16 目が覚めると
ふと目が覚める。
気がつくと、そこは寮にある私の部屋だった。
「いたた……わたくしはどうして?」
分からないことが多く、戸惑いながら周りを見渡していると、シーナがやってきた。
「お嬢様っ! 大丈夫ですか!? 痛いところはありませんか!?」
慌てて近づいてくるシーナに驚きつつも、身体の状態を確かめる。
「わたくしは大丈夫よ。身体中が重いと言うか、痛いと言うか……微妙な感覚はあるけれど」
「それはそうですよ! お嬢様は三ヶ月の間、ずっと眠られていたのですから!」
「そうなの。三ヶ月……っ、はい!? どうして……?」
三ヶ月も眠っていたという事実に驚いて、つい叫んでしまう。
「お嬢様は、湖に突き落とされて溺れました。近くにいた人にたまたま助けられましたが……かなりギリギリだったと聞きました」
「そう……学園はどうなってるの?」
「基本的には平常通りですね。ですが……目撃証言からリリア様が犯人だとされています」
突然告げられた内容に、私は酷く混乱する。
悪役令嬢とヒロインの役割が入れ替わったにしても、不可解すぎる。
色々なことが起きすぎていて、ゲームのルートから大きく外れているとしか考えられない。
「ちょっと待って。三ヶ月経っていると言うことは、舞踏会っていつかしら?」
学年の最後に行われる舞踏会。
ルートによっては、悪役令嬢である私が最初に断罪される場所でもある。
私の場合、公爵家の令嬢ということもあって、この段階ならまだ死罪にはならない。
けれど、もしリリアが断罪の対象となった場合、どうなるか分からない。
「二日後です」
「そう……では間に合いますね。わたくしも参加しますわ」
「お嬢様!? 病み上がりなのですからダメですよ!」
シーナは引き止めようとするが、ここは正念場でもある。
参加しないという選択肢はなかった。
「二日のうちに体調は治します。その舞踏会はわたくしにとっての大一番。誰がなんと言おうと……行きます」
シーナも私が譲らないことに気づいたのか、諦めたような表情を浮かべていた。
「かしこまりました……舞踏会までは絶対安静ですからね」
「……シーナ、ありがとう」
「どういたしまして」
その後、ベッドの上で舞踏会について考えていると、扉をノックする音が聞こえた。
入ってきたのはリゲル殿下だった。
「リコリス嬢が起きたと聞いてな。婚約者ということと、特殊な事態ということで特別に中に入る許可はとってある。目が覚めて本当によかった」
リゲル殿下は、あれから毎日私のところへお見舞いに来てくれていたらしい。
少し雑談をした後、事件のことについて聞いてみた。
「わたくしを突き落とした犯人の目星はついているのでしょうか?」
「いや、唯一目撃証言のあったリリア嬢だけだ。今のところリリア嬢には疑いの眼差しが向けられているが、次の舞踏会で何人かの令嬢たちから訴えがあるかもしれない。済まないな……証拠が揃っている以上、俺では庇うことができない。カストルが解決のために奔走しているが、どうなるか……」
王太子というのは、学生であっても影響力が高い。
状況証拠だけとはいえ、証拠が揃っている状態で一人の被疑者を庇うことはできないのだろう。
私が思っていたよりも、状況は悪いのかもしれない。




