003 強盗退治、そして馬の骨
「嫌な力が入り込んできたな。これでおれも、化け物のひとりってわけか」
銃弾をいくら喰らっても痛みも感じない身体。レールガンくらいなら歯で噛み砕け、核兵器を撃たれてもスズキだけは死なない。度し難い力を今、スズキは手にしてしまったわけだ。
「ケッ、くだらねぇ」
スズキは、目を閉じて苦笑いする。無敵に近い力を手にして、これからどうすべきか。前世を引き継ぎ、適当なダメ人間として生きるべきか。
「それでも、貴方には、貴方にしかできない役割があります。それだけは忘れないように」
そう言い放ち、マーズは風のごとく消えていく。スズキは首を傾げるも、結局ピザを買いに行くのだった。
*
アンゲルス連邦共和国構成領土『ピースランド』は、あまり治安が良くない。寒さが故に自殺者も多いし、心が荒んでいる者も多いからだ。カーチェイスは日常茶飯事だし、警察とギャングによる発砲事件も絶えない。
そんなピースランドのギブソン街のコンビニに入店すれば、当然のように拳銃を店員に向ける強盗がいる。大きめのカバンを持っており、顔にはフルマスク。コンビニのレジなんて、大したカネも入っていないだろうに。
とはいえ、買い物ができないのは困る。スズキは、怯えているように見える店員と、店員よりも怯えている強盗犯を見て、強盗の背中を叩く。
「あァ!?」
「辞めておけよ。コンビニに大金があるわけないだろ」
「うるせェ!! クソガキィ!!」
会話にならない、と踏んだスズキは、強盗の腰回りをポンっと叩く。
すると、
その強盗は、入り口のほうまで吹き飛ばされる。うめき声をあげながら、数秒後には意識を失ったようだ。
「ピザ、ありますか?」
強盗が気絶している中、店員はギョッと幼女・スズキを訝るが、スズキは気にする素振りも見せない。
「あぁ。自分で持ってこい、ってことですね」
ピザコーナーに向かい、スズキはそれを店員に差し出す。店員はあからさまに怪訝な面持ち、そしてスズキを恐れているような顔になりつつ、震える手でバーコードを押す。
「どうも」
5メニー……日本円にして500円くらいの札を置き、スズキは鉄火場と化したコンビニから出ていく。
そんな中、強盗が目を覚ます。といっても、もうなにかできるとも思えない。できることがあるとすれば、スズキ諸共道連れに自爆くらいだろう。
それを察したスズキは、なんらかの魔術で爆発が起こる前に、倒れ込む強盗の腹部を踏みつける。大分手加減したので、まぁ死なないだろう。
「ぐッ……!?」
スズキは、強盗が死んでいないのを確認した後、店の外へ出る。
「そりゃあ、〝魔術と技術の国〟だからなー」
アンゲルス連邦共和国は、しばしばそう呼ばれる。高い技術力を背景に、高価だが質の良い商品を海外へ輸出し、富裕層向けの評価が高いため貿易黒字でもある。
では、魔術とは? これは、アンゲルス特有の力だ。より正確にいえば『アンゲル教』という、アンゲルスの国教である宗教団体が築いた、人間に異能力を与える技術のひとつ。アンゲル教団の祝福を受けて、魔力がある程度の次元にいる者は、皆魔術を使えるのだ。
「まぁ……」
スズキは、買ったばかりのピザを頬張り始めた。家まで我慢すれば良いのだが、いかんせん目の前で、ギャングたちがスズキに危害を加えようとしている。なので、今のうちに食べておこうという算段になったのである。
「どこの馬の骨か知らないけどさ」
ギャングは5人。普通に考えれば、逃げるべきだ。だいたい、11歳の140センチ前半の少女を襲うなんて、恥ずかしくないのか?
「どうでも良いか。アンタらは馬じゃないが、骨を見ることにはなるんだから」




