028 バカでも力を持っているが故、余計な闘いが始まる
スズキはしばし絶句する。
『どうした? 黙り込んでいても、問題はいなくならんぞ』
「……エバの親は、何者なんだ?」
『〝終末への選択肢〟のシンパらしい』
「どういうわけだよ……」
『アイツらは、世界を一度リセットするのを目的にしたカルト。アンゲルスには、宇宙放射の大量破壊兵器〝サテライト・キャノン〟があり、それらは秘密裏に大国の首都に向けられている。それらを使い世界を滅ぼすことで、地球の自然を保護するのが名目。しかし……』
「世界を焦土にしたら、自分たちが特権階級になれると思っているんだろ? くっだらねぇ。ペンペン草も生えない地上で王様気取りなんて、バカバカしい」
といっても、改心するのを祈ったところで意味はない。エバの親は、自分たちの娘を殺そうとした。もうそんなヤツらは、親とすらいえない。
『だが、その馬鹿どもには力がある。半径30キロメートルを不毛に変えられるほどだ。サテライト・キャノンの発射装置を取り外せる技術者が、このピースランドに上陸するまであと20時間はかかる。終末への選択肢も、もはや四の五の言わずに戦力を出してくるだろう。私は最悪の事態をなくすため、本島へ戻るが……成すべきことは分かっているはず。さぁ、勝負の20時間だぞ』
電話が切られる。スズキは、狙撃手の武器などをすべて踏み潰し、そのままエバのいる下へと降りていく。
「セラ……。私、撃たれちゃったみたい──」
「変に動かないで。救急車を呼んだから、しばらく病院にいて」
「え? セラはどうするの?」
「私は……」
その気になれば、世界と闘って、本当に勝ってしまうかもしれない強さ。だからこそ、スズキは無気力でダメな人間に成り果てた。
それらを踏まえて、スズキは微笑みを交え宣言した。
「悪いヤツらをやっつけてくる」
KOM学園に隠されている、〝サテライト・キャノン〟の発射装置を巡る闘い。文明を守るために、スズキはその馬鹿げた力を使うことにするのだった。
*
エバを見届けた後、スズキは中途半端な街を歩いていた。雪が溶けてドロになり、ドロが固まって道になる。相変わらず、太陽光は滅多に見えない。そんな夕暮れ時、残り15時間くらいか。
「さて……始めるか」
貧乏人や酔っぱらいを路地裏で眠らせ、朝起きればそれらはただの死体。また雪が降れば、死体すらも毛布の下に入れられるように隠されてしまう。
こんな夢も希望もない場所で、一生を終えていく者は幾多もいる。スズキはコートの脇ポケットに手を突っ込み、白い息を出しながら、ちょうど良く車通りの少ないところへ止まる。
「ここでなら良いぞ。誰だかは知らないけど」
スズキが手をあげ、立ち止まった途端、隠れていたギャングたちが一斉に銃を取り出す。轟音とマズルフラッシュの所為で、なにも見えないし聞こえない。本当に狙えているのかも、分かっていないだろう。
「いやー、フレンドリー・ファイアはまずいんじゃねぇの?」
隠れられそうなところに、凄まじい弾丸を叩き込んだので、当然遊軍誤射も起きている。
「あのガキ、まだ死んでねェ……!?」
「クソッ! けど、もう少し圧せば行けるッ!!」
またフラッシュが目に入る。音も激しさを増していき、足元にはグレネードが何個も落ちてきている。それらが破片を撒き散らし爆発し、ついにはロケット・ランチャーの弾が飛んでくる始末だった。
「……ウソだろ」
「なんで死なねェんだ!!」
硝煙がゆらゆらと揺れる中、スズキは心底退屈げに口を尖らせ、首を横に振った。




