004 虐殺という名の正当防衛、そして母親との対面
スズキの間の抜けた声に、ギャングたちは怒り心頭という感じで突撃してくる。
「クソガキがァ。裏ビデオに回してやるよ!」
「11歳のガキのアダルトなビデオなんて……いや、ロリコンどもは見たがるか」
なにか大事なものをなくしてしまったように、スズキは冷静だ。魔術か? それとも、ハンドガン? はたまたライフル? どれだって良い。スズキの身体に傷をつけることは叶わない。
そうやって、スズキは寒そうに手に白い息を当てていると、
「ぎゃッ!?」
スズキの胴体を穿こうとした、魔術の弾丸が、そのままそっくり放ったギャングに返される。スズキはなにが起きたか理解すらしていないが、どうせ自動防御が働いたのだろう。
「クソッ、魔術じゃ駄目だ!」
突っ込んできたギャングが呻く中、残りの4人はハンドガンを取り出した。それでスズキを仕留めるつもりらしい。
「ピザ、冷めちゃうのに」
ピザの入ったレジ袋を右手でぶら下げながら、スズキはそう呟く。動いて無力化しても良いが、そうすれば食べ物が台無しになってしまう。だからスズキは、動かず銃弾を喰らう。
小気味良い音が何十回も響き、近隣住民や街行く人が通報し始める。されどスズキは、銃弾が皮膚に触れた途端、それを砂糖菓子のごとく粉々に変えてしまう。
「……ッ!?」
まさにインチキ、という言葉でもよぎったはずだ。実際スズキのやったことは、ただ突っ立っているだけなので、余計に沿う感じてしまうと思われる。
カチッカチッ……と弾を撃ちきったギャングたちは、もう四の五も言っていられず、スズキへ突撃する。先ほどの繰り返しになる、とは思わないのだろうか。
「暇なヤツらだねぇ」
スズキは侮蔑するように言い放つ。向かってくるギャングたちの拳が肌に触れた途端、拳が砕けて血みどろになり、痛みのあまりその場へ倒れ込んでしまう。
「あのさ、オマエらは馬じゃないんだよ。馬並みの腕力がない。それなのに、おれに勝てるとでも?」
拳が砕け、指がありえない方向に曲がっているギャングたを尻目に、スズキは立ち去ろうとする。
その最中、顔とサイレンを真っ赤にした警察がやってきた。
「なんだ、これは……」
警察から見る光景は異様だった。たったひとりの少女の辺りには、戦闘不能になったギャングが5人。コンビニからガラスの破片を受け、倒れる不良がひとり。ひとりの少女が殺戮を繰り広げた、といっても疑問には思わない。
そして、その金髪のハーフ少女は、自ら手錠をかけるように腕を警察へ差し出す。悪さした、という自覚はあるのだろうか。
「えーと、これって君がやったのかな?」
「はい」
「逮捕される気満々だけど、コイツらはピースランド屈指のギャングども。だから、感謝状ものだよ?」
「へぇー。なら、逮捕はされないと」
「事情聴取はするけど、すぐ終わると思う。悪意あってしかけたとも考えられないし、なんなら10歳くらいの女の子相手に、銃やら魔術使った痕跡があるから、一応経緯だけ聞いて終わりかな」
「そうですか。なら、私パトカーに乗っておきますね」
スズキは、最前列に並んでいたパトカーに乗る。警官たちは怪訝極まりない面持ちになりつつ、ギャングたちとコンビニ強盗犯に手錠をかけるのだった。
*
スズキは、若い警察の言う通り、あっさり釈放された。正当防衛に当たる上に、アンゲルスの正当防衛は厳重注意すらされない。いつ魔術や銃で襲われるか分からない以上、かなり緩いルールになっているようだ。
ただ、気になることも言われた。
『セラちゃんは、子ども用の魔術師ライセンスを取ったほうが良い。それだけの実力があると、不本意に厄介事に巻き込まれるしね。親御さんにもその旨を説明しておくから、話し合ってね』
スズキはパトカーで、自身の家へ戻る。指紋で鍵を開けると、今にも泣き出しそうな母親がいた。




