11話 マジか
こんにちこんばんは。
誰か続き書いて……と思いながら投稿する仁科紫です。
それでは、良き暇つぶしを。
「アールーッ……!!」
「ミンッ!」
「ぺきゅっ……アル!元気になってよかった!」
「……ミ。」
アルが動けなくなってから4日。ようやく回復したアルに抱きつくべく両腕を広げたネムは、アルの頭突きにより見事に返り討ちにされた。
しかし、慣れなのかネムはすぐさま起き上がり、アルに満面の笑みを向ける。何せ、現実世界での4日ぶりなのだ。この程度ネムにとっては元気の証明でしかない。
ニコニコ笑うネムへ冷たい態度をとるアルだが、満更ではなかったのか口元は緩く弧を描いていた。
灯音の助言をうけた後、すぐさま確認するとクールタイムはゲーム内時間で7日であることが分かった。
随分と長い間アルと話せないことが分かり、どうにもゲームをやる気になれなかったネムは、クールタイムが開けるまでゲームもうたた寝もしなかった。
結果としてすることもなく勉強ばかりしていたのだが、そんなネムの姿に家族は驚愕した。
『お兄ちゃんが、勉強してる...!?大丈夫?熱でも出た?』
『ねぇ母さん。おにぃ、何か変なものでも食べた?』
『あらあら。音夢も遂に大人になっちゃったのかしら。お母さん、寂しいわ。』
灯音、玲音、母親にと次々に話しかけられ、定時に帰宅した父からも『まだ起きてるなんて何か悩みでもあるのか』と聞かれる始末。
事実に一番近いのはあまり普段話すことのない父親の言葉というのが少しばかりおかしい。
ネムはぼんやり不思議に思ったが脇目も振らず勉強していたため、父親は少し悲しげな様子で肩を落としてネムの部屋を去っていった。扱いが酷いが、普段話さない分、ネム家での父親はいつもこんな感じである。玲音が後で父親を慰めていたらしいが、ネムのあずかり知らぬことだ。
一方の散々心配されているネムだが、ネムからしてみれば別段おかしな行動とは考えていなかった。したい時にしたいことをやる。つまり、寝たい時に寝ていたのが、気を紛らわせたいから勉強するに変わっただけのつもりでしかない。
ネムはむしろ、思いもよらない反応をする家族に驚いてすらいた。
(多分、心配かけちゃったんだろうな。
起きてると心配かけるのに寝てたら怒られるのってなんでだろう。)
それは普段の行いのせいだが、指摘するものはいない。今後も現れることはないだろう。
こうしてアルが元気になり、人心地ついたネムはようやく悪い出来事の中にも良い事があったことに気がついた。
「〈かたくなる〉、レベル4になってる……。」
「ミ!?」
そう。スキルのレベルが2つも上がっていたのだ。崖崩れに巻き込まれたことが原因であると見当をつけたネムは世の中悪い事ばかりではないなと笑みを浮かべる。
あの時耐えてみせたのが、例えアルによる何かが関わっていたとしてもレベルアップに繋がったのだ。嬉しくなるのも無理はないだろう。
そして、ネムはふと気づきたくない事実に気づいてしまう。
それは、以前灯音から聞いた、スキルのレベルは同じ行動では上がりにくくなるという話から連想された悪い予感だ。
ギギギッと音がなりそうなほどゆっくりとアルの方を向き、目を見てこてりとこれまたゆっくりと首を傾げる。
「つまり、今後はあれ以上に大変なのから防御しないとダメ……?」
「ミ。」
「……本当に?」
「ミ。」
「本当の、本当に?」
「ミ。」
「……マジか。」
無慈悲にも頷くアルを見て心底嫌そうに眉間に皺を寄せたネムは、ため息をついてその場でコロりと寝転がった。
(あー。風が気持ちいい。もう寝てもいいんじゃない?アルのことが片付いたし、眠くなってきたし。)
ほんの少し丈の短い草がネムの背中をチクチク刺すが、特に気にすることもなく体から力が抜けていく。チクチクする草も時間が経つ事に寝心地のいいフサフサとしたベッドへと変わっていく。
久しぶりの脱力感にほんの少しの充足感と満足を覚え、ゆっくりと意識を飛ばし……かけ、体の右側からアルの気合いの入った声に慌てて起きる。
「ミミミミ、ミィッ!!」
「〈かたくなる〉!?」
今までよりもかたくなったらしいネムにアルが衝突する。すると、今までは勢いが弱くなり着地するだけだったアルが弾力のある壁に衝突したかのように跳ね返った。
アルはその場で宙返りし、満足するようにミッと鳴く。アルのお眼鏡にかなったのだろう。今まで見たアルの姿の中で一番満足そうだった。
(突然でびっくりしたけど、アルが嬉しそうなのはボクも嬉しいな。)
ほわりと暖かいものが胸の中に広がり、知らず知らずのうちに口元は笑みを作る。
ニコニコと笑うネムを見てアルは嬉しそうなのも束の間、一転して不機嫌そうにまたミッと鳴いた。
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アルが完全復活し、ネムのスキルも成長したため、早速崖での特訓を始めることにした。
勿論、〈かたくなる〉の強化のためだ。
時折迷い込む人には〈ねむれ〉を使い、撃退している。
崖から降りたタイミングは大抵の人が油断しているのだ。狙いやすいポイントとも言えるだろう。
「これで、21回目……〈かたくなる〉っ……!」
アルが上から落とした岩をスキルで防御する。
ただそれだけの作業。やはりと言うべきか入る経験値が少ないらしくなかなかレベルが上がらない。通算21回目なのだから上がりそうなものだが、そう世の中は甘くないらしい。
ネムは遠い目をしながら、ウキウキと楽しげに岩を砕いては落としてくるアルを見ていた。
(まあ、アルが楽しいならそれでいいんだけどね。)
それはそれ。これはこれというやつだ。
ネムとしては何時までも同じ作業をしていると寝たくなってくるのである。むしろ、今すぐ寝たい。
レベル上げの作業をしている度にネムが感じるのは本末転倒という言葉だ。
寝たいだけなのに安心して寝るためにレベル上げに興じるこの行為はやはり酷く遠回りに思えるのだ。とはいえ、ぼんやりしていたらアルが岩を落としてくるため、寝るに寝れないのだが。
しばらく数えて50は防いだだろうタイミングでログが流れた。
【寝夢眠兎のスキルレベルが上がった!】
〈かたくなる〉Lv4→Lv5
【スキルレベルがMAXになり……
「やっと上がった……!」
「ミィミッ!」
ヒャッホゥと言わんばかりにアルが勢いをつけて頭上から降ってくる。角は輝かんばかりに光っており、ネムは目を瞬かせた。
(あれ?もしかしてスキル使って……?)
「〈かたくなる〉……!」
一瞬嫌な予感が頭を過ぎるが、いつもの習慣でスキルを発動させる。
僅かな抵抗の後に角の光が収まる。
そして、アルはふんっと鼻を鳴らして着地した。何かを試していたらしい。
「アル。今までスキルなしで突進してたの?」
「ミ?」
何を当たり前のことを言ってんだとばかりに首を傾げ頷くアル。ネムは手加減されていたことにアルの優しさを感じ、ほんわかとした気持ちになる。
(アルってなんだかんだツンデレさんだよねぇ。)
いや、ただこいつ程度にスキル使うのもという上位者視点でしかなかったのだが。
それはともかくとして、先程確認したログはいつもより長かった気がする。アルに気を取られて確認できなかった部分を確認しよう。
【スキルレベルがMAXになりました。
これ以上スキルレベルは上がりません。スキルを進化させて下さい。
詳しくはステータス画面を開いて確認してください。】
「レベルMAX……?これでレベルアップ生活終わ「ミィッ!」……?何?アル。」
元々は灯音の命令によるレベルアップ強化月間だったのだ。ようやく終わると気分が高揚するネムに待ったがかかる。
そして、ログをよくよく読んでみると、アルが言いたいことは察しがついた。
「もしかして、スキルを進化させてまたレベルを上げるまでって言いたい?」
「ミ!」
「……スキルって何処まで成長するんだろう。」
マジかと遠い目をするネムは、ため息をつくのだった。
次回、とうちゃーく
〈蛇足〉
ネムは気づいていませんが、大学でも心配した同期たちに声をかけられています。
その同期たちは高校以前からの顔見知りです。
認識していないのはネムが集中し始めると他が見えなくなる上、ほぼうたた寝しているからです。
うたた寝するネムの横を陣取り、度々毛布をかけてくれてたりします。
ネムは小人さんでもいるのかなと首を傾げ、まあいっかと再び寝ます。
同期たちはネムの眠りを妨げなかったことに安堵しつつ、気付かれないことにほんの少しの残念さを覚えながら今日もネムの安眠を見守ります。(ネムの安眠守り隊?いい名前があれば教えてくださいm(_ _)m)
健気な同期たちの献身にネムが気づくことはあるのか。今後この同期たちが物語に登場するのかはネムたち次第。
それでは、これ以降も良き暇つぶしをお過ごしください。




