12 長期休暇-前編-
長期休暇が始まった。
最初の五日ほどは、ガーベラとローゼ、リリアとの四人で王都を散策した。アクセサリを見たり、お菓子を食べに行ったりする、まったりとした時間だった。
その後は、ガーベラもローゼもそれぞれの領地に帰り、私も明日、王都を発つことになる。
今日はその前に、リゲル殿下とのお茶会に臨んでいた。
学園に入学してからは機会が少なくなっていたが、元々は二か月に一度くらいの間隔で行っていたものだ。今までの恒例通り、王城にある庭園で行われる。
「リコリス嬢。待たせたかな?」
「大丈夫です。リゲル殿下。学園以来ですわね」
この席に座っているのは、リゲル殿下と私の二人だけ。王城勤めの騎士やメイド、私付きのメイドであるシーナも少し離れたところに立っている。
こうして二人だけで向き合うのは、学園に入学した最初の頃に一度あったきりなので、かなり久しぶりに感じた。
「あぁそうだな……そのなんだ。学園ではすまなかったと思っている」
私は、リゲル殿下の謝罪に目を丸くした。
「父上からも言われたが、リコリス嬢がリリア嬢に何もしていないと言うのに問い詰めてしまった……言い訳に聞こえるかもしれないが、よく思い返してみると辻褄が合わないことに気づいた。最近の……四人を見ていると、皆が楽しそうにしているのがよくわかる」
学園は王立という扱いになっている。最高責任者は学園長だが、実際のところ、国王陛下にも学園内部のことは共有されているらしい。
「いえ……学園に入るまではわたくしも我儘が過ぎたと思っております。疑われるのも仕方がないとも」
「……確かに権威にものを言わせて使用人に当たっていたとは思う。だが、学園で言われているような陰湿な嫌がらせをしたことはないだろう? リコリス嬢の場合、良くも悪くも、何をするにしても堂々としていた」
改めて言われると穴に入りたくなるが、思い返してみると、裏でこそこそと何かをやったことはないように思う。
そもそも悪いとさえ思っていなかった私は、家の外では控え目にしていたものの、家の中では誰の前でも態度を変えていなかった。
「それから、学園が始まる前に母上がお茶会をしたいと言っていた。もうそろそろ、王太子妃としての勉強が始まるかもしれないから、そのつもりでいてくれ」
リゲル殿下のその言葉は、私の心から恐怖を取り除いてくれた。
冤罪の話だけではない。最初は婚約破棄も覚悟していたため、私はリゲル殿下との関わりを避けるようにしていた。
けれど、今でもリゲル殿下が私のことを婚約者として見ていてくれるのは、素直に嬉しいものだった。
「かしこまりました。期待に応えられるよう頑張りますわ」
その後は、色々なことを話した。
当たり障りのない雑談ばかりだったが、こうしてリゲル殿下とゆっくり話したのはいつ以来だろうか。
やがてお茶会の時間も終わりを迎え、別れの挨拶をする。
「今日は楽しかったですわ。一月ほど領地に帰りますが、王都に戻ったらまたお茶会をしてくださいませ」
「そうだな。俺も時間が取れるだろうから、お茶会だけじゃなくて街を少し歩こうか……それから、今のリコリス嬢は、自然な笑顔で可愛らしく思う」
最後の最後で投げかけられたリゲル殿下の言葉に、顔から火が出るかと思った。
帰る途中も、その言葉を思い出すたびに顔が赤くなっていたと思う。




