021 トラウマ、そして未来への切符
転生10日目。スズキは自宅のベッドに潜り込み、ダラダラとスマホを弄くっていた。
「あんまり転生した、って感じがしねぇんだよな」
21世紀の別世界。異世界転生というより、そちらのほうが正しいかもしれない。まぁ、スズキからすればどうだって良い話だ。恐竜のいる時代だろうと、ローマだろうと、中世だろうと、近世だろうと。スズキの力は、時代など関係なしに使えるであろうから。
「ふーむ。もう寝るか」
シーリングライトを消し、スズキは毛布を被る。リール動画は、あっという間に時間を奪うから恐ろしい。あしたもKOM学園の小学部に行かなければならないのに。
「ふぁーあ」
睡眠薬有りきだった不眠症も、この身体になったことで収まった。スズキは、10分程度で眠りについてしまう。
*
『あーあ。オマエの所為で、男が離れていく。ッたく、法律が許すなら今すぐ殺したいくらいだよ』
『あ? なに睨んでんだ、クソガキィ!!』
『ショウ? あぁ、あそこに転がってるよ。彼氏に根性焼きされて、いじけてるみたい』
『え? ショウに価値があるの? いくらで売れる?』
『1000万円!? この根性無しのクソガキに!?』
『もちろん、売りますよ! 1000万円だって! これで海外旅行でもしようよ!』
『スズキ・ショウは、もう扱いきれない……。おれたちは、歯止めの効かない〝化け物〟を作ってしまった』
『さらなる領域があるとなれば……、もう手放すしかないな』
『ショウ? お母さん、お金に困っちゃってさ。100万円くらい振り込んでくれない? アンタ、研究機関からたくさんお金貰ってるんでしょ?』
『おれはオマエの父親だよ……あ? もう5人目? どういうこった。まぁ良いや。……ん? カネならくれてやるって? なに考えてんだ、オマエ』
*
「はぁ、はぁ……」
消すことのできない過去。それを夢で見てしまったスズキは、汗まみれになったパジャマを脱ぎ捨てようとする。
その最中、
ガコンッ!! というなにかが吹き飛ぶ音が聞こえた。スズキはそのままリビングへと向かっていく。
「クソッ!! このアマ、相当な手慣れだぞ!?」
スズキの現在の親・リナが、この家に侵入してきたであろう不審者を、窓のほうまで吹き飛ばしたらしい。スズキは大あくびして、リナの闘いを眺めることにした。
「あら、私の昔の評定金額知らないの? そこらの悪党なんて、その気になれば簡単に捻り潰せるんだから」
ウソではなさそうだ。現に、リナは悪党3人に囲まれても冷静だし、むしろ敵のほうが焦っている。よほど魔力が高いのだろう。スズキは魔力の濃さなど、感知できないが。
「……あ? 標的がいるじゃねェか」
リビングにつながるドアに立っているスズキを見て、悪党たちはスタンガンのような道具を取り出す。
「やめなよ。効くわけないでしょ」
「ハッ、残念だが効くぞ……!!」
スズキは、小馬鹿にするように手を広げる。
そして、
テーザーガンがスズキの身体に放たれた。
*
「あぁ……。考えてみれば、おれは自分の力に押し潰されてきたんだな」
「しかし、その力がなければ、貴方は虐待で死んでいた。そうでしょう?」
「そうだな。でも、そっちのほうがマシかもしれない」
「では、力を制限しましょうか?」
「なんだよ、マーズ。オマエが押し付けた前世の力だろ」
「どちらかでお答えください。力を大幅に制限して、一般人に近い存在になるか。それとも、このまま〝化け物〟として生きるか」
「言うまでもないな」
「言わなければ分かりません」
「おれは〝化け物〟で充分だ。今更、生き方は変えられない」
「分かりました」
*
セラ・スズキ、11歳。評定金額8億メニー。日本円で800億円ほど。前世でも今世でも、実力だけは化け物。けれど、あまりやる気はない。駄目なくらい、やる気がない。
これは、そんな青年だった幼女による、くだらなく笑ってしまうような……そういう話。
とりまプロローグ終わりです。
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