15 急転直下
長期休暇が終わり、学園生活が再び始まる。
休暇が明けた初日から、お兄様とリリアは二人が恋仲になったことを表に出すようになった。
今までリリアは、リゲル殿下と親しくしていることで、私が嫉妬から嫌がらせをしているという噂を理由に様々な嫌がらせを受けていた。けれど、リリアがリゲル殿下ではなく、婚約者のいなかったお兄様と仲を深めたことで、それも次第に落ち着いていった。
もちろん、お兄様のことを狙っていた令嬢も多かった。けれど、私というスケープゴートが使えなくなったことで、表立って嫌がらせをすることが難しくなったのだと思う。
私とリゲル殿下との仲も、少しずつ好転しつつある。
私も自分の考えていることや感情を少しは伝えるようになり、リゲル殿下も本心を話してくれるようになった。
今までのように、表向きの体裁だけを取り繕ったものではない。
少しは婚約者らしい関係になれたと思う。
それからしばらくは、特に変わったこともなく普通の授業が続いていった。
学園生活に大きな変化があるとすれば、三ヶ月後に学園祭が控えていることだ。
学園祭は、毎年最後に行われる舞踏会の次に大きなイベントであり、ゲームではヒロインが共通ルートから攻略対象の個別ルートに入った後、最初に起こる大きなイベントでもある。
リゲル殿下のルートでは、私とその取り巻きがヒロインを閉じ込めるというもの。
お兄様のルートでは、私が取り巻きに命じてヒロインを池に突き落とすというものだ。
だが、今では他の令嬢たちも大人しくなっている。
もちろん私やガーベラ、ローゼも何もしないため、その後も平和な日常が過ぎていった。
そして三ヶ月が経ち、学園祭が始まった。
学園祭では、生徒会による演奏会とクラスごとの出し物が行われる。
演奏会では、生徒会全員でピアノとバイオリンを演奏した。私たちのクラスではオペラを披露し、どちらもとても好評だったと思う。
そうして迎えた学園祭最終日。
お客さんも帰り、まだどこか祭りの余韻が残る学園の雰囲気に浸っていると、不意に声をかけられた。
「リコリス様、講堂の方であなたのクラスの方が呼んでましたよ」
「わかったわ。教えてくれてありがとう」
直接面識はなかったが、確か隣のクラスの生徒だったと思う。
私は講堂へ向かうため、校舎を出て外を歩く。
湖の近くを通りかかった、その時だった。
突然、背中に強い衝撃を受ける。
何が起きたのか理解するよりも早く、私は大きくバランスを崩し、身体が浮遊感に包まれた。
最後に覚えているのは、ピンク色の少し長い髪をした人物が、こちらに背を向けて走り去っていく姿だった。




