17 舞踏会での断罪-前編-
私はあらかじめ仕立ててもらっていた、真紅のドレスを着る。いつもよりも念入りに仕立ててもらい会場へ向かった。
会場に着くと私に視線が集まる。三ヶ月の間意識を失っていて、公の場に姿を見せなかった公爵令嬢。しかも友人として中の良かったはずのリリアに、湖に突き落とされた。危うく殺されかけたというのが、皆の認識なのだろう。
入り口のところで待っているとリゲル殿下がやってきた。婚約者のため、入場する際にはエスコートしてもらう。
「体調は大丈夫か?」
「ええ。おかげさまで。ダンスは無理ですが、参加するだけなら問題ありませんわ」
リゲル殿下には若干の強がりを言った。
流石にずっと寝ていたことで、筋力が落ちていた。それに少し熱もある状態だ。
正直なところ歩くだけでも相当辛く、ダンスも含めたそれ以上の運動には、耐えられそうにない。
けれど、私が参加すると決めた以上は最後までやり遂げるつもりだ。
「わかった。俺も今日は踊らずに、一緒にいるとしよう……必ず支えるから」
リゲル殿下には私の強がりがバレていそうだった。
その後、音楽が鳴り響き、ついに舞踏会が始まる。リゲル殿下のエスコートで会場に入る。その後くらいにお兄様にエスコートされているリリアを見つけた。
「皆様!舞踏会の前にはっきりさせたいことがありますの」
前に出てきたのはロベリア侯爵令嬢とカノープス公爵令息だった。
「皆様も噂で知っている通り、そこにいるリリアさんは、リコリス公爵令嬢を湖に突き落とした疑いがありますわ。ただでさえ、平民が貴族の中でも頂点に位置する公爵家を狙い、令嬢のことを殺そうとするなど言語道断。この場を借りて、罪を認めなさいまし」
ロベリアの言葉を受けて、リリアに非難の視線が集まる。
「リリア嬢。僕はね、君のことを尊敬していたんだ。立場が弱くて嫌がらせを受けながらも、主席として努力していたからね。でも虐めていたリコリス嬢と同じかそれ以上のことをするなんて……誇り高い貴族として許すことはできないね」
カノープスがさらに追いついをかける。リリアの近くには衛兵もやってきていて、下手な動きをすれば連行されるか、最悪その場で斬られてしまう可能性もある。
私も反論するために前に出ようとするが、リゲル殿下に止められた。
「君は無茶をしては行けないよ」
「っ!?どうして……」
リゲル殿下は、凪いでいるような目を向けていた。表情からも怒りや心配する様子は見られない。
「私は何も知りません。気がついた時には騒ぎになっていましたから。そもそも、私が犯人であればリコリス様を助ける真似をしないでしょう?」
「あなたは確かに、溺れてたくさんの水を飲んでしまったリコリス様を助けましたわ。でも……突き落としたあとに、怖くなって急いで戻ってきたのではないですか?」
お兄様がリリアを護るように立っているが、彼女に味方をするものはいなかった。ガーベラとローゼは不安そうに見守っているが、擁護のしようがないため手出しできないでいる。
「そもそも私のことを本当に見たのですか?あの時間帯は夕暮れの頃で、遠目ではだれかわからないはずです」
「ピンク色の髪をしているのは、あなただけではないの」
ロベリアの言葉に笑みを浮かべて、リリアが一つのものを取り出した。それは、ピンク色の髪のカツラだった。周りの人も驚いているようだ。
「私も苦労してこれを見つけました。これこそ真犯人がいる証ではないでしょうか?」
リリアはそう言いながらロベリアの後ろにいるカルミア子爵令嬢を見つめている。
「ねぇカルミア様。このカツラ……どこにあったと思います?私も探すのに苦労したのですよ。でもね、教えてくれた人が持ってきてくれました」
リリアはそう言いながら、ロベリアのもう一人の取り巻きであるサフラン男爵令嬢を見て言った。カルミラは凄い形相でサフランを見る。
「っ!?違う!わたくしじゃない!」
サフランは慌てて否定するがリリアが笑顔で言葉を重ねる。
「お付きの人のことにも、伝えておくべきでしたね。」
「っ!?シアのせいね!あいつが勝手に、許可を得ずに持ち出すなんて」
「サフラン!やめなさい!」
サフランが使用人に対して怒っているが、カルミラが慌てて止めた。
「だそうですよ、リゲル殿下」
リリアがリゲル殿下に声を掛けた。




