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SHO TIME-最強ゆえに孤独だった青年、幼女に転生してはじめて愛を知る-  作者: ヒガシヤマ・スバル
シーズン1 インターネットの魔物〝終末への選択肢〟

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22/28

022 母の愛が故、彼女は弱くなる

「──ちゃん! セラちゃん!!」


 誰かに手を握られている。身体は鉛でも入ったように重たい。呼吸は花粉症みたいにしづらく、心臓もうまく動いているように感じなかった。


「──セラ!!」


 それにしても、やかましい。別に死にかけというわけでもないのに。先ほどの症状があるだけで、意識はしっかりしているのに。


「──セラちゃん!!」


 あぁ、頭がキンキン痛い。ヒトの声は耳にさわる。もう起き上がってしまおうか。

 ガタンッ。


「おい! 患者が意識を取り戻したぞ!? 今すぐ先生を呼べ!!」


 スズキは、身につけられていた医療具をすべて引きちぎり、心底退屈そうにあくびした。

 フリーズする母・リナと、友人のオリビアとエバを横目に、スズキはひとまず日付を確認し始める。


「随分寝てたみたいだ。そりゃ腰も痛くなる」


 病院にいるのは間違いない。スズキはベッドから起き上がり、少しよろけながらも、どこかへ歩いていこうとした。


「駄目だよ、セラちゃん!」


 が、リナ抱き抱えられる形で、スズキは無理やりベッドへ戻される。不満そうに口を尖らせるスズキに、リナは強く、しかし、弱さも覚える態度で言う。


「良い? セラちゃんは1週間くらい、意識不明だったの。最初の3日間は、集中治療室に入って私たちも面会できなかった。だからせめて、もう私から離れないで」


 スズキは、少し涙ぐむ現世での母を見て、


「分かったよ。もう、遠くへは行かない」


 そう返事する。


 親の愛情を知らない子どもだったスズキにとって、リナはさながら聖母のような存在だ。だから、あまり強く出られない。だいたい、スズキみたいなダメ人間は、美味しい飯を食わせてくれるヒトには頭が上がらないのだから。


 と思っていたら、スズキの手を両手が掴んだ。


「良かった……。ホントに良かった」


 声を震わせるオリビアと、泣かないように上を向くエバ。ひどいことをした、と反省すべきだろう。


 10歳までの記憶も保有しているスズキにとって、オリビアとエバもまた頭が上がらない存在だ。損得抜きの友情を持ってくれる者は、どうしても無下にできない。孤独で孤立した化け物に、愛にも似た感情をぶつけてくれる彼女たちを排除できるほど、スズキは腐っていない。更にいえば、無下にできるほどメンタルも強くないのだ。


 *

 意識を取り戻して3日後。スズキは退院した。


 医者は「もう2週間は安静に」と言ったが、スズキが医者の言葉を素直に聞いたことは、前世を含めて一度もない。結局、リナが「セラちゃんが言うならしょうがないね」と折れた形で、午前中に病院を出ることになった。


「お母さん、仕事は?」

「今日だけ午後出勤にしてもらった」

「そっか。悪いね」

「悪いと思うなら、次から絶対に私より先に倒れないで」


 リナはそう言いながら、スズキの髪をとかす。セラ・スズキとして10年間生きてきた記憶の中で、これが一番落ち着く時間だということを、スズキは転生してはじめて理解した。


「ねぇ、お母さん」

「なに?」

「お母さんはさ、私が怖くないの?」

「怖い? なんで?」ポカンとした態度だ。

「だって、私は評定金額8億メニーの〝化け物〟だよ。この力はさ、きっといつか誰かを殺めてしまうかもしれない。それが怖くないのかなぁって」


 スズキの率直な、しかし危険でもある疑問に、リナは一言で答えた。


「怖くないよ」


 飄々とした口調だった。


「セラちゃんが化け物だろうと、宇宙人だろうと、私の娘だもの」

「……そういうもの?」

「そういうもの。それより、病院食ばっかで飽きたでしょ? きょうはなに食べようか」


 スズキは、リナから目をそらす。そうでもしないと、自ずと涙が出てきそうだから。ここで泣いたら、自分が弱いことを認めてしまうような気になったから。


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