8話 硬くなれるスキル
こんにちこんばんは。
昨夜酔ってシャワー浴び中の浴槽内で転倒、頭を打ったポンコツ作者こと仁科紫です。
皆さんもお風呂に入る前にお酒を飲んだ時は気をつけること。そして、足を洗う時は座ることをオススメするぜ……。頭いたぃ……。
それでは、良き暇つぶしを。
そうしてレベルを上げるべく戦う日々が始まった……のだが。
「……飽きた。」
「ミィっ!?」
「すぐに硬くなれる訳じゃないし、ゆっくりでも良くない?」
目の前の粒子が消えていく様を見ながらネムは詰まらなさそうに呟いた。
レベル上げを試みて3日。三日坊主とはよく言ったもので、志半ばでネムはレベル上げという行為に面倒臭さを感じていた。
この3日間で倒した敵の数は10数人。レベルは5になっている。
ステータスの育ち具合を再確認するようにネムは画面を開く。
──────────────────
Name:寝夢眠兎
Base:黒
Class:夢魔族 Species:夢魔(幼体)Lv5
Belong:闇
HP 70
MP 160
STR 10
VIT 30
INT 60
MND 80
DEX 37(夢状態:74)
AGI 33(-9)(飛行時48-13)
LUK 16
AP 25
Skill
〈暗視〉〈夢渡り Lv1〉〈ねむれ Lv4〉
〈しる Lv1〉〈とぶ Lv1〉〈にぶい Lv3〉
〈つく Lv3〉
Title
【特定観察対象3級】【羽うさぎの椅子】
【無能】【遅すぎる踏み出し】
──────────────────
アルのステータスよりは優れた項目もあり、ようやく愛玩動物に負けているとは言いきれなくなったネム。
〈つく〉を覚えてからは相手を倒すのも早くなったのだが、敵を見掛ける→眠らせる→爪を突き刺すを繰り返すだけの流れ作業となり、結果として飽きに繋がってしまったのだ。
ここで景色が変わればまた話が変わるのだが、森から出ようとする度にそれとなくアルによって軌道修正され、再び森に戻されている。
景色もすることも変わらない。強くなってはいるのだろうが、如何せんネムには忍耐力というものがなかった。
「そろそろ寝たいし、ね……?」
こてりと首を傾げるネム。
ネムのことを知っている誰もが容易に行き着く結論なのだが、そう。ネムはいい加減寝たかったのである。
もはや手段が目的となりつつある今日この頃、ネムは眠りを我慢するという忍耐力が切れてしまったのだ。
首を傾げたままネムがアルをじっと見ると、アルはポカンとした様子から一転、激しく首を振り始めた。
「ミミッミ!」
「えー。ちょっとだけ、ね?」
「ミィ!」
これだけアルが頑なに頷かないのにも理由がある。
寝れば最後。ネムがなかなか夢の世界から帰ってこないことをアルは身をもって体験しているのだ。
ネムはそんなアルを見てぼんやりと逃避する。
(んー。でも、レベル上げの意味、そんなになさそう?なんだよねぇ。)
どうしたものかと考えるネムだが、この考えに至ったのにも正当な理由がある。
それは、このゲームでは負けるとレベルが下がることがあるのだ。ある意味PvPを成り立たせるシステムの1つと言えるだろう。
何故レベルが下がるのか。
それは、敵陣営と戦い、負けた際に所持しているアイテムから一つと経験値を奪われるためである。
経験値はレベルに差があればある程手に入る量が増え、僅差の場合はほとんど手に入らない。そして、奪われる際もその逆となり、レベル差がある程奪われる量が増える。
更に、ネムがまともなアイテムを持っていないため、通常よりも多めに経験値を奪われるのである。
このシステムによりレベル上げ作業中、寝ていたネムが襲われ、レベルが1にまで下がることがあった。アルはそれを警戒しているのだが、ネムは特に気にした様子もない。
それもそのはずで、ステータスの数値は上がらずとも、スキルのレベルは上がる。スキルのレベルさえ変わらなければ、戦闘にそこまで苦労しないというのがネムの持論となってしまっていた。
この世界ではステータスも重要なのだが、あくまでも補助的なものでしかないことに気がついたからだ。
例えば、レベル1がレベルMAXの〈つく〉を覚えていたとしよう。
この場合、レベル7がレベル1の〈まもる〉で防御したとしても、レベルMAXの〈つく〉が勝ち、貫通できてしまうのだ。
このことに気がついたのは、ネムが追いつけない相手にもアルが余裕を持って追いつき、なんなら追い越せてしまうという姿を見たからだった。
ステータス上の差だけでは言い表せない程の圧倒的な差。それはこのエリアの誰に対してもそうだったのである。
故に、ネムはその秘密がネムの持つスキル〈速い〉にあると結論づけた。
そして、完全な最初からではないことに気づいたネムは、生来のマイペースさを発揮し、強くなってるならいいかと思考を放棄した。
因みにネムが飽きた理由の一つでもある。
負けて失うものなら育てるのもゆっくりでいいじゃない。そう思ってしまったのだ。
(とはいえ、アルがまた拗ねちゃうかもだし……うん。アルが納得しそうな目標考えようかな。
強くなる……やっぱり、スキルかな? )
スキルならば負けても弱体化せずに武器となる。良い考えだと頷き、ネムはアルに笑いかけた。
「ね?アル。レベルじゃなくて、スキル上げよ?」
「……ミィ?」
え。何かおかしなものでも食べた?とでも言わんばかりにネムを凝視するアルは、ネムの性質を理解し始めていると言えた。
その姿にネムは苦笑しつつも提案の意図を伝える。
「僕だって、目的は寝ることだけどこの世界を楽しむつもりはあるんだよ?」
「ミィ……?」
本当かと疑わしげな顔をするアル。ネムは勿論と大真面目に頷いた。
「だって、この世界の景色はキラキラしてるから。もっと、色々見てみたい。
その為には強くならないとなんでしょ?」
「……ミィ!ミミッ!ミ!」
何度も頷くアルはネムから見ても嬉しそうに見えた。
(アルが喜ぶなら、もう少し強くなるの頑張ってもいいかも?)
そう思えるほどには、ネムはこの世界に慣れ親しんできているのだろう。間違いなく変わり始めている自分に、なんだかおかしくなりながらネムはアルに笑いかけた。
「アル。僕、頑張るね。」
「ミィ!」
□■□■□■□■
「で、今度はスキルを強くする方針にしたんだね?お兄ちゃん。」
アルに頑張ると言った以上、何かはしなければと早速灯音を頼ったネム。ほんのり呆れ風味を感じさせる灯音だが、ネムは素直に頷き考えた案を伝えた。
「ほほう?なるほど。硬くなれるスキルね。
確かにお兄ちゃんらしいかも。」
それならと考え始めた灯音をぼんやりと眺めながらクッションに身を任せれば、いつものようにやってくる睡魔。うとうとと船を漕いでいると、おでこに衝撃が走った。
「あいたっ。」
「もう。私が折角考えてるのに、お兄ちゃん寝ないで?」
「ん……。」
毎度の事ながらネムにはどうしようもない睡魔故に謝ることなく頷く。
そして、また睡魔が……
「あぁ、もう!
お兄ちゃん!作戦考えたよ!起きて!」
「はっ。……灯音、ありがとう。どんな作戦?」
「ふっふっふ。聞いて驚け!その名も、スキル覚えちゃおう作戦!だよ!」
ドヤ顔の灯音をじっとみつめると、灯音は戸惑ったように頬をかいた。
「えっと、お兄ちゃん?それ、ジト目のつもり?」
「ジト目……?」
「あ。うん。分からないならいいや。
それより、作戦の内容なんだけど硬くなるスキルが欲しいなら、防御を意識して攻撃を受けるのはどうかな?多分、アルさんとの特訓でもいけるはずだよ。」
灯音が言うには、Another Clock Worldでは行動によりスキルや称号が手に入るらしい。
つまり、硬くなるにはそうなれるような行動をする必要がある。
「……じゃあ、沢山色んな事をしたら色んなスキルが手に入る?」
「うーん。それも善し悪しかな。スキル一つで変わることってあまりないんだよね。」
「ん……?」
てっきりスキルは強くなるための大きな要素となると考えていたネムは首を傾げる。
灯音が言うには、スキルは極めてこそ強いものらしく、沢山あっても使い切れないことが多い。そのため、スキルを持ちすぎても器用貧乏になるだろうとのことだった。
「器用貧乏も悪くないんだけどね。
あのゲーム、スキル発動は基本的にオートじゃなくて思考依存だから、お兄ちゃんには向いてないってだけで。」
「確かに。」
それもそうかと納得したネムは一先ず灯音の提案通り、防御を意識して攻撃を受ける方法を試すことにしたのだった。
後から灯音の作戦名を聞いた玲音はそのまんまじゃんと呆れ、本当にネムは実行するんだろうなぁと我が家の力関係に思いを馳せてため息をついたとか。
次回、すきるの、れべるあっぷ?
アル(コイツが強くなるのに意欲的だと……!?
明日はコイツが寝ようとしない日なんじゃ……!?)
それでは、これ以降も良き暇つぶしをお過ごしください。




