016 今後の展望、そしてお見舞い
「うん、うまい」
たっぷり肉汁が入ったハンバーグと、日本米の相性は抜群だ。添えつけのジャガイモも良い味を出している。こんな風に母・リナは料理上手だが、仕事柄なかなか手料理が食べられないのが残念で仕方ない。
「良かったよ。セラちゃん」
あの後、オリビアを自宅へ送り、スズキとリナは自宅に帰ってきていた。リナの手料理を食べながら、スズキは今後の展望を考える。
「ねぇ、お母さん。あのテロリストの目的ってなんなのかな」
「さぁ。でも、学校を占拠しようと考えるのも変だよね」
「エバなら、なにか知ってるかもしれないけど……」
「あの子、今頃麻酔で寝ているでしょ。セラちゃん、焦らないの」
「焦りたくもなるよ。こっちは友だちが傷つけられてるんだから」
「けど、KOM学園分校だって無策なわけないよ。かなりのセキュリティを張るはず」
「ふーむ」ナプキンで口を拭く。「なら、こうも考えられない? これからKOM分校は、当分安全。だけど、危機が過ぎ去ったと自治政府が判断したら、軍や警察も少しずつ減っていく。私なら、少し潜伏した後に、もう一度KOM学園を狙うけどね」
一体、KOM学園分校になにがあるというのか。金持ちの子どもを拉致したい? いや、KOM学園分校は中流層の学校。親の収入で考えれば、スズキが一番高いくらいだ。
では、なにかを隠し持っている? 僻地・ピースランドの学園になにかしらの兵器を隠していれば、連中の行動にも合点が合う。
「その間に、おまわりさんや軍人さんが逮捕してくれるでしょ。確かにセラちゃんは8億メニーの価値をつけられてしまったけど、貴方まだ11歳なんだから、そういう厄介事は大人にまかせておけば良いのよ」
リナは、スズキの頭をポンと撫でる。スズキはなおも気難しそうに眉をひそめるも、
「分かった。とりあえず、おまわりさんや軍人さんを信じてみる」
嫌な予感は拭いきれない。しかし、今できることはなにもないのも事実だった。
*
KOM学園ピースランド分校は、1週間登校禁止になった。その間、リモートで授業を受ける形になるが、正直出席確認だけすれば、後は寝ていてもなにか言われることはない。
『セラちゃん、ゲームセンター行こうよっ』
一応授業中なのに、オリビアからそんな連絡が来るくらいには、リモート授業は淀みきっている。
『それよりも、エバのお見舞いに行かない?』
『エバちゃんの? 良いよ-』
オリビアとエバの折り合いは悪い……というか、エバが一方的にオリビアを嫌っている。どうも、子どもっぽい行動や仕草、言動が気に食わないようだ。もちろん、中身・20代後半からしたらどちらも子どもだけれども。
「まぁ、エバと仲良くさせてみようか……」
スズキは性懲りもなく塩パスタを食べ、歯磨きし、黒いコートを羽織って外へ出る。
『ミンファ通りで待ち合わせしよう』
『分かった!』
ミンファ通りは、ピースランドでも治安の良い場所だ。近くに、エバの入院する『レイノルズ病院』があるくらいには。時刻は昼の12時ぴったり。さすがに、白昼堂々襲われる者はなかなかいない。
「……ん?」
結局、当社比で治安が良いとはいえ、ピースランド全体が暗黒街みたいなところがあるので、ひったくりは頻繁に起きる。
おそらく同年代くらいの少年が、持っていたカバンをバイクに乗った連中に奪われた。スズキはダメ人間らしく無視しようか迷うが、
「セラちゃん! ひったくりだよ!」
しっかり時間通り現れたオリビアの一声で、スズキは仕方なくひったくり犯との間合いを走って狭める。
「はぁ!?」
原付バイクにたどり着いたところで、スズキはカバンを取り返し、そのまま立ち去ろうとする。
男は原付から降りる。「ちょっと待てや!! ──ぐぉッ!?」
運転手にデコピンをくらわせ、気絶したのを確認し、スズキはオリビアと少年の元へ歩いていく。




