3 入学式とクラス分け
翌日、入学式の日となった。
私は会場となっているホールへ向かい、空いている席に着く。
席順は決まっていないものの、暗黙の了解として、位が高い者ほど前に座る風習がある。
私は一番前の席に座った。
少しすると、リリアがやって来て空いている席を探し始める。そして比較的空席の多い一番前までやって来ると、そのまま席に着いた。
他の人の反応がわかりやすいわね。
男子はリリアのことが単純に気になっているみたいだけど、女子は視線に圧を感じるわ。
やがて入学式が始まる。
学園の説明から始まり、学園長の挨拶へと移る。その後、新入生の代表挨拶となった。
「新入生代表、リリアさん」
「はいっ!」
驚いたことに、代表はリリアだった。
会場中が騒めくなか、リリアが席を立って前に出る。
新入生代表は、入学試験で一番の成績を収めた者が務める。そのため平民でも選ばれる可能性はあるが、もしかしたら学園創立以来、初めてのことなのではないだろうか。
リリアが話した内容は、意外にも無難なものだった。
三年間、勉学に努めて精進する。要約すれば、そういった内容である。
ゲームではこの辺りはざっくりと飛ばされていたため、詳細まではわからない。ただ、ヒロインは平等と真実の愛を謳っていたので、ここでもそういったことを話すのかと思っていた。
その後は、リゲル殿下が生徒会長として歓迎の挨拶を行い、式は終了となった。
入学式の後は、教室へと向かう。
クラスは成績順となるため、私のクラスは高位貴族の令息令嬢たちとリリアのみという、かなり偏った構成になっていた。
私の学年に王族はいないため、家格で言えば、私ともう一人の公爵家嫡男であるカノープス・アレイストが最上位になる。
また、一年生の中で成績の上位三名は、生徒会に所属することになっている。
攻略対象の五人全員が所属しているため、生徒会はこのゲームの舞台の中心でもあった。
二年生で生徒会長を務める、私の婚約者、リゲル・ダフニール。
同じく二年生で副会長を務める、私のお兄様、カストル・オーフィア。
一年生で、現宰相を務めるカストール侯爵家の嫡男、アルゴル・カストール。
一年生で騎士を目指している子爵家次男、ルキウス・ドーラ。
最後に、商会を運営している男爵家の嫡男、レオ・エルドラド。
その五人が、攻略対象である。
簡単なオリエンテーションを受けていると、やがて昼食の時間がやって来た。
私は食堂へ移動する。
リゲル殿下からの返事には、昼食は難しいがお茶会には参加すると書かれていた。
ゲームのイベントでは、ヒロインがお弁当を持ってくるところを私が馬鹿にし、そのお弁当を叩き落とす。泣いて外へ駆け出したヒロインとリゲル殿下が廊下でぶつかる、というのが出会いイベントになる。
私はランチを買うと、リリアのいる席へ近づいた。
今回の私の目標は、他の令嬢たちの悪意からリリアを守ること。
あわよくば、リゲル殿下以外のルートであってほしいとも思っている。
「隣いいかしら?」
「リコリス様……どうぞ」
私はリリアの隣に座る。
このゲームの世界観はフランスを参考にしているため、料理もフランス料理がメインとなる。
ここの食堂で出てくるのは、日替わりのフルコースに近いものだ。ただし、食べた分だけ学費に計上される仕組みになっている。
当然、平民では滅多に食べることができない。
リリアの手元を見ると、彼女は可愛いお弁当箱に料理を詰めて持ってきているようだった。
「クロックムッシュとパウンドケーキですか……ここでお弁当を食べていると、周りから揶揄されますわよ?」
私がそう言うと、リリアは一瞬、怪訝な表情を浮かべた。
「お構いなく。リコリス様こそ私と話していては、周りのご令嬢からよく思われないのでは?」
「わたくしは公爵家の令嬢ですもの。周りの人がどう思うかなんて関係ないわ」
その後は、お互い無言で食事を進める。
午後の授業があるため、食事を終えると私はそのまま席を離れた。
午後のオリエンテーションも終わり、一年生で生徒会に入る三人は、生徒会へ挨拶に行くことになった。
お互いに簡単な自己紹介をして、この日は終了となった。




