13 長期休暇-中編-
王都から馬車で一日ほどの場所にあるオーフィア公爵領。
私はリリアと共に公爵家の馬車に乗り、領地へ戻っていた。
学園に入学してから約四ヶ月。特に変わった様子はなかったが、今までこれほど長い期間離れたことがなかったため、どこか懐かしい気分になっていた。
なお、お兄様は三日後に領地へ帰るらしく、休暇に入ってからはあまり話をしていなかった。
馬車の中でリゲル殿下とのことをリリアに伝えると、嬉しそうにしていた。
「良かったじゃない。何もしてないことも伝わったみたいだし……可愛いらしいって言ってもらえて」
昨日のことを思い出して、また少し顔が赤くなる。
「一つ、前世でそこそこ生きた身として、アドバイスよ。確かに貴族としては、感情を隠さないといけない場はあるのでしょうね。でもね……私的な所や家族、婚約者、友人くらいには、感情を見せたり想いを伝えたりしないと理解されないわよ? 外に向けている顔と内に秘められた顔は違うと思う。例え、長い間ずっと一緒にいたとしても、血のつながりがあったとしても理解できる方が少ない。だからこそ言葉で伝えたいことは伝えないとね」
リリアの言葉を聞いて、なんとなく分かった気がする。
今まで我儘を言っていた時でさえ、本音は隠していた。前世の記憶を取り戻し、断罪を避けようとしてからも、生き残ることに必死で心の内を吐き出すことは少なかった。
けれど、隠さず話すようになってから、ガーベラやローゼ、リリアとの仲は深まったとも思う。
両親やお兄様、そしてリゲル殿下にも、私の想いをきちんと伝えたいと思った。
「そうかもしれないわね……ところでリリアこそ、お兄様とはどんな感じなのかしら?」
私がそう尋ねると、リリアは照れたように両手を合わせる。
そんなリリアが、どうしようもないほど可愛らしい。
「……おかげさまで、順調だと思う」
詳しく聞くと、休みの日に何度か二人きりで買い物に出かけたそうだ。
学園ではそんな様子を見せなかったことに加え、お兄様から私のことを庇ってもらうことが多かったため少し心配していたが、それを聞いて安心した。
家に到着すると、お母様が迎えてくれた。
「リコリスお帰りなさい。そちらの方がリリアさん?」
お母様の視線がリリアに向く。
リリアも一歩前に出て挨拶をした。
「お初にお目にかかります。リリアと申しますわ」
「あなたがリリアさんなのね……ようこそいらっしゃい。サラ、案内してあげて」
お母様の鋭い視線がリリアの全身に向けられるが、リリアは悠然としたまま立っていた。
「かしこまりました奥様。お嬢様とリリア様もどうぞこちらに」
私は自室へ、リリアは客室へ移動する。
それから間もなくして、私の部屋にお母様が訪れた。
「リコリス。学園であなたが狙われているそうだけど大丈夫かしら?」
「大丈夫ですわ。友人たちも力を貸してくれますし……リゲル殿下とも少し和解できましたから」
お母様に、学園であったことについて話す。
最初の頃のことを思い出すと、自然と涙が滲んできた。そんな私の頭を、お母様は優しく撫でてくれた。
「カストルには、わたくしからも言っておきますから安心しなさい。それから……カストルの手紙に書いてあったのだけど、カストルとリリアさんはどういった仲なのかしら?」
お兄様が手紙で何かを伝えていたようだが、どのように書いていたのかは分からない。
そのため、私はありのままの二人の関係を伝えた。
「そう、休日に二人で出かける仲ですか……カストルは、我が公爵家の次期当主。その公爵夫人となる人は、誰でもいいわけではありません。第一印象は悪くないけれど、ただの平民では貴族社会を生きていけるとは思えないわ……一度リリアさんと二人で話す必要がありそうね」
「リリアなら問題ないと思いますわ」
私は心の中で、これからお母様と向き合うことになるリリアにエールを送った。




