14 長期休暇-後編-
公爵家に帰ってきて数日。
リリアはお母様とお茶会をしているため、私は部屋で寛いでいた。すると、扉をノックする音が聞こえる。
「リコリス……いま大丈夫か?」
「ええ、大丈夫です」
お兄様は「失礼する」と言いながら、部屋の中に入ってくる。
「その……今まで悪かったな。昨日家に着いたときに母上から叱られた……学園が休みになってからお前のことを考えていたんだ。確かに学園に入るまでは我儘だったけど、人のものを盗るとか突き落とすとか、そのようなことは絶対にしなかった。それなのに噂が流れて、お前のせいだと思ってしまった。証拠などないのに決めつけてしまった。本当にすまなかった」
リゲル殿下もお兄様も、休暇に入ってからはきちんと話を聞いてくれるようになったと思う。
「わたくしも、今までの行いが悪かったと思います。これからは、繰り返さないようにしますから……一度お互いに無かったことにしましょう? それに、わたくしの大切な友人であるリリアのこと、よろしくお願いしますね」
最後にリリアのことを引き合いに出して、少しだけ場を和ませる。
「わかった。本当にすまなかった」
まだぎこちなさは残っているものの、お兄様との距離が少し縮んだ気がした。
◇ ◇ ◇
その頃、公爵家の庭園では、私――リリアと、リコリス様のお母様であるアイリス様がお茶会をしていた。
「……さて、色々とあなたには言いたいことがあるのだけれど、リコリスのことはどう考えているのかしら?」
「大切な友人です」
私は笑顔を崩さずに返す。
この言葉に嘘偽りはない。
学園に入ってから、リコリス様は私のことをずっと気にかけてくれていた。それはゲームのヒロインだからという理由もあったのだろうけれど、それを抜きにしても、今では互いに大事に思っている。
「……あなたには感謝しているわ。リコリスは、今まで本心を隠していたけれど、今では想いをはっきり告げるようになった」
「どういたしまして」
「では、もう一つ。カストルとのことはどう考えているかしら?」
「私は、カストル様のことをお慕いしております」
何度かデートを重ねて、私は自身の恋心を認識した。
前世では分からなかった恋を自覚し、今度こそ家族を持ちたいと強く思うことができた。
「我が家は公爵家です。カストルはこの家を継ぎます。その時、あなたは婚約者として、いずれ公爵夫人として支えることができると?」
「ええ。カストル様のことは私が支えます。功績が必要であれば、必要なだけ積み重ねましょう……まずは、私とリコリス様に降りかかっている問題をどうにかできれば認めていただけますか?」
私の言葉に、アイリス様は少し驚いた様子だった。
「いいわ。そこまで言うなら見せていただこうかしら」
「かしこまりました。一年生の最後にある舞踏会。そこで決着をつけます」
言葉にした以上、もう後戻りはできない。
私は覚悟を決め、アイリス様にそう宣言した。




