20 エピローグ
断罪イベントから、三年が経った。
私たちも学園を卒業して一年が経つ。
そして今日は、私とリゲル殿下の結婚式。
私が正式に王太子妃となる日だ。
さらに、皆にも協力してもらい、もう一組も同じ日に結婚式を挙げることになっている。
「リコリス様、とてもお綺麗で似合ってます」
「リリアこそ、とても可愛らしいわ」
私とリリアは、それぞれウェディングドレスに身を包んでいた。
一応、ゲームの中でもストーリーが終わった後に結婚式のイベントは存在する。
もっとも、ここまで物語そのものが大きく変わってしまえば、ゲームで見たイベントとはまったく別物だった。
あれからの学園生活は、とても平和で楽しいものだった。
私たち二組が正式な婚約者として大々的に発表されたことで、それまでのような嫌がらせもなくなった。
話す友人も増えた。
お兄様を含め、家族との仲も以前よりずっと良いものになった。
そして何より、私には心から信頼できる友人と、大切に思える人たちがいる。
前世の私が最期に願った幸せ。
元気な体で普通の生活を送りたい。
学校に通って、友達を作って、恋をして、家族を大切にしたい。
そんな願いを、今の私は叶えることができた。
それどころか、あの頃の私が想像していた以上の幸福を手にしている。
やがて結婚式が始まり、私たち四人は神父の前に並んで立った。
「病めるときも、健やかなるときも、富めるときも、貧しきときも、お互いを愛し敬い慈しむことを誓いますか?」
「はい!」
お馴染みの誓いの言葉に、四人揃って答える。
こうして私たちは、無事に結婚の日を迎えることができた。
式が終わると、立食形式のパーティーへと移った。
最初のうちは来賓への挨拶や歓談に追われていたものの、ひと段落したところで、私は一人バルコニーへ出て休憩していた。
会場から聞こえてくる楽しそうな声を聞きながら、外の景色を眺める。
「いたいた。今日の主役がそんな端っこにいて良いのですか?」
冗談を言いながら歩いてくるリリアを見て、私は微笑みながら答えた。
「少し休憩していただけよ……前世を思い出して、ここまで断罪されないように奔走してきたけれど、やっと終わったなって」
「終わりじゃないでしょう。ゲームとしてのストーリー的には終わったのかもしれないけど、そんなこと私たちには関係ない。これからも人生は続くのだから」
リリアの言葉を聞いて、私は少しだけ目を丸くする。
それから、その言葉の意味を噛み締めるように頷いた。
「……そうね」
私はずっと、ゲームの結末を恐れていた。
断罪されないこと。
家族から見放されないこと。
大切な人たちを失わないこと。
ゲームで決められていた破滅の未来を変えることばかり考えていた。
けれど、もうそんな未来を恐れる必要はない。
ゲームの物語が終わったとしても、私たちの人生まで終わるわけではないのだから。
「ええ、これからも皆と幸せになるために、頑張るわ!」
「応援しているから。王太子妃にして未来の王妃様」
二人して笑みを浮かべる。
これから先、何が待っているのかは分からない。
楽しいことばかりではないだろう。
王太子妃として、そしていつか王妃となれば、今までとは比べものにならないほど大きな責任を背負うことになる。
それでも、家族と友人がそばにいてくれるのなら、きっとどこまでも進んでいける。
「わたくし、頑張るわ! 私と友人、家族、そして国のためにも」
「私も支えますよ。友人や家族のため、国のために臣下として」
私とリリアは向かい合い、改めて言葉を重ねる。
「わたくしは、友人として、家族として、王太子妃……未来の王妃としてあなたを助ける。だからもしも、わたくしが困った時は助けて欲しい」
「私も、友人として、家族として、筆頭公爵家の夫人として支える。でも、私じゃどうにもできない時は助けてくださいね」
互いに顔を見合わせる。
あの日、医務室で初めて交わした約束。
お互いが望む未来のために組んだ、私たちのタッグ。
あの時は、ただ破滅を避けるためのものだった。
けれど今は違う。
これから先の人生を、もっと幸せなものにしていくための約束だ。
「「だからこそ、私たちのタッグでこれから先も一緒に!」」
二人してまったく同じ言葉を口にして、思わず笑みを浮かべる。
ゲームの物語は、これで終わりなのかもしれない。
けれど、私たちの人生はこれからも続いていく。
大切な家族と。
愛する人と。
そして、かけがえのない友人と共に。
前世では叶わなかった、普通で幸せな人生を。
今度こそ私は、最後まで歩んでいくのだ。




