027 高貴な革命が故、家族でも微笑んで殺す
「か、隠し事?」
「うん。なにか隠してるよね? そういうの、良くないと思うな」
スズキはあくまでも微笑みを浮かべているが、これでは尋問だ。三白の眼が、妖しく光り始める。
「な、なにも隠してないわよ」
「ホントにそう断言できるの?」
間髪入れず、スズキはエバを圧す。彼女は続けた。
「まぁ、言いたくないのなら仕方ない。ただ、ここで言わないと受け入れるつもりはないよ。ずっと隠し事をしてきたのは、エバだからね」
実年齢28歳男性+女児として10歳のスズキは、その年齢に見合う諭し方で、エバの心を裸にしていく。うまくカミングアウトさせ、それを快く受け入れるセラ・スズキをセルフ・プロデュースしているのだ。
といっても、スズキはロリコンではない。見た目的には釣り合っているかもしれないが、このふたりの実年齢はだいぶ離れている。だからスズキは、エバのカミングアウトを受け入れる気はあっても、その先へ話を進める気はない。それもあり、スズキはこう言った。『なんでも〝受け入れる〟』と。受け入れた上で、付き合うかどうかは、スズキが決める。そしてもちろん、付き合うつもりはない。
「分かったわよ……。言うわ」
エバは固唾を呑み込み、枯れた喉から無理やり声を出すように、上ずる声で宣告する。
「私……、貴方のことが──」
普通に考えれば、予定調和の告白シーン。だが、このピースランドに退屈で無難な結末は似合わない。
「……ッ!?」
(狙撃か……。小学生の脚を撃ち抜くとは、クソみてぇな趣味だ)
パコンッ、という破裂音が5回響き、その弾丸はエバの脚を撃ち抜く。
撃たれたことに気がついていないエバより先に、スズキは狙撃手がいることを知り、地面を殴るように蹴る。建築途中のマンションが、倒壊していく。風向きを無理やり変えてしまい、同時にエバを守る盾も作り、スズキは狙撃手が逃げ出す前に捉えるべく、空を駆け抜けていく。
「クソッ、逃げたか? 地殻変動まで起こすとは、相当な手慣れだな──」
狙撃手が武器等を放棄し、逃げ出そうとした頃、
スズキは、彼の後ろに立っていた。
「ぎゃあッ!?」
38キロの体重が、そのままスナイパーの手にのしかかる。
「誰に雇われた?」
「言うわけねェだろうが──!! やめろ!!」
スズキは、指にエネルギー弾をためて、男の眉間に突きつけた。
「やめて欲しいのなら、相応の態度になるべきだ。なぁ?」
「分かった! だから落ち着け! 狙撃手はもうひとりいるぞ!? あそこの──」
スズキは、小指の爪辺りに溜まっていた黄色いエネルギーの塊を、男が指差す場所へ撃つ。瞬間で味方が消え去った事実に、男は震える。
「オマエを雇っているのは、誰だ?」
万策尽き、男は謡う。「……グランド・スラムだ。アイツらは、アンゲルス連邦軍から退役した軍人を拾ってる。現大統領が軍縮を続ける以上、おれみてェなプロでもヒットマンにならねェと、飯を食っていけないんだよ」
「で? オマエはなんの命令で私を消しに?」
「そこまでは知らん。ただ、標的は同い年くらいのガキと話しているとき、必ず油断するからと」
「そうかよ」
そのとき、
スズキのスマホが鳴る。
『ルーシ・レイノルズ』
あの不愉快な女からのラブ・コールだ。スズキは軽く舌打ちし、男の眉間に4本の指を向けたまま、電話に出る。
「おい、オマエが仕組んだのか?」
『そんなわけないだろう。エバは私の友人の親戚で、オマエは私の友だ。ただ、なにが起きたのかは分かる。そちらの地域で、建設途中だったマンションが1軒倒壊した。まだ工事が始まる前だった上に、丁寧に壊されたから、奇跡的に怪我人はゼロ。微粒子ドローンがその映像を捉えているんだな』
「あぁ、そうかよ。で? この退役軍人を使って、私やエバを狙ったヤツは?」
『それがだね、ショーコちゃん、なんとエバの親が依頼したようなのだよ』
「は?」
『オマエとつるむくらいなら、殺してしまおうって気になったんだろう。そりゃそうだ。親がいれば子どもはいくらでも作れるし、高貴な革命の前には、たとえ家族だろうと微笑んで殺すべきだしな』




