024 腐れ縁が故、仲良くやろうぜ
「は? おま、本当にルーシ?」
「そうだが」ルーシ? は紙巻きタバコをくわえる。「なんやかんやあって、女になっちまってさ。けど、この生活も悪くない。可愛い婚約相手もいるし、今世では年上の友だちもたくさんいる。……あ? なに口開けてやがる。もしかしてタバコか? ほら」
身長170センチ中盤くらいの女・ルーシ? は、にこやかにスズキの口にタバコを入れてくる。脊髄反射的にくわえてしまったが、今更タバコを吸う気はない。金髪幼女スズキは、それをルーシのソフトパッケージのタバコへ返す。
「ッたく、婚約相手が紙巻き嫌いなんだ。私の前で吸ったら婚約破棄するって断言されているので、こんなド田舎でしか吸えない。普段は電子で口の寂しさを誤魔化しているのだよ、ショウ、いやショーコちゃん」
「やかましい、おれ……、いや私はセラ・スズキだぞ」
「まぁ良いや。しかし、田舎だな。空気が美味しいし、飯も不味い。米帝野郎が占領計画を建てていないのが、唯一の救いか」いつもどおり、アメリカ嫌いである。「さて、私がこんな僻地に来たのは、オマエに大切なことを教える必要があるからだ。取れる時間は?」
「オマエと話したいことなんかねぇよ、露助野郎」
「ひどいこと言ってくれるなぁ! 仲良くやろうぜ、と言ったじゃないか。別にオマエの生活を壊したいわけじゃないんだ、こちらは」
「だったら、今すぐロシアへでも失せろ」
「そんなひでェ態度とるかい? 一体なにが気に食わないんだか」
「全部だよ。オマエがいなければ、おれは脳を19世紀のアフリカみたく分割されることもなかった。培養液に漬けられて、意志だけが残る存在だぞ? それを半年間だ」
「悪かったよ。ただそれは、オマエの属していた組織が私に負けたからだろ? 私の第二の故郷〝日本〟が壊されていく様を見たくなかったんだよ。だいたい、CIA傘下の組織に属していたオマエへも問題はあるし、そもそも培養液から出してやったのは誰だ? 私はオマエを買っている。それは今も変わらない。分かったら、仲良くやろうぜ」
コイツ、間違いない。ルーシだ。スズキの脳が分割された事件を知っているのは、おそらくルーシしかいない。スズキは僅差でルーシに敗れていて、その所為でCIAの連中に脳を切り刻まれたのだ。そして、彼女がいうように、そこからスズキを救い出したのは、紛れもなくあのとき男だったルーシである。
そう理解したのなら、スズキは警戒心を余計に強めなければならない。神経を尖らせ、いざとなったら先制攻撃できるよう、手をぶらっと振り下げる。
「やめておけよ、ショウ。私が、あの謎ビームを撃つ兆候すら見抜けないとでも?」ルーシは携帯灰皿にタバコを捨てる。「はーっ、意外と紙巻きって不味いな。寒い場所だから、うまいと思ったんだが」
「……早く要件を言え。オマエのペースには、付き合ってられない」
「分かったよ。良いか? オマエのお友だちがいる学校を襲撃したのは、本島でも騒いでいる〝終末への選択肢〟というカルト宗教……いや、インターネットの生み出した魔物だな。ソイツらは、おそらくオマエも知っているだろうけど、ピースランドにある宇宙放射大量破壊兵器、通称〝サテライト・キャノン〟を狙っている。KOM学園の分校に、スイッチがあるんだな。ただまぁ、その気になればスイッチの場所も移動できるぞ。かなりコストはかかるが、なにせリナ・スズキはウチの幹部候補。それくらいはこちらが負担してやるよ」
「上から目線は相変わらずだな」
「こちらが上だからな」断言する。
「死ね、クソ露助」
「次死んだら、今度はまた少年からリスタートかね? それとも、ジャパニーズふたなり?」
険悪な対談が始まる。




