったんですが……うーん。ポンコツ。
それでは、良き暇つぶしを。
「え!お兄ちゃん、ゲームしてるの!?」
この兄が!?と素直に驚くのはよくネムとは正反対だと言われる4つ下の妹、灯音である。ネムにはもう1人2歳下の弟がいるのだが、まだ帰ってきていないため割愛する。
夕飯を食べ終えた際、母が夜もゲームするのかを聞い(てしまっ)たがためにゲーム好きというより、新しい物好きな妹が釣れてしまったのだ。
正直、昔から名前に灯という漢字があてられている割りに性格が明る過ぎないかとネムは常々思う。
灯というより明の方が似合う程にはパーリーピーポーな妹。それがネムの灯音への印象だ。
「ん。アナザークロッ…?か、なんかそんなの……。」
「えっ!最新のゲーム!いいなぁ。
でも、お兄ちゃんバイトとかしてないでしょ?」
灯音の目からは、さては買ってもらったなという羨ましさ半分妬み半分な感情を伺えた。
ネムはなんとなく察しつつ、この働き者の妹にどう答えたものかと思考する。
流行りものが好きな妹は、ネムとは反対に活動的で欲しいものがあれば両親と交渉してお手伝いをする事で手に入れる努力家なのだ。
来年の4月から高校生になるのもあって、来年から買うぞと意気込んでいたのかもしれない。
没入型のVRゲームを遊べるのはある程度身体が出来上がる16歳以上と法律で決まっており、誕生日が12月にある灯音なら十分バイトで貯めたお金で購入できることだろう。
「うん。バイトするつもりだったけど、母さんたちがボクにしては珍しいから買って遊んでって。」
「確かに。」
納得と表情で物語られ、なんとなく釈然としないネムは眠いなぁと目を擦った。
「でも、確かあれって対戦ゲームだよね?お兄ちゃんってそういうの得意だっけ?」
目を擦っていたのだが、聞き逃せない言葉に灯音へと視線を向け、首を傾げる。
「対戦ゲーム……?」
「あ。さてはお兄ちゃん、詳しく調べずに始めたね?」
やれやれとため息をつく妹に少しムッとしたが抑える。この妹に舌戦を仕掛けたとして、ネムが勝てた試しはないのだ。ここは抑える方が面倒は少ない。
(まあ、怒るよりも寝たいくらいだし……。)
眠たさにぼんやりとしている内に灯音が言いたいことを言って去っていく。勝つも何も勝負すらしないのがこの兄妹の喧嘩とも言えない喧嘩なのだが、今日は一味違った。
「お兄ちゃん。とりあえず、そこに座って。」
「ねむ「いいから。」……うん。」
致し方なしと母の邪魔にならないようリビングに移動する。何処でも眠るネムのためにソファは少し大きめだ。
お気に入りのクッションを腕に抱え、ソファに体を預ける……と、寝そうになったのでクッションに体重をかける。沈む体に僅かな反発、フワフワとした触り心地の良さにうっとりとして更に脱力する。続いて連想されるのはアルのことだ。
(いつか触らせてくれたらいいんだけど……。)
アルの丸いフォルムはフワフワなのかサラサラなのか、はたまたモチモチなのかと想像し、にまりと口元が緩む。それを見逃してくれる妹ではないのだが、すっかり油断しているネムは当然のように妹から質問攻めを受けた。
「お兄ちゃんがそんな顔をするなんて……!?
話題のゲームはどう考えてもお兄ちゃん向きじゃないのに何があったの!?
聞いていい!?ねぇ!聞いていい!?お兄ちゃん!!」
「……うん。」
うんと言うまで縋り付いてきそうな灯音に、早々に諦めて頷く。ネムが甘やかしすぎたのか、それとも育った環境からか。この4歳下の妹は押せば通ることをすっかり学習してしまっているのだ。そういう所も灯音らしいとネムは微笑ましく思う。いや、ホントそういう所なんだが。
「えっと、まず僕は人じゃなくて夢魔っていう種族を選んだんだ。」
「寝るためね。」
「う、うん。正解。」
流石灯音……と心の中で呟き、得意げな灯音は見ないことにして説明を続ける。
「えっと、そしたらアイさんが羽うさぎって子をくれた。」
「……なんで?ていうか、アイって誰?」
「ん。僕があちこちで寝ないようにって、言ってた。アイさんはサポートAIさん。」
「……なるほど?」
相変わらずのリアルラックと呟く灯音にネムは首を傾げ、まあいいかと自己完結する。
灯音が暫く無言になったため、体をクッションに埋めてフカフカを堪能する。
あまりにもクッションが好きすぎるネムのために母が定期的に洗濯したり干したりと手入れしてくれているのだ。お陰で家のクッションは常にフカフカで気持ちがいい。
心地よいフカフカに眠気を誘われ始めた頃、ようやく灯音は納得したのかネムの方を向いた。
「お兄ちゃんは魔族側なんだね。覚えておこっと。」
「……なんで?」
「来年、ゲームできるようになったら買う予定なの。
あと、お兄ちゃんと一緒なら楽しいことが起きそうだから!」
「……なるほど?」
流石兄妹と言うべきか。返事が全く一緒だ。普段共通の話題というものがないだけに妹との会話は新鮮で、眠気よりも優先できる程度には興味深いものがあった。
(ゲーム、してたらまた話すのかな。)
そんな仄かな希望を齎して妹という名の嵐は去っていった。
「え!?おにぃ、ゲームしてんの!?」
そして、自室に戻るタイミングをはかっている間に部活から帰ってきた2歳離れた弟の玲音からも驚かれることとなり、また質問攻めをうけるのだが、それはまた別の話。
(ゲーム、始めただけなのに……。)
ネムの静かな日常が変わっていく。その事に心中では愚痴がこぼれたが、自然と口角が上がっていることにネムは気づいていなかった。
尚、ネムママは気づいていて息子の成長に密かに感動していたりする。
「ねぇ!あなた、聞いて!音夢がね?」
「う、うん。聞いてるよ。だから、落ち着いて。ね?」
……明らかに灯音の性格は母親譲りなのだが、それに気づくこともないネムだった。
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シャランッと軽やかな音が鳴り、ネムは木の上に立っていた。
「ミィ?」
「ただいま。アル。」
「ミ。」
相変わらずの可愛らしさに頬を緩め、アルに笑いかける。あれからネムは、寝る前に一度ログインすることにした。妹たちとのやり取りもあり、ほんの少しだがアナザークロックの世界自体に興味を抱いたのだ。一番はアルの存在が大きいが。
アルは一度納得したように頷いた後、トンボのような羽をパタパタと動かし、ネムの頭の上に移動した。ここを定位置にするつもりのようだ。
暗闇の中でも薄暗く感じる程度に見えているのは種族特性のお陰だろうか。ネムにはアルの姿がはっきりと見えていた。
夜の森は静寂に包まれている。薄暗く慣れない森の中だからか、どこを見ても同じような光景にしか見えない。どうやら、夕方にいた場所とは違うようで蛇の巣があった洞がある木は見当たらない。
ネムは歩き回れば確実に迷子になることを悟った。
さて、これからどうしようかと考えたネムは、スキルを試すことにした。寝てみたかっただけと言うなかれ。ゲーム中なのだから、スキルを使うのは普通のことだと誰に言うでもなくネムは言い訳をする。
アルはぼんやりとした様子のネムを頭上で静かに見守っていた。少々呆れた顔をしているようにも見えるが気のせいだろう。
「アル。今からスキルを使うね。」
「ミ。」
アルに声をかけると、アルは周りを見渡して頷いた。誰もいないか確認をしたようだった。アルはしっかり者だなとネムは感心し、撫でたかったがやはりそっぽを向かれて落ち込む。
ゆっくり仲良くなっていくしかないだろう。
ネムは一つ息を吸い、スキル名を口にした。
「〈夢渡り〉」
静かな暗闇を淡く赤い大きな月が照らす。それだけが夢の世界であるという証拠だ。
静かな夜の世界を一歩踏み出す。
そこには夕方に見た時と同じ夜が広がっていた。
「綺麗だなぁ。アル。散歩しよっか。」
「ミィ!」
パタパタと可愛らしく羽を動かし、アルが先を飛ぶ。その後ろをネムが続いた。
何処へ向かっているのだろうか。疑問には思ったものの、ただ2匹で飛ぶのが楽しいネムは何も聞かずに進んだ。
そして、暫くして森の中に虹色に輝く雲のようなものを見つけた。それが何であるかは分からない。ただ、ネムは興味の赴くままに近づいていく。
……が。
「……あれ?」
突然のパリンッと何かが割れるような音の後、赤い月が割れる。
そして、次の瞬間にはこのようなログが目の前に表示がされた。真っ暗な視界に60秒のカウントダウンも始まる。
〈プレイヤー名:ユータに敗北しました。
(死因:斬殺)
※能力を強化して勝利を目指しましょう!〉
「へ…?」
次回、愛玩動物に負けてる
それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。




